千客万来 6
■中国人観光客増加
タイ最北端の街メーサイまでゴールデン・トライアングルから約40キロ、車で30分ほどだ。道が広いのでついスピードが出てしまう。こう配がきつい場所があり、坂を登りきったところで中央線を乗り越えてくる対向車があったらどうしようと心配になるが対向車はほとんど来ない。この道路もチェンコンの第4友好橋の完成に合わせて整備された。メコンをまたいでラオスと北タイを結ぶ友好橋ができたら、中国企業がどっと進出してきて、農業県チェンライが一大工業地帯に変貌するはず、とバンコクのお金持ちが北タイの田んぼを買いあさった。でも今のところ工場が進出してきたという話は聞かない。そのうち北タイの土地バブルは弾けるのではないか。
友好橋が完成したのは昨年12月、今年の春節はチェンライ市内でも多くの雲南ナンバーの車を見かけた。2012年の訪タイ者数の国別内訳は、中国がトップで279万人である。2位が地続きのマレーシアで256万人、3位日本137万人、4位ロシア131万人、5位韓国117万人。
春節が終わっても市内の高級レストランは中国人観光客で一杯だ。橋を渡って気軽に来ることができるから、北タイへの中国人観光客は一層増えることだろう。
■国境の街、メーサイ
道が1車線になり、ゴミゴミと家が立ち並んできたと思ったらメーサイだ。どの道を通っても幹線道路、1号線にぶつかる。この道路はバンコクとメーサイを1本で結んでいて、ドン詰まりがタイとミャンマーを隔てる出入国管理事務所の建物となっている。
国境の町というと寂れた殺風景な街を想像しがちだ。確かにタイとカンボジアの国境、ハットレークは「故郷離れてはるばる千里」の歌詞が思い出されるほど地味だった。しかしメーサイは違う。入管の周りには宝石、甘栗、果物、民芸品、腕時計、メガネ、お茶、唐揚げ、釣り道具、双眼鏡、野菜の種、釣り竿、Tシャツ、電化製品、違法DVDコピー、種々雑多な商品を売る屋台や店舗がぎっしり並んでいて、ミャンマー人や中国人やファラン、買い出しのタイ人で喧騒を極めている。
取りあえず、駐車しなければならない。入管がはるか遠くに見える場所であれば、路上駐車は可能である。しかし誰でも歩く距離は短くしたい。だから入管近くの道路はいつも車で一杯だ。駐車スペースを見つけることができたらタンブンをはずまなければと思うくらいの幸運だ。入管の200mほど手前にメーサイ警察署がある。警察に用のある人しか入ってはいけないのだが、入口の警官が見とがめないことをいいことに、構内に車を入れる。皆、適当な場所に車を停めている。駐車違反に問われた車を見たことはない。
■メーサイ商店街
車を降りて、入管事務所の方角へ歩く。歩道、車道には露店が並び、人にぶつからずに歩くのが不可能なほど混み合っている。
チェンライのお土産は何がいいですか、と聞かれることがある。山岳民族のデザインのバッグや小物入れ、ウーロン茶、コーヒー、それに竜眼、マンゴ-などのトロピカルフルーツの乾燥品、人によってはパチ物のバッグやサングラス、北タイのTシャツなどを購入する。10年ほど前、ここで買った肉厚の乾燥椎茸が日本で喜ばれたことがある。とにかく、土産物は大体ここでそろう。
でも商品の多くが中国製であるので、モノによってはリスクが伴う。ある種の映像が好きな友人のために、ヌードのジャケットのDVDを数枚購入したことがある。でも家に帰って再生してみたところ、マンガの一休さんやタイの高僧の説法が入っていて、友人の期待に応えることができなかった。3枚で100Bでは仕方ないか。
人混みを抜けて、入管事務所右手のサイ川を見下ろすテラスへ行く。「タイ最北端」と書かれたゲートがあり、ここで記念写真を撮るのが観光の約束事となっている。川の向こうがミャンマー領だ。
サイ川を右手に商店街を歩き、左にアーケードの坂を登る。中華商店街と看板が出ている。商店街の中ほどにメーサイのお金持ち、タオさんの家がある。間口1間ほどだが、中に入ると広くなっていて、そこに5階建て、総ガラス張りの奇妙な形のビルが建っている。風水の関係でこのような形になったらしい。一見の価値があるのでお客さんを案内することがある。
先月行ってみたら、中庭の動物の檻や花壇が整理されて、モダンな喫茶スペースに変わっていた。カウンターの奥でタオさんがサンドイッチを作っている。客はファランが半分以上。
混んでいて悪いねー、今度また来てねー。タオさんはいつのように元気一杯。メーサイに行く楽しみがまた一つ増えた。
写真は上からタオさん、タオさんの家、タイ最北端、それにアヘン博物館