チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

ラオス、アカ族の村を訪ねる 18

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ラオス、アカ族の村を訪ねる(18)

■居心地の悪い村
アランはゆで卵3個、リー君と自分はインスタントラーメンだけの遅い昼食を終え、ラワ村から5キロというアノン村を目指した。所々水溜りのある泥んこ道もあった。でもリー君の運転技量の高さがわかって来たので、いちいち下車することもなく、ちょっと足をあげて泥水の撥ねをよける程度。バイクは乗せてもらうほうが自分で運転するより楽である。

村を通る一本道の中ほどにバイクを停めた。山裾から上に向かって同じような貧しい家が立ち並ぶ。この家はお金持ちに違いないという家はない。道をゆっくり3人で登る。アヒルや黒豚の親子、犬が道を闊歩している。水を入れた大きなバケツを天秤棒で運ぶ人もいる。見た目は長閑なアカ村だ。
おお、2年前来た時と何も変わっていない、とアランはご満悦だが、何か険悪な空気を感じる。

女の子が数人、道でボール遊びをしていた。入学前だろうか、可愛いな、と思ってカメラに手をかけた途端、子供たちは一斉に家の中に逃げ込んでしまった。戸口からこっちを上目づかいで見ている。自分は人攫いか。

アカ特有のヘルメットを被り、上半身裸という若い女性もいる。若い男も目につく。チェンライのアカ村、パナセリでは子供、老人、中年女性ばかりで若者はほとんど見かけない。若い男女は学校や出稼ぎのため、村を離れているのだ。村から都会に働きに行く人はいないほど、アノンは閉ざされた地域なのだろう。

村の集会所の前に若い男が数人たむろしていた。しゃべるでもなく、笑うでもなく、とにかくそこに集まってこっちを見ている。タイ人やチェンライのアカ族であれば、目があえば微笑みを返してくれる。でもアノンの若者はにこりともしない。マンハッタン北部ハーレムの街角にたむろする黒人少年たちの映像を見たことがある。無職で将来の希望が見いだせないという点では彼らには共通するものがある。

■麻薬
招かれざる客である。人にカメラを向ける雰囲気ではない。戸口から煙が漏れてくる家があった。アランは戸口のおじさんに声をかけると家の中に入り込んだ。おじさんは大きな竹のキセルで煙草を吸っている。煙の甘い匂いで気が付いた。これは煙草ではない。阿片だ。
家に入ったアランとリー君を残して、一人で山道を登った。タイの山岳民族の村であれば、好奇心丸出しの子供が付いてきたり、村人があいさつしてくれるのであるが、全くの一人、放し飼いの黒豚が道で寝ているだけである。豚も近寄ると逃げていく。気が滅入る。

もちろん、ラオスでも麻薬はご法度である。でも農産物の中で一番利益が上がるのは阿片である。貧しい山岳の農民が大きな金をつかむことができる手立ては麻薬、覚せい剤に限られる。おそらく、この村の近くの山の中でケシが栽培されているのだろう。もしかしたら中国からの原料をもとに覚せい剤を精製する工場があるかもしれない。村に入り込んだよそ者が麻薬のことを外部やラオス警察当局に密告するかもしれない。だから皆よそよそしいのだろうか。

アランとリー君は1時間近く、阿片の家から出てこなかった。いい写真が撮れた、とアランは喜んでいた。リー君は一服吸わせてもらったそうだ。お前もトライしてみればよかったのに。ばれる心配がなくても法を守るのが日本人だ、と答える。

■目的のラオカオ入手
アカの衣装を付けたおばさんが戸口に座って棉を引っ張りながら糸を紡いでいた。アランが写真撮影の許可を求めると5000キップ(50円)くれるなら、という。50セントだぜ、安いものだよ、アランは30枚以上写真を撮り続けた。自分も2,3枚写真を撮ったがあまり気分のいいものではない。

3人で歩いていたら、村の顔役風のおじさんが現れた。年は50くらいか。「よそ者が来ると、若者の心が荒れる。自分がそれを鎮めるから一人1万キップ、合計3万キップ(300円)出しなさい」。
リー君を通していろいろ質問した。アノン村の人口は700人、アニー・アカに属する。境を接する隣村の人口が500人、合わせて1200人の集落だ。リー君が、自分の受け売りで、アカ族と日本人の先祖は共通である、などと話している。そうか、日本人か、実はアカの若者が一人、日本に留学していると言って態度を和らげだ。その青年がこの村の出身かどうかは知らない。でも彼が産業のないアカの村に戻って暮らすことはないだろう。

村の小間物屋に飛び込み、ラオカオを求めた。汚い大瓶から驚くほど透明な液体が、自分の300ml入りペットボトルに注がれた。代金は5000キップ、またいいラオス土産ができた。(続く)


「村の風景」「道端の豚」「お手伝い」「5千キップあげた女性」「タイのアカ族」