千客万来5
■ ラオス
パスポートが無くともタイからラオス領ドンサオ島に渡ることができる。ただし、入国料として一人30Bをラオス当局によって徴収される。お金と引き換えに「ゴールデン・トライアングル・スペシャル・エコノミック・ゾーン、ラオス人民民主共和国」と書かれたドンサオ島訪問チケットをくれる。昨年まで20Bだった。
先週、また友人夫婦2名を島に案内した。入国料を払う時、3人だったのに2枚切符をよこす。あれ、3人ですけど、と言ってから気がついた。係官が自分を現地ガイドと誤認したのだ。ガイドは入国料免除だ。あっ、ボク、ガイドなんです、と言ったがもう遅い、タイ語の発音が悪くて30B儲け損ねた。
ラオスは東南アジアの小国と言われるが、国土面積は24万平方キロ、ほぼ本州に匹敵する。デンマーク、スイス、オランダ、ギリシャなど多くのヨーロッパ各国より広く、韓国と北朝鮮を合わせた朝鮮半島より広い。韓国が大韓民国なら大ラオス共和国と言う資格はある。ただし、人口は640万と千葉県と同じ程度。労働人口の80%が農業に従事し、国民総生産の4割を農業が占める、IMFによると2011年のGDPは87億ドル、鳥取県の3分の1の経済規模だ。1日2ドル以下で暮らす貧困層が国民の60%以上を占めるが、GDPの割には農産物が豊富なため、飢えることはない。
「貧困の中の豊かさ」と言われるゆえんである。
■ラオスと中国
ドンサオ島に渡るとき、ラオス河畔にけばけばしい建物が見える。これは中国資本によって建てられたカジノだ。メコン流域には特区があってカジノホテルがいくつもある。中国人はパチンコのようなチマチマした賭け事はやらない。ルーレットやバカラに数十万、ときには数千万の金を賭ける。カジノの客の7割が固定客という。ラオスのカジノに行った日本人の話を聞くが、せいぜい数千B儲けたとか損した、という話ばかり。もちろん邦人客は残り3割のあまり金にならない客に分類される。
ラオスは中国領ラオス自治区と言っていいほど中国の影響を強く受けている。ビエンチャンのショッピングモールや東南アジアスポーツ大会で使用されたスポーツ施設などは中国の援助や協力によって建設された。また国土の大部分を占める山岳地帯でのゴム栽培も中国資本によるものが多い。ラオス国内を旅したのは2度だけであるが、国道沿いには「XX公司」と漢字の書かれた工場、施設を多く見かけたし、雲南ナンバーの中国車が我が物顔で走っていた。ラオスは幹線道路でも未舗装部分が多いが、中国製の建機、中国人労働者による舗装工事が盛んに行われていた。
■ラオスと日本
国境を接しているラオスは中国に対してはっきりとものが言えない。
2012年7月カンボジアで開催されたアセアン外相会議で共同声明が発表されないという異常事態が起きた。これは中国が南シナ海で行っている不法行為への非難を声明に盛り込むべきだというフィリピン、ベトナム等の要望を議長国であったカンボジアが認めなかったためである。ラオスはおずおずとカンボジアに同調したが、それは中国に気兼ねしたからだ。
これを見て安倍首相は日本の総理として13年ぶりとなるラオズ訪問を昨年11月に行い、経済活動のみならず、政治、安全保障、文化交流など様々な分野での協力を約束した。東南アジアの国々は中国を恐れてはいるが決して好きではない。だから、もう一つのアジアの大国、日本にはもっと頑張ってほしいと考えている。安倍首相のアセアン10カ国歴訪はその期待に応えたものと言える。
タイの在留邦人は5万人を超えるが、ラオスに長期滞在する日本人はわずか数百名である。タイ語とラオス語は同系の言語で通訳を必要とせずに意思の疎通ができる。労働賃金を考え、タイの分工場、支社をラオスに置くというプランはあるが、なかなか実現しない。これはラオスが社会主義国の非効率な制度を残しているから、あるいは外港を持たない不利なインフラのせいではないかと思う。
■一路メーサイへ
こんな話をしているうちに待ちくたびれた船頭さんが呼びに来る。また小型ボートに乗ってゴールデン・トライアングルのタイ領を目指す。ラオスに行く時はボートの縁を握りしめていた人も、帰りは対岸に見える金色大仏の写真を撮るほどの余裕が出てくる。ボート代は下船する時、船頭さんに直接渡す。借りたライフジャケットは川岸を上がった処にある受付へ返す。
ドンサオ島の次はタイ最北端の街、メーサイへと向かう。チェンコンの友好橋開通に合わせて整備された片側2車線の道路を100キロで飛ばす。
写真は上から入国チケット、ラオス国旗が描かれた看板、ボートとメコンタイ側風景です。