チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

王室の権威

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王室の権威

■葬送行進
プミポン前国王の葬儀は10月25日から29日にかけて執り行われた。5日間の中で最も重要な儀式が26日の火葬の儀、この日に合わせて日本の秋篠宮ご夫妻をはじめ各国の弔問客が参集した。26日は国民がテレビでお別れできるようにと、国民の休日となった。お役所、銀行、商店はもちろん、コンビニやスーパーまで全休または半休になった。

この日は朝からテレビは葬儀一色、番組は全局これだけ。バッキンガム宮殿の衛兵にそっくりの恰好をしたタイ衛兵が何百人も国王の棺の前後に整列し、静かな葬送行進が始まる。棺の中には国王が座った姿で鎮座されているのだそうだ。騎兵の馬も、衛兵の半歩進んでは小休止のゆっくりした歩調に合わせて進む。沿道には小銃を地に付け、うつむいた兵士が等間隔に並ぶ。悲しみを表す彫像の列のようだ。この日の葬儀には25 万人のタイ人が沿道に集まったという。沿道は黒の喪服の人々でびっしり、地面にひれ伏して泣いている女性もいる。シリントン王女が映っていたが、彼女も涙を拭っていた。それを見てブアさんも泣いている。ブアさんとニイさんは朝からすっとテレビを見続けだ。

とんがり帽子、赤ジャケットの衛兵も大変だ。葬送行進は数時間は続いていたのではないか。午後になって王様の棺は王宮広場に入ってきた。軍楽隊のマーチに合わせて行進する。よく見ると、ワチラロンコン国王、シリントン王女をはじめとする王族も行進に加わっている。暑い日差しの下、葬列は王宮広場を3周するからやんごとなき人も大変だ。

■街は葬送一色
チェンライの旧空港にバンコクの王宮広場に建てられた火葬塔のレプリカがある。これと同じようなレプリカが全国800カ所に建てられて、その地域で葬送の儀を行うという。1週間前にはレプリカの前に行って写真をとることができた。24日に行ってみたらロープが張られ、関係者以外入場禁止、女性はロングスカートの喪服でなければダメとのことで、黒ジャージのブアさんはレプリカを拝むことさえできなかった。
26日の午前中、バイクで市内の見回りをしたが9割以上の店がシャッターを閉めていた。旧空港の周りは警官や黒シャツに黄色スカーフの係員でびっしり、県内の偉い人が勢ぞろいするのだろう。いつもは人でごった返す市場も全く人けがない。交通量もいつもの半分以下。時折見かける人は黒づくめ。元旦よりも街中は閑散としていた。


民族自決
世界に民族はいくつあるか。民族を「人種的・地域的起源が同一であり、言語・宗教などの文化的伝統と、歴史的な運命を共有する人間の集団」と定義すれば民族の数は3000を越えるという。一方、国の数は、というと国連加盟国で193だから、非加盟国を入れても200くらいだろう。民族自決と簡単にいうが、民族がそれぞれ独立を求めたら大変なことになる。

スペインではカタルーニャ州が独立を求めている。この州は300年前にスペインに併合された。カタラン語を話し、我々はスペイン人でなくカタラン人だという。この地方は工業化が進んでいてスペインのGDPの2割を稼いでいる。カタルーニャの富が他州に使われることは許せないという。アルマダ艦隊が敗れて以来、ずっとスペインは落ち目だから、スペイン王室の国をまとめる力が落ちたのではないか。
欧州はハプスブルグ家が力を失ったあと、その広大な帝国は、オーストリアハンガリースロベニアクロアチアチェコ、スロヴァキア等に分かれてしまった。王室のグリップが弱まると、民族は独立を果たす。

■王室の存在
13世紀から18世紀にかけて北タイにはランナー語を話し、ランナー文字を使う、タイとは別の文化を持つランナー王国があった。ブアさんは私はランナー人と言うし、植物の名称もバンコクではXX、チェンライでは○○です、などという。家の近くの立体交差の橋にはタイとランナー文字で橋名が書かれている。それでも北タイ独立という声が上がらないのは、カタルーニャと違って貧しいせいもあるが、やはりタイ王室の存在にあるのだろう。王室の下にこの国はある、という確固とした意識はタイ国民に共有されているように思う。タイの隣国、ミャンマーでは少数民族が反政府活動を行っており、まだ収束したとは言えない。タイも少数民族を多く抱えるがミャンマーのような悩みはない。この差は政府を越える王室のある無しに関係しているのではないか。

それでもタイの現王朝、チャクリー朝はわずか10代、225年、一方、日本は125代、皇紀2677年の皇統がある。日頃は気にしないが日本の強さの源は天皇のご存在にあるのではないか。タイの葬送をテレビで見ながらそんなことを考えた。



写真1枚目は王様の柩、3枚目火葬塔のレプリカ、最後の2枚はいつもは賑わうチェンライの市場