チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

オークパンサー

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オークパンサー

■今年の出安居は皆既月食
10月8日はオークパンサーの日だった。オークパンサーとは出安居、雨季の3ヶ月間、お寺に籠って修行していた僧侶たちが寺を出る日だ。旧暦11月の満月の日、日本の暦では二十四節気の「寒露」に当たる。寒露とは露が冷気によって凍りそうになる頃。『暦便覧』では、「陰寒の気に合つて露結び凝らんとすれば也」と説明している。

寒露の後は、霜降立冬小雪、大雪、冬至と一気に冬へと向かう。こういった季節感を感じさせる言葉がある日本はいいなと思う。今、チェンライは最低気温が20度を下回る日が多くなってきたが、最高気温は30度を越える。市場では西瓜が売られている。西瓜は寒露であろうと冬至大寒であろうと一年中食べられる。チェンライでは西瓜に季節感はない。

今年のオークパンサーの夜は皆既月食であった。日本ではあいにくの天気で月食を全部見ることができなかったと聞くが、チェンライでは赤黒い月が昇ってきてだんだん三日月から半月、そして満月になる様子を眺めることができた。

今回、月食を初めから最後までじっくり見ることができたのは丁度、兄の友人が日本から来ており、みんなとメーコック川沿いの野外レストランで食事をとっていたからである。満ちていく月を眺めながら飲むのもなかなか風情があってよろしい。会話もパッポン、パタヤなど下世話な話ではなく、花鳥風月、日本の心とは、と格調が高くなってくる。日本では家の周りに家屋やビルが立ち並んでいて空が狭く、月食のすべてを見ることは難しい。東京からの客人も月食の始めから終りを見るというめったにない経験をし、大層ご満悦であった。

■托鉢開始
ご満悦と言えばこの時期、女中のブアさんは大変機嫌がいい。朝、インスタントラーメンやお菓子、ジュース等を載せたお盆を持ってきて自分や母に拝ませたあと、さっそうと近所のお寺に出かける。お盆の品物はもちろんタンブン、封筒に入れたお金も用意している。どうしてこんなにタンブンが嬉しいのかと訝るほど生き生きとしている。

お盆の上の品物は、前日、スーパーで買ったものだ。支払いはすべて自分。盗んできたお金でもタンブンの効果には変わらないというから、自分で購入したものでなくてもいい。どうせタンブンするなら自分で買え、というと、ママさんの健康長寿を願うのだから、と反論される。それもそうだなー、と結局は自分が支払うのであるが、大した出費ではない。これで、気持よく働いてくれて、お釈迦さまに母の健康を、ついでに年金暮らしの自分がお金持ちになるようにと祈願してくれるのであれば仕方ないか、という気になる。

オークパンサーで坊さんの外出が解禁となったので、今朝、近くのホエドイ寺から数人の坊さんが我が団地に托鉢にやってきた。町内の皆さんが朝7時前から道にゴザを敷いて、坊さんを待っている。自分もブアさんと端っこに座る。タンブンする感心な日本人というので、皆さん、大変愛想がいい。

やがて坊さんがあらわれた。待ち受ける善男善女は坊さんの抱えるバートと呼ばれる鉢の中に、お菓子、カオニャオ、パック入り牛乳などを入れていく。鉢が一杯になると坊さんは傍らに控える寺男の持つ大きな袋にタンブンされた品物をザラザラと入れる。時にはこの大袋が10個以上になるから後の仕分けが大変であろう。

■ソード・タイの出安居祭り
ソード・タイはチェンライ市内から約80キロ、ミャンマー国境に近い山の街である。昨秋初めて訪問して以来、10回ほど訪れているだろうか。近くのドイ・メーサロンは観光地として有名であるが、ソード・タイはまだ「地球の歩き方」にも紹介されていない隠れ里だ。

何度も訪れている理由は朝市の買い物。行者大蒜の根やラッキョウなどの漬物、春菊、手作り豆腐、納豆などチェンライではなかなかお目にかかれない食材がある。朝市は朝霧の中で始まり、霧の晴れる8時過ぎにはあとかたもなく消える。売る人も買う人も山岳民族が中心、観光客は殆どいない。

この市場を見下ろす高台に、クーカムというミャンマー様式の寺がある。出安居の翌日の夜、寺はライトアップされ、音楽がかすかに聞こえてくる。太鼓の音に誘われて山に登って見た。普段は閑散とした境内はシャン族、アカ族、リス族、中国系の人で一杯、鄙びた山村の祭りという感じだ。空飛ぶ行燈、コムロイも盛んに上げられている。思いがけず安居明けのお祭りを見物。同行したIさんとコムロイを一つ上げ、ほのぼのとした気分に浸った。



写真は団地の托鉢、ワット・クーカムのコムロイ