チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

タイの総選挙続き

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タイの総選挙続き

■軍政から民政へ移管?
多数決が民主政治の基本である。でもタイでは選挙で多数を占めてきたタクシン派はクーデタで何度もひっくり返されてきた。8年ぶりに下院の総選挙が行われる、これで軍政から民政へ変わる、自由と民主主義がタイに定着する足掛かりになる、と思う人がいるかもしれない。多数派が政権を担う、その原則を国民が受入れるならば、日本でも民主党政権が次の総選挙まで政権を維持したように、タイでも安定した政治が行われるだろう。でもタイの政治はそれほど簡単ではない。

軍事政権下のタイで行われる議会下院(定数500)総選挙(3月24日投票)の立候補受付が2月8日に終了した。過去最多の81党、1万3921人が小選挙区350、比例代表150の議席を争う。タクシン元首相派対反タクシン派という構図は今回も変わってはいない。

タイ国立開発行政研究院が1月2-15日に18歳以上のタイ人を対象に実施した世論調査(回答者2500人)で、各党の支持率はタクシン元首相派の「プアタイ党」32.7%、軍政支持の「パランプラチャーラット党」24.2%、中間派の「民主党」14.9%、「新しい未来党」11%だった。下院の500名の他に軍政下で任命された上院議員250名、計750票で首班指名が行われる。すでに現プラユット首相は上院250票のゲタをはいているが、すんなり首相に再選されるかどうかわからない。

■反軍政7割越えの地方も
タイ東北部20県の18歳以上の有権者を対象に実施した政党支持率調査(回答者1108人)で、軍事政権と対立するタクシン元首相派の「プアタイ党」が支持率44.8%で1位だった。2位は軍政との対決姿勢を鮮明にしている新党「新しい未来党」で21.2%、3位はタクシン派の衛星政党「タイラクサーチャート党」で7.5%と、反軍政3党の支持率が計73.5%に達した。

先日、タクシン派のタイラクサーチャート党がワチラロンコン国王(66)の姉のウボンラット王女(67)を首相候補に擁立したが、タイ選挙委員会は王女の首相候補としての受け付けを拒否するとともに、タイラクサーチャート党の解党をタイ憲法裁判所に申し立てた。解党理由は王女擁立が立憲君主制に敵対する行動を禁じた政党法に違反するからとのこと。恐らく選挙期間中にも拘らず、党はお取り潰しとなるだろう。軍政によるタクシン派弾圧は止まらない。タイでは現在、5人以上の政治集会は禁止、政党の活動も禁止されていて、タクシン派が先日、記者会見を開いただけで幹部らが書類送検された。

また、放送通信事業を管理監督するタイ放送通信委員会は、タクシン元首相派の地上デジタルテレビ局ボイスTVのニュース番組とトーク番組で国内の対立をあおる発言があったとして、同局の放送を2月13日から27日までの15日間停止すると発表した。

■消えない階層対立
2014年5月にクーデタが起こって以来、プラユット暫定首相は早期の総選挙、民政移管を約束してきた。約束は度々破られてきたが、その理由は総選挙を行っても軍政が勝てない、タクシン派が多数を占めてしまうという予想があったからである。
この度、軍事政権が総選挙に踏み切ったのは、軍政指名の上院議員の250票を固定票として、既存政治家の切り崩し、取り込みがある程度成功しているので、総選挙を実施しても現体制維持が可能と踏んだからだろう。政治家の取り込みにはもちろん、利権、金、ポストの提示があってのこと。それでもタクシン派が善戦しそうとなれば、軍政は選挙活動の妨害に走る。

タクシン元首相は自分の起こしたコンピューターや通信ビジネスが成功して、巨万の冨を持っていた。それを使って有力政治家を自党に取り込むと同時に、農村住民や都市下層をターゲットとした具体的政策を掲げて選挙をおこなった。たとえば30バーツ(約100円)で、医療が受けられる健康保険、低利で借用できる村ごとの100万バーツ基金、農家負債の返済猶予、小事業者向け融資などを始めると約束し、政権を握るとこれらの公約を次々に実施した。

農民、都市下層も票が金になり力になることを知った。しかし、下層を蔑視してきた都市中間、富裕層は税金が農民の票集めに使われたから不当な選挙だった、とタクシン勝利の選挙結果を認めない。階層対立があるから、選挙結果を同じルール(例えば多数決)で認め合うことができない。

総選挙で民政移管、タイの将来は明るい、といった解説記事は見たことがない。3月24日の選挙結果がどうであれ、タイの政治はまた混乱の時期を迎える可能性が強い。