我が家のパパイヤ
チェンライの7月
■雨季のテニス
チェンライには暑季、雨季、乾季の3つの気候区分がある。でも1年が等分に3つの気候に分かれるわけではない。暑季は3,4月の2ヶ月、乾季は11月から2月までの4ヶ月、そして雨季が5月から10月の6カ月間となっている。無論、月を跨いだ途端に気候が変わるわけではないが、季節の移ろいは実感できる。
今、7月は雨季の真っ最中、7月の平均降雨量は300ミリ、7月の東京の降雨量は150ミリだから東京の倍は降る。日本の梅雨と違って1日中降ることは稀で、スコールのように短時間、集中的、局地的に降り、1時間もしないうちに降り止んで太陽が差す場合もある。
先週は週4日コートに出勤した。目が覚めた時、驟雨だった日が1日あり、この日は休みにした。コートの水はけがいいので、夜半の雨であればコートに行ってみる。仲間とコートの水切りをすればプレーできることが多い。雨季と言っても週に4-5日テニスができるのはありがたい。転がったボールを拾い、駆け足で戻る時、あと何年できるかな、と感じることがある。
でも日本で週1回テニススクールに通う兄の話だと、スクールに93歳になる髭の老人がいて「テニスはいくつになってもできる、いつもの相手は96歳だ」と80歳にもなっていないのだから頑張れと兄を励ましてくれたそうだ。テニスをやっているから体が動くのではなく体が動くからテニスができるということで、たまたま人並外れて健康に生まれついたのだろう。誰もができることではない。
90歳を越えて富士登山した冒険家、三浦雄一郎さんは「老いてこそ挑め」と言っておられる。でもこっちは若いときから挑んでこなかったしなあ、北タイの片隅でこのままズルズルと消えるのか、と俯いてしまう。
■季節の果物
季節の移ろいは市場に並ぶ果物によっても裏書される。6月はライチの季節だった。今年は暑さのせいかライチはあまり見かけなかった。生り年と裏年があるのかもしれない。キロ80Bほどで2,3度買った。7月に入って、ブアさんがキロ150Bだったので、と50B分、20個足らずのライチを買った。ライチにも種類、シーズンがあり、このライチはピンポン玉より一回り大きい種類でシーズンの終盤に出てくる。一回につき5粒ほど食べたが甘くて瑞々しく、ライチってこんなにうまいんだ、と感動した。10個にひとつくらい種が委縮していてピンクの果肉が厚い実がある。トクをした気になると同時に品種改良で種の小さいライチを作れば高く売れるのにな、などと考える。
今では年間を通して市場に並ぶが、マンゴーも雨季の果物だ。盛りにはキロ20B 、1個20円ほどで買える。マンゴーも我が家の食後の果物としてよく出てくる。マンゴーは500種類あるそうだが、チェンライでよく見るのはドークマイ種とマハチャノ種。ドークマイとはタイ語で花の雫という意味。チェンライに来た人はその甘さに驚く。マハチャノ種は滑らかな果肉と酸味が特徴。タイにはカオニャオ・マムアン(マンゴーもち米ご飯)というスイーツがある。砂糖とココナツミルクをかけたおこわとマンゴーの組み合わせ。初めは吃驚したが、餡子ともち米(おはぎ)がアリならココナツミルク掛けマンゴーご飯もアリと納得したものだ。
■自給自足も可能か
マンゴーは隣家のブアさんちに鈴なりになっている。ライチは裏年だったので収穫できなかったが鈴なりのラムヤイ(竜眼)が7月下旬には熟すはずだ。またランブータンも生っている。我が家の狭い庭にはバナナが20本くらい生えている。もともとあったバナナと昨年、新築祝いに友人がくれたものだ。バナナは1年中収穫できるが雨季には一段と元気になって葉と葉の間から砲弾のような花芽が盛んに出てくる。重なり合った花芽はバナナの房を形成する。バナナは花芽が出てバナナとして収穫できるまで2,3カ月かかる。今、庭にはバナナの房が大小合わせて12,3本ある。大きな房には100本くらいバナナが重なり合っている。
毎朝、狭い庭を一巡してバナナ、ラムヤイ、パパイヤ、マンゴーなどの育ち具合を確かめる。夜中に雨が降ることが多い。しっとりとした空気を吸いながら、どの果物に鳥が飛んでくるかなどと考える。鳥が啄み始めたら収穫の時だ。バナナは熟れ時がずれるけれどとても全部を食べ切ることはできない。ブアさんが配る先を決めていると思うので無駄にはならない。もしかして年金がストップしたとしてもこのバナナを食いつなげば何とか生きていける、そう考えるだけで安心の老後が送れるというものだ。