違法ではないけれど・・・(2)
■生活保護費の不正受給
2012年3月1日、厚生労働省の発表によれば、平成22年度の生活保護の不正受給が全国で2万5355件、金額は計約128億7426万円に上り、過去最多となったという。不正の内訳は、賃金収入がありながら「無い」と偽って申告したケースが最も多く、44%を占めた。次いで年金受給の無申告が28%と目立った。
賃金収入は税金を納めていれば税務署でわかるし、年金は社会保険事務所の照会でわかる。しかし、自営業やアルバイトでは収入の捕捉が難しい。
旦那に豪華マンションを買ってもらい、優雅に暮らしているお妾さんが、「私、都内の家賃3万円の風呂なしアパートに住んでることになってるの」。そして生活保護を受けているという。その女性を含む知り合いの在日女性はみんなそうしているとのこと。
この様に収入があっても生活保護を受けている人はかなりいるのではないか。
資産の有無については銀行協会が重い腰を上げて、今年の12月から口座の全国一括照会に応じることになった。だから多額の銀行預金がありながら生活保護を受ける、という事案はなくなるだろう。
■おかしいけれど合法
資産があること、収入があることを隠して生活保護を受けるのは違法である。
しかし、扶養義務者が扶養しないことは違法だろうか。生活保護の申請の時に福祉課は「お母さんが一人暮らしで困窮しています。仕送りしてもらえませんか」と義務者に電話で頼む。福祉課に調査権はないから、義務者の資産状況を調べることはできない。ましてや仕送りを命じる強制権もない。
お笑い芸人はまさにこのケースである。市の福祉課は何度か扶養の依頼をしたらしいが、一方的に電話をガチャンと切られたという。それで役所では扶養できないと判断して芸人のお母さんに十数年にわたって生活保護費を支給していた。不適切ではあるがこの場合、生活保護の支給は違法ではない。現状、扶養義務者からノーと言われれば、それを認めざるを得ないという建前となっている。
■何らやましいことはありません
個人的な意見ではあるが、お笑い芸人には謝って欲しくなかった。
「私は法に反することはしておりません。全くいわれのない中傷であり、私には何らやましいことはありません。十数年にわたって行政も認めてきたことであり、もし問題があるとすれば、行政、国の責任を問うのが筋と考えます」くらいの開き直り会見をして欲しかった。
このセリフは政治資金規正法違反に問われた小沢一郎被告とほとんど同じものだ。
議員歳費は年間2千万円位であるはずなのに、何十億円もの不動産を持てるのはなぜか。親は何の資産も残さなかったと小沢本人も書いている。政党を壊すたびに小沢個人の資産が増えているのは事実なのだが、政治資金規正法は国から支出された政党交付金が私物化されることなど想定していなかった。私物化禁止や罰則規定がない。だから法律違反にはならないのだ。
数千万円の年収があろうと母親の扶養はしないというケースは、恐らく民法では想定していなかったのではないか。従って罰則規定もない。
国会審議をユーチューブで見たが、生活保護受給者の扶養義務者への罰則や強制は今後とも行わないという方針が国から示されていた。
自分は裕福な生活を送っているが、別居している老親の扶養義務はない、生活保護で面倒見てくれ。これがまかり通る世の中は何かおかしくはないか。
法律に違反していないから正しい、貰えるものなら貰って何が悪い、トクになるなら良識や常識など関係ない、何とも殺伐とした世の中になったものだ。
■旧民法への復活を
明治民法起草にあたって法典調査会総裁伊藤博文は日本古来の慣習を徹底的に調査し、それを民法に反映させるべく努力した。その結果の一つが「家制度」である。これは親族関係を有する者のうち更に狭い範囲の者を、戸主(こしゅ)と家族として一つの家に属させ、戸主に家の統率権限を与えていた制度である。江戸時代に発達した、武士階級の家父長制的な家族制度を基にしている。
戸主は直系尊属及び家族の扶養義務を負うが、家督という家の財産を相続する。旧民法であれば遺産相続をめぐる争いも親の扶養の問題も起こらない。
自分も世が世であれば、部屋住み、冷や飯喰いの身分、しかし、ウズベキスタンで尾羽打ち枯らして帰ってきても、寝るところと3度のゴハンは兄が保証してくれたであろう。少なくとも今、兄は家長として母の介護の責任を果たしている。これを制度として支持していた旧民法の方がずっと人間的といえるのではないか。
写真上から「スイカ売り」「チェンライの市場」「マナオ(タイすだち)