






混乱続くタイ政界
■銃撃戦が発端
タイの政治が揺れている。事の起こりはタイ、カンボジア国境での偶発的軍事衝突である。両国の関係は悪化し、タイ政府はカンボジアへの電力供給とネット回線の遮断を行っている。6月には外人も含めてタイ、カンボジアの国境が封鎖された。
5月末、タイ東北部ウボンラチャタニー県チョンボックのカンボジア国境でタイ軍とカンボジア軍の間で短時間の銃撃戦が発生した。両軍の地元部隊の司令官が停戦で合意、本格的な衝突は回避された。両軍とも相手が挑発してきたと言っているので原因は不明であるが、カンボジア軍には死者が出ている。国境を封鎖され、インフラを遮断され、カンボジアとしては憤懣やるかたない。
だからではないと思うがカンボジアのフン・セン前首相がタイのペートーンターン・チナワット首相との非公式電話会談の音声を暴露した。音声の内容は「フン・センおじさん」、「タイ陸軍第2軍管区司令官は向こう側の人間」、「タイ国民は私がカンボジアの首相になればいいと思っている」「(おじさんに対しての)姪っ子に同情して」「電力や水道の供給停止は計画だけ」「望みに応じます」などいった発言にタイ国民の批判が集中した。フン・セン前首相への呼びかけ「おじさん」のタイ語ニュアンスはタイ語に詳しい友人に聞くと「ねぇー、おじさまぁ」といった親近感があるそうだ。
首相の「タイへの裏切り発言」を受けて連立政権第2党のプームジャイタイ党が6月18日、連立政権からの離脱を発表した。首相兼内相のアヌティン・チャーンウィーラクーン党首ほか計8人の閣僚がペートーンターン・チナワット首相に辞表を提出。
6月末にタイ国立開発行政研究院(NIDA)が実施した政権や首相に関する世論調査によると、ペートーンターン首相の支持率は9%と激減した。あの石破首相でさえ30%前後の支持率があるというのに、だ。
6月29日にバンコクで首相退陣要求のデモには主催者発表2万、警察発表6千人が参加した。日本大使館からデモには近づかないようにという注意喚起が発出されている。
■首相、停職となる
ペートーンターン首相の発言が憲法違反および政治倫理規定違反に当たる疑いがあるとして、上院議員36人が憲法裁判所に提出した。裁判の訴えが受理され、ペートーンターン首相は裁判の判決が下るまで一時停職となった。7月3日にはプームタム・ウェーチャヤチャイ副首相兼内相が首相を代行することになったがペートーンターン氏は文化相を兼任していたので引き続き代行内閣の中で文化相を務める。
議院内閣制と言っても憲法裁判所が首相の停職、解任の権利を持っていたり、首相を停職となっても閣内にとどまるとか、国によって議院内閣制の性格は違う。ペートーンターン首相の前任のセター首相は不適切な閣僚の任用といういわゆる「任命責任」を問われて、憲法裁によって解任された。文化相に留まるペートーンターン氏を不適切な閣僚任用にあたるとして一部の上院議員が首相を弾劾する動きもあり、政界はまだまだ揺れそうだ。
■爆弾テロ
こういったタイ政治の混乱に乗じたわけではないがプーケット、クラビ、パンガー県では爆発物の時限発火装置、爆発物などが押収され緊張が高まっている。深南部3県のテロ活動の関連が疑われている。6月26日には駐タイ日本国大使館から下記の注意喚起が発出されている。
1 インターネット上の情報によれば、6月24日、パンガー県において、爆発物を運搬中の2名が警察に検挙されており、車内から爆発物が押収されました。
2 また、6月25日から26日にかけて、観光地であるプーケット、クラビ、ピーピー島において、爆発物と思われる不審物が発見される事案が連続発生しています。
3 現時点では、けが人などの被害は出ていませんが、不測の事態を避けるため、報道等から最新の情報の入手に努め、不特定多数の人が集まる場所を訪れる際には、周囲の状況及び不審物に注意を払い、不審な状況を察知したら速やかにその場を離れるなど安全確保に十分注意してください。
実を言うと7月中旬から8月始めにかけてクラビ旅行を計画している。切符の購入、ホテルの予約も順調に進んでいる。でも外務省の危険情報が、「レベル2:不要不急の渡航は止めてください」、或いは「レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)」になれば計画は中止となるだろう。行って「ホレ、見たことか、言わんこっちゃない」という事態は避けたい。個人的利害が絡むので昨今の政治動向を注視しているわけである。