実質4日半の帰国
■結婚式参列のため
タイに来て11年目に入っている。この間、日本に帰国した回数は10回以下だろう。昨年は娘が会ってほしい、というので婚約者に会うため6月に、また、母の葬式を日本でも執り行ったので9月に帰国した。そして先週2月下旬に娘の結婚式に参列するために帰国、最近9カ月で3回も立て続けで日本に行っている。まあ冠婚葬祭、浮世の義理が先に立っての帰国であるから仕方ない。
結婚式、披露宴に出席する以上、それなりの服装が求められる。いくら北タイでは正装だからといって、モーホームを着て式に出たら顰蹙を買うこと必定だ。母の葬儀では兄の礼服を借りた。体形はほぼ同じであるが、自分は兄よりいくらか腹が出ている。借り着であるから不満は言えないが少々きつめだった。
今回の結婚式にも東京の家にある兄の礼服を借りるつもりだった。でも友人がそんなに高くないからダブルの礼服をチェンライで仕立てたら、と勧めてくれた。オーダーメードで数千円とか。友人が誂えた礼服を見せてもらったが中々の出来栄えだ。結婚式場の貸衣装を利用するという手もあるが、数万円かかるらしい。この際、礼服を新調するか。
■久しぶりのオーダーメード
日頃、Tシャツ、短パンの生活でネクタイは持っていないし、背広を着たこともほとんどない。もう社会人ではない自由を服装面でも満喫している。採寸して服を作ってもらう経験は何十年ぶりか。友人の案内で卵を軒先で売っているしもたやに行った。中に入るとミシンがあり、様々な色の糸車がある。おばちゃんが肩幅とか胴回り、腕の長さ等を採寸し、チラシの裏紙にメモしていく。大丈夫かなあと心配になる。とりあえず、生地、裏地を買うから、と前金を請求された。礼服上下で3mの生地が必要と言う。1m150Bからあるが、自分は最高級の1m450Bの生地を買ってもらうことにして1000B渡した。
礼服づくりは裁断する人、縫製する人に分かれているそうだ。服地さえあれば2日でできるとか。友人は日本での葬儀のため礼服を誂えた。縫製担当のおばちゃんは友人の近所に住んでいて、彼の出国2日前というのに友人宅での飲み会に参加していた。もちろんまだ縫製作業に取り掛かっていない。大丈夫、大丈夫といって翌日に礼服上下を縫いあげてくれたという。ハラハラさせるが最後は辻褄を合わせるタイ方式だ。
1月の余裕を見て仕上がり日を決めたが、友人が数日前に催促してみると、生地は買ってあるけど、という返事だった。でも受け渡し日に行ってみるとちゃんとダブルの礼服が出来上がっていた。採寸をしたお陰で体にぴったり、ズボンもきつくない。これなら披露宴で飲み食いしてもボタンが弾け飛ぶ心配はない。
これならご両家、ご親族、また新郎新婦の友人一同に対し、娘が恥ずかしい思いをすることはない。代金は生地代も含め総計2600B、日本円にして8千円程だった。通販やアオキで買うより安いのではないか。
■日本にて
出発の数カ月前に予約したので、チェンライ―成田の往復航空券は3万5千円だった。出発直前には同じチケットが6万円以上に跳ね上がっていた。機内食は無し、持ち込み荷物の重量制限などいろいろと制約があるが、格安航空券であるから仕方がない。安いせいか、行きも帰りもぎっしりの満席状態であった。
チェンライ発2月20日、帰着同26日だったが日本での滞在期間は実質4日半。会いたい人は大勢いた。でも遠路出てきてもらって、風邪でも引かれたら大変だ。それでなくても友人からのメールには、この頃、人の名前がすぐ出てこない、は当たり前で、脊柱管狭窄症、緑内障、高血圧、血糖値などの文字が飛び交っている。寒い時期、アポを取るのは「転ぶな、風邪ひくな、義理を欠け」の年寄り厳守3箇条にも反する。自分も2週間連続でコートに出勤したせいかボールを追って右肩から転倒、一回転、胸骨を痛めた。東京は寒いし、義理を欠いたのも我が健康への不安が先に立ったからかもしれない。
結婚式のことは殆どの方にとって面白くないと思うので省略。滞在中、映画は3本観た。靖国にも参拝した。帰国便は朝の9時半、日の出前の極寒の中を駅まで歩きたくなかったので、成田空港第2ターミナル内にあるカプセルホテルを予約した。共用のシャワー、洗面所、トイレだけのシンプルな造り、1畳ほどの部屋はまさにカプセル、次回は3、4千円高くても普通のホテルに泊まろうと思った。ホテル指定の喫茶店で朝食券を出したら、セットメニューの写真と共に、一言「チョイス!」と言われた。
日焼けした老バックパッカー、日本人と思われなかったらしい。
写真は靖国神社と奉納されていた絵馬、日本人の民度の高さが感じられる。