チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

首都封鎖

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首都封鎖

■ 首都大混乱
1月13日は黄シャツ党が100万人デモを決行し、首都バンコクを制圧する日である。
デモの指導者、ステープ氏は官公庁を占拠し、首都全域を1カ月以上麻痺させることが政治改革への道だと言っている。言っていることが理解できない。

野党、民主党は2011年の選挙に敗れ、過半数を占めたタイ貢献党、インラック氏に政権を譲った。これが民主主義のルールであって、野党は次の選挙まで隠忍自重するのが普通だ。しかしタイではそのルールは通用しない。

ある小学校に40人のクラスがあったとする。そのクラスで学級委員の選挙が行われた。可愛いと評判の麗子さんが25票を得て当選した。でも10票しか取れなかった捨吉君は面白くない。10票でもボクの10票は価値あるものだから、ボクが学級委員になるべきだと言って、授業ボイコットを始める。学級崩壊だ。先生もだらしなくて捨吉君を叱れない。麗子さんも困って、学期途中だけれど、もう一度選挙をやって、多数決で学級員を選び直しましょうと提案する。でも捨吉君は、どうせ美人の麗子さんに票が集まって自分は過半数は取れないだろう、だから、再選挙はいやだとごねる。

捨吉君を贔屓している体育教師がいる。ビンタなど当たり前の暴力教師で児童からは恐れられている。麗子、捨吉グループがお互い、非難合戦をしているところに彼がやってきて、「麗子、捨吉、喧嘩はやめろ、この際、麗子は潔く引いて、捨吉、お前がクラス委員をやれ、それでいいな、みんな」。これで静かになって授業が始まる。

タイの政治混乱はこのようなものだ。

■民主主義も色々
多数決は民主主義の基本ルールである。今、自民党の安倍さんが首相をやっているが、民主党こそ政権を担うべき政党だ、と言って海江田代表とか輿石さんが大衆を動員して東京都を麻痺させるようなデモをするだろうか。

誤解を恐れずに言えば、世界には国柄、民度というものがあって、自分の主張を通すためには多数決も憲法もへったくれ、という国があるのだ。
日本の常識が世界に通じるとは限らない。

今回の反政府運動を指揮しているステープ氏は、選挙を経ぬ人民評議会で憲法を改正すると主張している。下院議員400 名の内、100名は自分が直接選び、それ以外も自身が賛成する方法で“公平”に選ぶとし、それをThai way of Democracy と呼んでいる。

アメリカは発展途上国で国民選挙をやらせて、選挙さえ行われれば民主主義国になったと満足する。イラクでもエジプトでも総選挙がおこなわれ、多数決で首相が選ばれたはずだ。民主主義も色々だ。

■タイ社会の2重構造
タイの野党、民主党の支持母体は都市の中産階級、富裕層と言われる。バンコクの1票は地方の1票とは重みが違う、と野党議員は言う。地方の教育もない、税金も払っていない貧民はみなタクシンに買収されている、その1票と良識ある自分たちの1票が同じであるはずがない、という理屈だ。タイには地方の貧民と都市に住む金持ちは同じ人間ではないという差別意識がある。北部タイや南部は昔、別の国であったから、人種差別と言ってもいいかもしれない。

確かに、税金を納めている人だけが税金の使い道、つまり政治に関与すべきだ、という考えはある。明治時代、日本でも高額納税者だけに投票権があったし、近代ヨーロッパでは識字者のみ、あるいは特定身分のみに参政権を与える制限選挙が行われていた。
タイの上院議員に立候補するためには大学卒以上の学歴が必要だが、これも制限選挙の一つである。

■お気楽な朝日新聞
日本の報道で、タイの政治混乱を社会の2重構造、差別問題にまで掘り下げて論じた記事は少ない。朝日新聞12月11日の社説、「タイの混乱、選挙で収拾しかない」はまるで中学生の作文だ。

「タイの首都バンコクで混乱が広がっている。反政府のデモ隊が官庁の占拠を続けている。事態の打開をめざすインラック首相は下院を解散し、2月の総選挙が決まった。それでも反政府派は、占拠やデモを続ける構えを崩していない。各界代表による新たな統治組織に全権を移すよう求め、選挙を拒もうとしている。
 このままでは国家機能がマヒする騒乱を収拾する道は開けまい。反政府派は代議制民主主義の原則に沿って、選挙のプロセスを通じて自らの主張の実現をめざすべきではないか。
(中略)

タイ経済の持続的な成長と、政治の安定のために必要なのは、地域や階層の隔てのない国民融和を長期目標にすえた辛抱強い努力だろう。」

個人的には「長期目標」より、明日1月14日に羽田からチェンライ入りする友人夫婦が無事に着けるかどうかのほうが気にかかる

写真はデモ隊の様子