チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

堅実な団塊世代

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堅実な団塊世代

■隠遁の思想
アカ族の村の茅葺の小屋に住み、己の楽しみとしてアカの民俗を調べて暮らそうと考えていたことがあった。思索を深めるために山中に独居するという考え方は、古今東西を問わず存在した。古代インドの「林住期」思想や陶淵明吉田兼好をブログの片隅に書いてきたのは、すべてから解き放たれて自由になる日々を渇仰し、それが叶わぬ夢であっても生活に追われてきた自分のせめてもの心の慰めであったからだろう。

ヘンリー・デイヴィッド・ソローの名著に「森の生活」がある。彼は1817年に生まれ、1862年に亡くなっている。米国を代表する作家、詩人、思想家として知られるが、環境保護の先駆者とあがめる向きもある。あの時代にハーバード大学を出ているから、何をやっても裕福な暮らしができたと思うが、彼は28歳の時にマサチューセッツ州のウォールデン湖のほとりに建てた小屋で、思索と読書と畑仕事の生活を始めた。

「僕が森へ行ったのは思慮深く生活して人生の本質的な事実とだけ面と向かい合いたかったし、人生の教えることを…確かめたかったし、死ぬときになって自分は生きていなかったなどと思いたくなかったからだ」。

この2年2カ月の記録は後世の作家、詩人、ナチュラリストに大きな影響を与えた。ハーバードの卒業生をはじめ、米国のインテリと言われる人は「森の生活」の冒頭部分をそらんじているそうだ。

■読書をしない
この本は明治以来、何度も翻訳されている。自分も手に取った覚えがあるが内容は全く記憶にない。ソローの名前もすっかり忘れていたのだが前回の原稿を書いた後、ソローだかソールズベリー、「森」という単語がよみがえってきた。うろ覚えの単語でもネット検索は、ああ、これこれ、と見つけてくれる。ありがたいことだ。
でもアマゾンで「森の生活」を注文して今から読み直す、そんな気にはならない。チェンライに来てから殆ど本を読まなくなった。本が無ければ生きていけないと思い込んだ時期があった。その自分から見ると、本を読まないこともこの世の執着から逃れる道であるような気がする。

■授業を減らす
兄の一時帰国やジアップ先生の都合で2カ月ほど中断していたタイ語の授業が始まった。外国語の習得には1000時間の詰め込み教育が必要という。週3回各1時間では1000時間に達するには10年はかかるし、その間に前に習ったことを忘れていくので、生涯、タイ語ができるようにはならない。でも先生のお陰で旅行や外食、買い物など日常の会話はできるようになった。

あまりうまくならないし、週3回も行くと宿題も楽でないし、と7月から週3回の授業を週2回に減らしてもらった。ジアップ先生は中産階級の人である。美味しいレストラン情報や彼女から見た政治情報は、タイ人の知り合いが少ない自分にとっては大変有益である。だから宿題の量が変わらなくてもまだしばらくはジアップ先生の個人授業を受けるつもりでいる。でもそのうち、何か理由を付けてサボるようになるのだろう。

■母国のご同輩は
内閣府平成24年に、昭和22年から24年生まれの男女6千人を対象に「団塊の世代の意識に関する調査」を行った。2年前の調査だから当時62歳から64歳の人である。

前書きに「本調査では、団塊の世代の生きがい、経済状況、就労、学習・社会参加、健康・介護、住宅等に関する意識を把握するとともに、雇用・就業、社会参加活動の促進要因や阻害要因、高齢者の参加が見込まれる活動分野や活動内容等を分析することによって、団塊の世代が「高齢社会の担い手」として活躍することができる方策を検討するなど、今後の高齢社会対策の推進に資することを目的とする」とあるから、団塊の世代を働かせようという魂胆があるのだろう。

質問「あなたはいくつまで働きたいですか」という就労希望年齢では65歳までが16.1%、70歳までが21.3%、75歳までが3.7%、80歳までが0.8%、そして働けるうちはいつまでもが25.1%と「働きなくない」と「今すぐにもやめたい」を合わせた22.4%を大きく上回った。当時で5人に4人、現在でも半数以上は働いているのだろうか。

また「あなたは5年後、何を重視して生活したいですか」の質問に対しては 「のんびりと過ごしたい」がトップの38%であるが、「趣味や勉強に取り組みたい」が19.2% 「ボランティア活動、地域活動、NPO 活動などをしたい」の6.2%と合わせると4人に一人は、自己啓発や社会活動に積極的ということが分かる。

日本の団塊世代は堅実で前向きである。何かと理由を付けて怠惰に流れていく自分を反省しつつ、母国のご同輩にエールを送りたい。







写真は読んだはずの「森の生活」と読んでいない五木寛之の「林住期」、並びに最近のスナップ