チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

日本で観たタイ映画

サッパルー、ポスター

お化け映画ではなかったけれど

チェンマイ、ドイステープ

同上

仏像多数

ドイステープで祈る人

日本で観たタイ映画
■いい映画もある
映画は映画館で観たい。館内が暗くなるとスクリーンにCMが上映される。昔はタバコや結婚指輪は月収の3倍が標準です、といった宣伝があったが今はさっぱり見ない。せいぜい映画館近くのレストランやカフェの紹介など。そのあとに映倫のお知らせ、当館上映予定映画の予告編が流れる。予告編はどれを見ても面白そうだ。本編より予告編のほうがよっぽどよくできていると思う。予告編の終りにX月X日より本館にて上映、という字幕が出る。今回もああ、この時はタイに戻っているから観られないんだよな、と思ってしまう。
まあ上記の簡単な前座の後、いよいよお待ちかねの映画が始まる。期待が高まる一瞬である。

今回の帰国は約1月といつもより長めであったが、その間5本しか映画を観なかった。その中の一つがタイ映画、「サッパルー」である。サッパルーとは葬儀屋の意味らしい。タイ東北部イサーンを舞台にしたホラーコメディ、タイでは2023年興行収入第一位を記録したヒット作とのこと。

数年前、日本で観たタイ映画「バッド・ジーニアス 危険な秀才たち」は今でもタイの名画10本の中に入っている秀作だった。この大規模な試験不正計画を企てる優秀な学生を描いたサスペンススリラーは予想外のヒット作となった。自分はこの主演女優が出演した他のタイ映画も日本で観たくらい。彼女の名前は「チュティモン・ジョンジャーンルックジン」という。日本のファンには覚えきれない。

■映画サッパルー
久し振りの日本封切りのタイ映画、多少の期待をしていったが結果は面白くもあり、面白くもなしといったものだった。面白い点は多少なりともタイの精霊信仰や幽霊、或いはタイの葬式について知識があったおかげで、ああ、イサーンではこうなんだと気づいたところである。一方、面白くないと思う人は筋が脈絡もなく、リアリティが全くないという点にあると思う。確かに映画の質としては観客評価5点満点中2という低評価もわかる気がする。

粗筋は下記の通り。
タイ東北部のイサーン地方。霊の存在を信じるこの土地で、妊婦バイカーオの亡霊を目撃する住人が多数あらわれる。しかし、同じ街に住む元カレのシアンのもとには一向に姿を現さない…。どうしてもバイカーオに会って話がしたいシアンは、街でただ一人の葬儀屋のもとを訪れ、幽体離脱の術を伝授してくれと頼み込む。霊体になってバイカーオのいる死者の世界(マルチバース)へ向かおうというのだ!老い先の短さを自覚している葬儀屋は、息子と共にこの街の葬儀屋を継ぐことを条件に指南を開始するのだが――。街を騒がす元カノの本当の目的とは一体・・・。

■勉強になる点はあったが
チェンライでは何度か葬式に出たし、母の葬儀も執り行ったが葬儀屋の出番はなかった。だからタイには葬儀屋がいないと思っていたがイサーンには存在するということが新鮮な驚き。葬儀屋は呪術師を兼ねていて社会的地位も高いようだ。大学を出て司法試験準備のために帰郷した息子が親の葬儀屋を継ぐことを承知するくらいだ。

映画は妊婦が首吊り自殺するところから始まる。タイ人ならナンナークという妊婦の悪霊をすぐ思い浮かべるだろう。怪談ナンナークは何度となく映画化されている。妊婦が横死した、これだけでこれから起こる怪現象の想像がつく。こういった幽霊はバラモン教や中国思想に影響を受けたピー信仰と結びついている。ピー信仰とは、主にタイ族が信仰するアニミズム(精霊信仰)のことである。バラモン教、仏教などの外来宗教の伝来以前からタイ族全般に存在したとされる信仰の形態でタイ人の精神生活を広く支配している。

通夜の客たちが「奇数だ」、「偶数だ」と言っているシーンがあったがこれも日本人には理解できないかも。葬式では通常御法度の博打開帳が公認されるのだ。
また、卵を投げて、卵が割れた地点を埋葬場所とするという風習もイサーンならではと思った。チェンライでは遺骨、遺灰は埋葬せず山や川に散骨するのが普通。タイはチェンライだけではないことを痛感した。

妊婦の亡霊は幽体離脱した元カレには冷たい。元カレは死後の世界でも振られることになる。結局、元カレは亡霊の言い分に納得し、元気を取り戻す。確かに脈絡のないスリラーコメディだが、見終わった後、だからなんだよ、という感はぬぐえない。
まあイサーンと北タイの文化、風習の違い、タイ人一般のピー信仰について勉強できたからまあいいか、と思った作品だった。タイの慣習、文化に興味のない人にとっては全く面白くない映画だからお勧めはしない。