チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

少数山岳民族アカ

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少数山岳民族アカ

■少数山岳民族の資料
司書が懇切丁寧に閲覧室内各所に設置されているパソコンの使い方を教えてくれた。英語でも検索できる。試しに「Akha」といれるといくつかの資料が出てきた。さらに資料をクリックすると、その本のコードが出てくる。そのコードを書き写して司書のところに持っていくと、彼女が本のあるところに案内してくれる。開架式であるから次回からは自分で取り出すことができる。
さっそくポール・ルイスの「ゴールデントライアングルの人々」を借り出した。ルイスはバプティスト派の宣教師として北タイの山岳民族のキリスト教化に努めてきた。宣教活動の傍ら、民俗学者言語学者として活躍し、英ーアカ辞典、英ーラフ辞典などを編纂している。ルイスはタイの少数山岳民族研究の草分け的人物で、この分野に興味を持つ人ならだれでも彼の著作を読むことになる。
「ゴールデントライアングルの人々」はカレン、モン、ミャオ、ラフ、アカ、リスの6つの少数山岳民族の、祭や儀式、服飾品、家や村、また、装身具・織物・籠等の工芸品作りの技術を700枚もの写真とともに紹介している。ペーパーバッグ版が、アマゾンで入手可能であるが、古本でも8千円、新品だと1万8千円する。もちろん、ラジャバット大学所蔵の本は1982年の初版、お宝モノである。
この本は各部族の特徴、民俗が簡潔に記述されており、入門書としては最適と思われる。民俗学的な内容ばかりでなく、少数山岳民族の置かれている厳しい状況や失われていく伝統文化への哀惜の記述もある。著者の学者としての細やかな目と共に、宗教者としての彼らに対する愛情が感じられる。文中で引用されているエピソード、口承神話は、これまで何度か日本語で読んだ覚えがある。それは多くの人がこの本に依拠して、レポートを書いているということだ。いわゆるネタ本はこれだったか、と得心した次第。ま、それほどの名著、ということだろう。

■アカ族と日本人
なぜ、アカ族なの?とよく質問される。アカ族への興味は、以前ブログにも書いたが7,8年前に初めてチェンライを訪れた折、アカ族の村、パナセリを案内してもらったことに始まる。村では歓待を受け、大変いい印象を持った。帰国して、少数山岳民族に関する本を読んでみた。特に大阪教育大学名誉教授、鳥越憲三郎先生の「雲南からの道ー日本人のルーツを探る」(1982年講談社)は精読した。この本は、古代日本とアカ族の民俗文化の類似性からアカ族が日本人のルーツの一つであることを示唆している。

また司馬遼太郎は「街道を行く」シリーズの第20巻、「古代西南夷 中国・雲南の道」の中で、短い記述ではあるが鳥越教授の考えを肯定している。

(引用開始)
武帝のころは、四川省辺境の山地から貴州省、それに雲南省などの一帯のことを、
西南夷
とよんでいた。そこに住む諸民族をひっくるめてそうよび、かつその居住域をもそうよんだ。
 牧畜好きのチベット系をのぞいては、ほとんど稲作民族であり、いまもそうありつづけている。かつ魚を食べ、それも、刺身で食べる。その民俗が日本人に似ていることで雲南省で稲作する少数山岳民族が私ども先祖の一派ではないか、という仮説は、こんにち日本の多くの文化人類学者から魅力をもって唱えられているか、支持されている。私も、そのように感じる。

四時如春(スーシールーチュン)

雲南省だけで、二十二種の少数民族がすんでいる。まさに民族文化の生ける博物館といっていいが、このうち、古代以来、山谷に集落をつくって稲作をしている民族たちを、私どもは自在に選んで日本稲作文化の祖にしていい。民俗が驚くほど似ているのである。万葉の世のそのままのカガイ(歌垣に同じ)が生きている民族が多く、また日本の平安期そのままの妻問婚が生きている民族もあり、その過程として当然、若者が夜、娘の家に忍んでゆく呼ばいもある。妻問・呼バイなどは、日本の農山漁村で明治期まで生きていた。むろん、漢民俗社会や朝鮮社会ではありえないことである。(引用終わり)

というわけで、アカ族は日本人のルーツのひとつ、という可能性は強い。それを民俗学的に調査したいのか、と言われると少し違うような気がする。確かに、英文資料を読み込んで誰も書かなかったようなレポートをインディペンダント・リサーチャーとして書いてみたいと思ったことはある。しかし、今はそんなに肩ひじ張らなくてもなー、という気持ちだ。母を看取った後は、アカの村で自由に楽しく暮らしてみたい。もう勉強はしないでいいだろう。ここはタイだ(怠惰)、というくらいだし・・・・・

画像上二枚は図書館、下はルイスの本