チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

ラオス、アカ族の村を訪ねる 12

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ラオス、アカ族の村を訪ねる(12)

■スリップ転倒を防ぐには
1時間遅れたが、アヒルの炙り焼き、ペッヤーンの食事が始まった。
「アランよ、あんたはいつも今日のような危険な旅をしているのか」、「今回は特別だった。いつもは安全を心掛けている」。
エバー・アンド・ネバー(これまでになかったし、これからもない)だな、と確認したが、悪路走行はこれから2度体験することになる。但し、自分がバイクを運転することは少なかったので転倒することはなかった。

アランはメルボルン郊外の林や牧場をバイクで走るのが趣味だそうだ。若い時から悪路走行に慣れている。
ラオスには悪路しかないのだから、リー君も泥道を走ることに慣れている。この日、途中からリー君のバイクに乗り換えたのだが、後輪がスリップすると巧みに前輪を反対方向に曲げて、転倒を防ぐ。カウボーイのロデオみたいなものだ。ロデオは瞬間的な決断力が要求され、危険でダイナミックな競技だ。振り落とされて死ぬ人もいる。でもカウボーイが暴れ馬に乗る時間はわずか8秒である。

この日は4時間以上、ロデオを続けた感じになる。借りたバイクはもちろん、ムンの街を走るバイクの7割以上はバックミラーが付いていない。転倒した時に、もげてしまったに違いない。

リー君より自分のほうがバイク歴は長いわけであるが、日本の道路はほとんど舗装されている。考えてみたら泥道走行は生まれて初めてであった。こういった悪路を走行するには特殊な技術がいる。それも知らずにあの道を走ったのは無謀と非難されても仕方がない。

■アランの母親
ペッヤーンはほぼ黒焦げ状態で、期待を裏切ったが、アヒルの丸焼きが食べられるのであるから、ぜいたくは言えない。外は真っ暗で雨が降り始めた。
4時間前、ジョンジェン村を出るのは危険と思ったが、この天候状態を見ると、もし留まれば、2,3日はあの村で足止めされただろう。そう思うと、アランの決断は正しかったことになる。ナイス・デシジョンだったな、と褒めると、まんざらでもないような表情であった。

機嫌のよくなったアランは、昨日禁煙したのであるが、また煙草を始めると言って、リー君に渡したライターと煙草をとり返した。この一連の禁煙、再喫煙はこの旅の間中、毎日のように繰り返された。オーストラリアでも喫煙者には厳しい社会になっていて、レストランで食事をしながらの喫煙はまず不可能。ラオスであれば20本入りの煙草が一箱50円位で買えるし、食堂で喫煙してもだれも文句を言わない。
メルボルンではかなりストレスがあったのか、煙草ばかりでなく、わざとゲップやしゃっくりを繰り返す。その度にああ、悪いマナーだ、もし、おふくろが知ったら、嘆くだろうな、という。

彼の母親は84歳になるが自分で車を運転して、療養中の姪を見舞いに行ったりしてるという。矍鑠としていてアランは頭が上がらないという感じを受けた。
あまりにもしつこくゲップをするので「お母様がこのような息子さんを見たら、きっとお嘆きになるでしょうな」と言うと、そうだな、とすっかりおとなしくなってしまった。

■リー君の母親
リー君のお母さんが彼が子供の時に亡くなったことはフエサイで会ったときに聞いていた。君がいくつの時に亡くなったの、と聞くと11歳と11カ月の時でした。母は34歳で亡くなったのです。
父は伴侶の死を嘆いて、日夜酒を飲むばかり。その後、父親は18歳の女性と再婚し、3人の腹違いの妹がいる。新しいお母さんは現在26歳だから、リー君とは3歳しか違わない。

ところでおふくろさんは何で亡くなったんだい、とアランが聞くと死因はマラリアだったという。

マラリア原虫へのワクチンはないが、抗マラリア剤はいくつかある。マラリアの治療薬としてはキニーネが知られている。他にはクロロキン、メフロキン、ファンシダール、プリマキン等がある。いずれも強い副作用が現れることがあり注意が必要。

近年では、漢方薬を由来としたチンハオス系薬剤(アルテミシニン)が副作用、薬剤耐性が少ないとされ、マラリア治療の第一選択薬として広く使用されるようになった。これによりこれまで制圧が困難であった地域でも大きな成果をあげている。2010年以後、アルテミシニンはグローバルファンドの援助によって東南アジアのマラリア治療薬としてインドネシアの国境付近のような僻地であっても処方されるようになってきている。

でもマラリアの治療薬はタダではない。200ドルあったら母は助かったのです、リー君は唇を噛む。だからお金は大切です、これが彼の結論だった。11歳11カ月の時からそう思い続けてきたのだろう。(続く)


写真上から「バケツの水を浴びる」「ペッヤーン」「ペッヤーンの晩餐」「食堂の奥さん」