熟年ライダー
■バードウォッチング
ここ半月ほど、日本の思い出話やウズベクで書いたブログの再掲、あるいは引用記事など、書き溜め原稿中心だった。察しのいい方はお分かりと思うが、10月末から11月初めにかけて10日ほど旅に出ていた。
話は1月以上前に遡る。10月というのに雨が多く、プミポン前国王の火葬式が近かったり、なんとなく気の晴れない頃、フラリとNさんがやってきた。彼とは2年前にバイクでラオス縦断旅行をした。点から点をひたすら走り続ける過酷な旅ではあったが、生涯初の海外長距離ツーリング、今でも楽しく思い出す。メコンの川べりでグラスを傾け、いくつまでこんな旅行ができますかね、と話しあったことがつい昨日のように思えるが、あれからもう2年半経ってしまった。
タイ南部のチュンポーンに鷹や鷲の猛禽類が集団で渡っていく場所がある、渡りは10月末から11月初めにかけてしか見られない。これを見に行きませんか。
Nさんは長野県松本市に住んでいたことがある。鳥類観察の団体に属していて、渡り鳥のルートとして知られる乗鞍高原、白樺峠に陣取って、サシバ、ハチクマ、ノスリなど「タカの渡り」の定点観測に参加したことがあるという。「タカの渡り」とは、春から秋にかけて繁殖したタカ類が、食料を求め暖かい地方(朝鮮半島・インドネシアやフィリピン近辺)へ渡って行く。中部地方以北のタカ類が、乗鞍高原近辺の上空から上昇気流に乗って山を越えていく場所が「白樺峠」。多い時には1日3,000羽のタカ類が観察されるという。
シベリア、モンゴル、満州、日本、朝鮮半島から飛来するタカがタイのチュンポーンで上昇気流に乗って一気にマレーシア、インドネシアへと南下していく。タイにおける「タカの渡り」観察のメッカ、タイの「白樺峠」がチュンポーンとのこと。
面白そうですね、行きましょう。二つ返事で承諾した。
■ホンダCB400とフォルツァ
タイ人とバードウォッチングがどうも結びつかない。チュンポーンは「地球の歩き方」に2ページのみ紹介されている。南部の海浜リゾートで、ダイビングで有名なタオ島への通過地点で、渡り鳥の話は出ていない。タイ観光庁のネットにチュンポーンのカオ・ディンソー展望台でバードウォッチングも楽しめます、という短い紹介記事があったくらい。
ところでチェンライとチュンポーンはどれくらいの距離があるのか。バンコク経由の経路で1250キロもある。到着までに2泊必要だろうか。1日目に行けるところまで行きましょう、とNさんはいう。
ラオスに行った時、NさんはホンダPCX150,排気量150佞離丱ぅだった。100キロ出るが巡航速度としては80キロ程度。旅の終わりころは自分の279佞離侫ルツァが100キロ以上のスピードでPCXのはるか先を行き、小休止。風防ガラスを拭いたり、水を飲んだりしていると、PCXが眼の前を過ぎていく。やおらフォルツァでまた追いついて、を余裕で繰り返していた。
今回、NさんはホンダCB400、フォルツァより排気量の多い大型バイクだ。ラオスに行った時、中西さんと行く時は400佞らいのバイクでないとダメですね、と悔しがっていたから、今度は仕返しをされるかもしれない。巡航速度100キロで行きましょう、と言う。100キロ走行ということは、追いつく時には120キロ以上のスピードを出す必要がある。自分はいつも安全運転でせいぜい80から100キロほどしか出さない。ラオスの仇をタイで討たれることになるのか。
■ひたすら距離を稼ぐ
プミポン前国王の喪が明けた10月30日の午前7時にチェンライを出発、200キロ毎にガソリンを補給し、ついでにトイレを済ませ、ひたすらタイの国道を南下する。沿道に名所、旧跡、風光明媚なスポットがあっても完全に無視。ただ走り続ける。
タイの幹線道路は片側2車線が普通、高速道路ではないが、ラオスの国道のように牛や羊が横切らないので走りやすい。前を走るCB400を見失わないように付いていく。車間距離100m以内なら安心。200m離されるとNさんの姿が2センチくらいになり、300m先に行かれるとNさんのバイクは米粒くらいになってしまう。右後方から迫る車をやり過ごして120キロのスピードで追いかける。とにかくNさんに付いていく。ただただストイックにバイクを走らせる。どこまで続く泥濘ぞ、限りある身の力試さん、16時前にバンコクの200キロ手前にあるチャイナートに到着、この日はここで宿を取る。
走行距離は600キロを少し超えていた。慣れた人から見たらなんだよ、ということなのだろうが、600キロ?、よーし、できないことやってやるし、の気持ちだったから快い疲れと達成感を感じた。この分ならツーリングもあと5年はできるかな。
写真は整備中のフォルツァ、CB400、チャイナートとその市場