チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

ラオス、アカ族の村を訪ねる 9

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ラオス、アカ族の村を訪ねる(9)

■ 最悪のツーリングコンディション
パヤンルアン村を子供たちに手を振られながら出発した。さらに国道をさかのぼって20キロ先にあるジョンジェン村を目指す。天候は今にも降りそうな曇天であったが、走り始めて30分もしないうちに小雨が降ってきた。アランは長そでの防水ヤッケを着ているが、自分はTシャツ、サンダル。
道はますます悪くなってきた。登りはまだいいのだが、下り道はほとんど直角に見える。ラテライトの道は轍(わだち)の跡がさらに通過したトラックで深くなり、そこを水が流れる。
乾けば粉塵となる粘土は滑りやすい泥濘と化している。

パナセリにアカ女性と結婚したO君という男性がいた。彼は肋骨ヒビ入り、打撲症数知れず、という代償を負いながらも、他に手段がないためバイクでの泥道走行をしていた。下り坂ではギアをセカンドに入れ、アクセルを落として斜めに滑り落ちるのがいいです、などと言っていた。かなりの高級テクニックだ。とても自分には真似できない。恐怖と緊張で上半身が硬直してくる。

やがて山道は川に遮られた。川幅は5mくらい、水量は大したことはない。トラックであれば強引に渉ることができるだろう。バイク用の橋がかかっていた。丸太と竹でできている。幅は1mもない。橋は小雨で濡れている。急発進、ブレーキは禁物、あっという間にバイクごと川に落ちる。セカンドでスピードを一定にしたまま渡りきる。
これで終わりではない。この橋を渡るともうひとつ、丸太を組んだ幅50センチほどの橋があった。溝に車輪が落ち込めば転落だ。ままよ、と時速10キロほどで渡り切る。人物しか撮らないアランが、リュックの中からカメラを取り出して渡ったばかりの橋を写していた。

道は谷から山へと登る。雨は断続的に降る。Tシャツとジーパンがしっとりと濡れ、体温を奪っていくのがわかる。峠で休憩をとった。遠くにメコンに流れ込む大きな川が白く見えた。寒い。
アランとリー君がツーリングを続けるべきかどうか相談している。お前はどうか、一応アランが自分に尋ねた。二人の結論が出ているのはわかっていた。行くのであれば付いていくと答える。

■ついに転倒
道はさらに悪くなった。慎重に運転していたのだが、道の端を通っていてあっという間に転倒した。ジーパンの裾が泥だらけになった。20mほど先を走っていたアランたちは気づかなかったようだ。粘着性のある泥が前後の車輪にぐるりと巻き付いている。タイヤのグリップ力はほとんどない。
アランはリー君を降ろし、長い足で交互に地面を蹴りながら泥道を登っている。自分は足が短いし、サンダルではキックがきかない。地面を蹴るたびにサンダルの裏に泥がくっついて重くなる。

何の因果で、こんな原チャリに毛の生えたような中国製バイクに乗って北ラオスの山道で難儀しなければならないのだ。ローギアでも坂を登れない。クソバイクめ。
自分の年であれば、革ジャンに身を固め、ハーレーダビッドソンツーリングファミリー1600佞△燭蠅紡任舛泙燭って、ハイウェイを疾走しているのが相応しいというのに。

小雨は降り続き、道はさらに酷くなってきた。山肌をL字型にカットして道を造成してあるので、片側は山、反対側は谷となっている。速度を落としているので大丈夫とは思うが、最悪、バイクごと谷底へ転げ落ちる。

泥濘と化した登り坂で再び転倒した。怪我はしなかったが右半身が泥だらけだ。バイクを起こし、やっとのことでエンジンをかける。前を行くアランもバイクを降りて押している。自分もバイクを押すのだがサンダルが滑ってバイクを押し上げることができない。タイヤも空回りする。一人では無理だ。アランに助けを求める。アランが駆け下りてきてバイクを後ろから押す。「ほら、スロットルをあげて、それいけ」。

インパール作戦で日本の兵隊さん達も泥濘の中このようにして野砲を押し上げたのだろうか。兵隊さんの苦労がよくわかる。
今は日豪連合軍だ。足を何度も滑らせ、そのたびに膝を泥道につけた。アランが必死にバイクを支える。やっとのことで坂を登りきった。

■ジョンジェン村
2時過ぎにジョンジェン村に着いた。寒さと疲れで気分が悪い。この村は100家族、484人のアカ族が住んでいる。村の広場にあった簡易水道で足を洗った。粘着性のある泥はなかなかサンダルを離れない。このあたり、女性の多くはアカ特有のヘルメットをかぶっている。上半身裸の年配女性も珍しくはない。子供はほとんどはだし。
村に食堂はなく、村長宅で遅い昼食を作ってもらうことにした。アランも疲れたのか村長の家のテラスで動かない。(続く)


写真上から「橋と悪路」「竹壁の家」「峠からの景色、川が見える」