チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

介護ロングステイ 3年5ヵ月

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

介護ロングステイ3年5カ月

■滞在延長許可の申請
邦人がタイに居住する場合、1年ごとに滞在延長の許可申請出入国管理事務所に提出し、旅券に滞在許可のスタンプを押してもらわなければいけない。一般に「1年のロングステイビザ取得」と言われているものだ。お役所相手で気の重い作業ではあるが避けて通れない。

本来は本人がメーサイにある出入国管理事務所に出頭して手続きを行わなければいけないのであるが、サインさえできない今の母にはとても無理。

最近は月に一回、管理事務所がチェンライ市内のデパートに出張サービスをしてくれるので、60キロ離れたメーサイまで行かなくてもすむ。でも母本人が手続きできないことには変わりがない。ビザ説明会では、本人出頭が原則です、と建前論に終始した管理事務所であるが、個別に相談すると、医師の診断書を添付すれば代理申請を認めるとのこと、お上にもお慈悲はあるぞ、ということか。

昨年は医師の診断書が管理事務所の書式と違うということで再提出を求められたり、預金証書の全頁コピーに拇印が押されてない、など申請時にトラブルがあった。
毎年、申請の方法が少しずつ変わる。担当の係官の裁量によっても変わる。これはメーサイだけでなくチェンマイでも同様のようで、「チェンマイ定住者の集い」ではチェンマイ出入国管理事務所の対応について、毎月情報交換をしているという。

今年は診断書の形式は自由だが、ベッドで横になっている母の写真と医師のサインが必要となった。事前に問い合わせをし、各種添付書類を用意して、今年も何とか1年の滞在延長が許可された。毎年のことではあるが緊張するし、終わるとホッとする。

■新薬効果
体力の衰えは如何ともし難いが、受け答えが以前よりしっかりしてきたように思う。アルツハイマーは決して治る病気ではないというのが定説だが、軽快することはあるのではないか。

ベッドで「帰りたい」というので、「足が弱って歩けないからすぐには帰れないよ」というと自分をマジマジとみて「やっぱり」などという。ねえねえ、帰るって、何処に帰るの、と重ねて聞くと「わからない」と答える。

3か月前、これまでの薬アリセプトを止めて、アルツハイマー治療薬イクセロンに変えた。日本でも昨年6月、厚生労働省から承認され、小野薬品からリバスチグミンという名前で販売されている。パッチタイプであるから、飲み忘れはないし、介護者、患者の負担も軽減する。背中にヒップ・エレキバンほどの大きさのパッチを貼って、24時間毎に貼りかえる。

脳の中では、神経細胞が複雑に連絡しあい、巨大なネットワークを作っている。神経細胞神経細胞をつなぐ場所をシナプスと言うが、そのシナプスにおいて情報を伝達する役目を持つ神経伝達物質の一つが、アセチルコリンである。アルツハイマーに罹るとこのアセチルコリンが減少し、神経伝達がうまくいかなくなる。アセチルコリンはすぐ分解するそうだが、その分解を阻害する酵素に働きかけて、アセチルコリンの減少を防ぐ、そういった働きを持つのが、この新型治療薬イクセロンである。

一度死んでしまった神経細胞を修復することはできないので、アリセプトにしてもイクセロンにしてもアルツハイマー病を完治させることはできない、せいぜい進行を遅らせるだけ、ということになっているが、母を見ていると、だんだん回復している、という気がする。

■甥夫婦來チェンライ
今月は日本から甥夫婦が1歳の男の子を連れてチェンライにやってきた。
高校時代、友人共々泊まりがけでやってきて、母に大量のご飯を炊かせていたことがある。結構母も可愛がっていて、甥もおばあちゃん子を自任していた。結婚して子供ができたので、是非おばあちゃんにひ孫と嫁さんを見てもらいたいという殊勝な気持で1週間の休みをとったらしい。母にとってひ孫を見るのは初めてのことである。

母は1歳のひ孫を見てもそれほど嬉しそうではなかったが、手を合わせたり、手を握って何か呟いたり、結構サービスをしているように見えた。
甥は大きな病院の勤務医である。「おばあちゃんの顔色はいいから長生きするよー」と言っていた。彼は呼吸器科で肺がんや末期肺炎の患者を診ている。母は食欲もあるし、どこも悪いところはない。入院中の患者さんに比べれば元気に決まってる。

米国で高齢の修道女を対象に疫学調査をした。脳が委縮し、明らかにアルツハイマーの病状を呈しているのに、健康で快活な一群がいたという。人の体は一様ではないし、薬の効果も人によって違うだろう。受け答えのはっきりしてきた母を見ると自分の将来まで明るく見えてくる。

写真一番上が「ビザ申請に使用した書類」以下はひ孫との対面。