チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

微笑みのない国(3)

我が家近くのサンサーイ市場

同上、花屋さん

バナナ、10-30B

枝豆

アリの卵

肉屋

微笑みのない国(3)
WiFiは限定的
ホテルのロビーでチェックインを待つ間、携帯を操作してみたらホテルのフリーWiFiが使えることが分かった。兄や友人にラインで北京一泊を連絡した。でも後でわかったことであるが、北京ではラインもフェイスブックも使えない。18時に北京一泊が決定し、航空会社のサービスカウンターでバス待機の指示を受けた時間が19時、20時半に送迎バスが空港出発、ホテル到着が21時30分、部屋に入って荷物を投げ出したのは22時を回っていた。

PCを起動させたが部屋ではWiFiが使えなかった。シャワーを浴び、Tシャツを洗濯した。携行荷物は7キロまでと決められているので、お土産とPCでリュックはほぼ一杯、衣服は最低限だ。このTシャツはチェンマイ到着後も洗濯して翌朝着用した。

早朝に目が覚めた。窓の外には緑の木立が広がっていてその先に8階建てくらいのアパートが見えた。晩春の緑はともかくなんとも殺風景だ。部屋の床を見ると黄沙だろうか、床にうっすらと埃が溜まっていて、自分の歩いた場所だけ埃がなかった。シャワー室、トイレは清潔ではあるが、水洗トイレのレバーは真っ黒に錆びていた。ホテルの古さとメッキ技術が水準まで達していないことが感じられた。

昨夜、ガイドがホテル発、空港行きのバスは午前4時半、6時半、10時の3回と告げていた。ホテルの朝食開始は7時であるから大半の客は夜食、朝食抜きで空港へ行くことになる。WiFiを使用するために早朝ロビーにおりた。午前6時半出発組がロビーでバスを待っていた。バスはホテル入り口前で客を乗せていった。なぜ昨夜のバスはここまで来なかったのか。

■お姐さんに怒られる
朝食会場は真紅の円卓が30以上ある宴会場だった。芸能人の結婚披露宴が充分開ける広さだ。10人ほどの客がバイキング形式の朝食を摂っている。まず、PCを置くために適当なテーブルに座った。するとすごい剣幕でお姐さんがとんでくる。ウェイトレスらしい。黙ってカードキーを出すとそれをひったくって帳面に記入しに行った。まるで無銭飲食者の摘発に来たような喋りようだ。まあ朝食代は自腹ではないから形の上では無銭飲食に間違いはない。

大きなステンレスの料理トレーが10以上並んでいる。その前に、と飲み物を探すが珈琲、紅茶、ジュースはもちろん冷水もない。トレーを開けてみるとマントウばかりだ。一つだけ野菜炒めがあった。鶏肉、豚肉、牛肉などの肉料理はない。卵料理は茹で卵が数十個大皿に乗っているだけ。食パンはあったがトースターはない。バターはないがイチゴジャムはあった。中国人客がジャム付きパンと茹で卵を数個食べている。もちろんフルーツやケーキはない。
仕方ないのでお粥、野菜炒め、肉まんの朝食。肉まんはかじってみると芯がまだ冷たかった。解凍、加熱が充分でなかったようだ。豚の角煮かと思って皿にのせた塊をパクリと食べたら、肉ではなく腐乳だった。めちゃくちゃしょっぱかったが吐き出すわけにもいかずぐっと飲みこんだ。

先ほどのウェイトレスがテーブルを片付けている。お姐さんはお皿を片付けながら茹で卵の殻を剥いている。どうするのかなと思って見ていたら、茹で卵を半分食べた。そして黄身を取り出してポイとバケツに放り込むと残った白身を口に入れた。なんか贅沢な食い方しているな。こういうウェイトレスはとても日本ではお目にかかれない、写真に撮ろうかと思ったが、何が反スパイ法に抵触するかわからない。ただ見物するだけでカメラは取り出さなかった。

■バスから外を眺める
北京-チェンマイ便は17時45分発であるが、空港行きのバスは午前10時発だった。これが最終バスであるから否も応もない。昨夜、真っ暗で何も見えなかったが、道路際には奥行き50Mほどの林が続いていた。晩春の新緑が眩しいほどだ。道路は片側2または3車線と広く、車の流れもスムーズだ。緑の林の地面はピンクの花で覆われている。ホテルでの不愉快な思いは北京郊外の爽やかな風景で帳消しとなった。時折、柳の木立が見えた。中国と言えば柳、「客舎青青 柳色新たなり」、ひょいと思い出したが全部が出てこない。帰宅して調べてみると王維の「元二を送る」という七言絶句の一部だった。

『送元二使安西』の書き下し文

渭城の朝雨 軽塵を浥す 
客舎青青 柳色新たなり 
君に勧む更に尽くせ 一杯の酒 
西のかた陽関を出ずれば 故人無からん

「客舎青青 柳色新たなり」は、旅館の前の柳は青々としてひときわ鮮やかであるの意。中国では柳は旅の別れを象徴するらしい。はからずも北京で一夜を過ごした。もう訪れることのないだろう北京の風景をバスの窓越しに眺め続けていた。(多分あと1回)