チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

「国家のあり方」と映画『海難1890』

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

イメージ 4

イメージ 5

イメージ 6

「国家のあり方」と映画『海難1890


■ノンフィクション作家門田隆将さん
門田隆将さんと言えば、2011年3月に起きた東京電力福島第1原子力発電所の事故ををレポートした「死の淵を見た男」の著者で知られている。朝日新聞は2014年5月20日付朝刊で「所長命令に違反 原発撤退」を大見出しにした上で、吉田調書などを根拠に「吉田氏の待機命令に違反し、所員の9割が福島第2原発へ撤退していた」と報道した。


門田氏は自分の取材経験から、この記事は捏造記事と判断し、「なぜ朝日新聞は事実を曲げてまで、日本人をおとしめたいのか、私には理解できない」と発言した。これに対して朝日は当初、看過できない、法的措置をとる、と門田氏を脅迫した。しかし「吉田調書」が朝日新聞以外の報道機関に出回るに及んで、同年8月に社長が記者会見し、いわゆる」吉田調書報道の記事を取り消して謝罪した。捏造を認めたわけである。会見に先立って門田氏にも朝日新聞社から謝罪の連絡があったという。


門田氏がしっかりした取材を基にした著書を次々に出されていることに自分はかねがね敬服していた。その門田さんが、最近、トルコ軍艦「エルトゥールル号」の悲劇と迷走する「邦人救出」問題を真っ正面から扱ったノンフィクション『日本、遥かなり』(PHP)を出版されたという。それは彼のブログを見て知った。40年も昔のことになるが、イランのIJPCプロジェクトに関わっていて、「邦人救出」問題の当事者であった自分としては、まるで自分の意見を代弁してくれている、といった気持ちで彼のブログを読んだ。多くの方に読んで頂きたく、彼の「夏炉冬扇」12月5日号を2回にわたって引用させてもらうことにした。


■ 「国家のあり方」と映画『海難1890』の感動

本日、封切りになった映画『海難1890』を観に行った。朝8時40分からの、まさに最初の回である。朝早くて、さすがに「TOHOシネマズ新宿」もまだ、人影は少なかった。

これほど早く観に行ったのには、わけがある。私自身が先週、トルコ軍艦「エルトゥールル号」の悲劇と迷走する「邦人救出」問題を真っ正面から扱ったノンフィクション『日本、遥かなり』(PHP)を上梓したからだ。

拙著は、この映画の中で描かれている「イラン・イラク戦争(1985年)」だけでなく、「湾岸戦争(1990年)」、「イエメン内戦(1994年)」、「リビア動乱(2011年)」など、日本という国家から見捨てられる海外在住の邦人の「救出問題」を取り上げている。

しかし、2部構成の中の第1部で、およそ200ページを費やしてエルトゥールル号遭難事件とテヘランからの邦人脱出問題を描かせてもらっているため、映画がこの部分をどう表現しているのか、「一刻も早く知りたかった」のである。

映画は脚色されているので、拙著のようなノンフィクションとは全く異なっている。しかし、非常に見応えがある映画だった。

日本とトルコの「人」と「人」、「真心」と「真心」、助け合うということの意味、さらには、国境を越えた無償の友情の大切さ……等々、多くのことを教えてくれる力作だった。何度も目頭が熱くなるシーンがあり、さすが日本―トルコの合作映画だと思った。

私は、映画が描いた1890年に起こったエルトゥールル号の和歌山・紀伊大島沖での台風による遭難事故の部分が特に興味深かった。

見ず知らずの“異国”の人々を救出する紀伊大島・樫野(かしの)地区の村民の必死の姿が、観客の心を見事に震わせたと思う。映画と実際の「史実」を比較するのは野暮というものだろう。むしろ私は、そこで描かれている“人としての姿”に心を打たれたのである。

実際の史実がどんなものであったかは、ノンフィクションである拙著を見て欲しいが、私は、この映画が「伝えようとしたもの」について、大いに共感したのだ。

映画の中で、テヘラン在住の女性日本人教師を演じる忽那汐里(くつな・しおり=二役=)が「どうして、日本が日本人を助けられないんですか!」と叫ぶシーンがある。まさに映画の“核心”である。

国家が自国民の命を救う─それはどこの国でも当たり前のことであり、国家の重要な責務のひとつである。しかし、日本は違う。

現在に至るまで、日本は、海外に住む邦人たちをさまざまな場面で見捨て続けてきた。「イラン・イラク戦争」しかり、「湾岸戦争」しかり、「イエメン内戦」しかり、「リビア動乱」しかり、である。
(続く)





写真は日本のパン、食品見本