チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

大学図書館

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大学図書館

■元学部長
夕方にテニスコートに行くとタイ人ばかりだ。いつも会う元気のいい老人がいる。名前はソンブンさん、年は70くらいか、腰にコルセット、両膝にはいつもサポーターをしている。屈んだり、しゃがんだりはできない。昔、前谷惟光の「ロボット三等兵」という漫画を愛読していた。痩身でギクシャクとした動きが似ているので、兄弟ではロボット三等兵と蔭では呼んでいた。しかしテニスの腕はなかなか、我々が練習をしていると、特徴あるガラガラ声で英語と片言の日本語で話しかけてくれ、タイの仲間を呼んでゲームの相手をしてくれる。親切な人なのだ。
ソンブンさんの奥さんがチェンライ・ラジャバット大学の教授であることをひょんなことで知った。ラジャバット大学には少数山岳民族に関する英文資料があると聞く。でも大学図書館を利用するにはいろいろと面倒な手続きやコネがいるのではないか。就職後、母校の図書館の入館証をもらうために、卒業証書や身分証明書を持っていったことを思い出す。ソンブンさんの奥さんに図書館の利用法を、必要なら紹介をお願いしよう。
ソンブンさんは話を聞くと、実は自分も数年前までラジャバット大学人間科学部の学部長をしていたんだ、と言って、翌日アカ族に関するレポートのコピー数点と関係教授への紹介状をくれた。

■あっさりと図書館へ
チェンライ・ラジャパット大学は市内から1号線をメーサイ方向に走って10キロほどのところにある。もともとは小規模の教員養成機関であったが、35年前に大学に昇格、今では社会学部、経営学部、工学部など8学部、学生数約2万人、教職員数800名のチェンライ最大の大学となっている。湖と言っていいほど大きな2つの池を含む広大な敷地に校舎が点在している。校門から図書館まで2キロ近くあるし、工学系の校舎はさらにその先にある。構内を無料バスが走っているが、学生はバイクで移動するのが普通だ。構内を走る道路は片側2車線、昔、車で走ったことのあるスタンフォード大学キャンパスを思い起こす。

子供のころから図書館が好きだった。静かな,日常とは違った世界に浸るのが気に入っていたのだろう。勉強も集中できるような気がした。高校3年の3学期に登校する日と自宅近くの区立図書館に行く日を分けた。3学期になって「受験勉強」を始めたのだ。図書館のおかげで現役で大学に合格したが、高校を休む日がいつも体育の授業がある日にあたっており、後で体育教師にこっぴどく怒られたものだ。

ラジャバット大学の図書館は特に手続きは入らず、自分のような外人でもふらりと来て自由に利用できることが分かった。図書館は4階建て、蔵書数約15万冊、うち英書が約2万冊。閲覧室の周りに書架がある開架式図書館だ。閲覧室は4室。4人掛けテーブルのほかに電源、蛍光灯のついたブース席がある。4室合わせた閲覧者席は約700とのことである。ゆったりとした室内にはソファがいくつも配置されていて、読書に疲れたのか学生が長椅子で寝込んでいた。
300種ほどの雑誌がいつでも読める。タイム、ニューズウィーク、フォーブス、ロンドンエコノミストなども揃っている。新聞も30種くらいある。読売新聞衛版があった。日本語学科もあるから読む学生はいるのだろう。後でわかったが、読売新聞の入れ替えは週1度だけ、残念ながら月曜の新聞しか読むことはできない。ニュースはバンコクポスト、ネーション等、タイの英字紙で読める。

■映像資料も充実
3階にはEラーニング室がある。100名ほどの学生が授業を受けていた。4階にはDVD,VCD,CD視聴室がある。ゆったりとしたソファに座って、備え付け、あるいは持ち込んだコンピュータで映画や音楽を楽しむことができる。教育用ソフトに混じってオフィスやパワーポイントといったコンピュータソフトのCDがかなりあった。多分、コピー可能なのであろう。DVDやCD の総数は1万5千点と言うから、残りの人生をこの視聴室の中で暮らしてもすべてを見つくすことはできない。

タイ語のジアップ先生が産休に入っているので、すっかりタイ語の勉強から遠ざかっている。よし、これから週3回、月、水、金はこの図書館に通ってタイ語を勉強する、と決めた。しかし、今は乾季、ベストシーズンである。朝からいい天気。図書館へ行くのは明日にして、今日はテニスに行くか、と当初の決心が鈍る。意志薄弱だからつい、楽なほうに流されるのだ。学生時代、布団の中で、アー、今日の授業サボっちゃおうかなー、と迷っていた自己嫌悪の混じった甘美で怠惰な気持ちを思い出す。
40年たっても人間全く進歩がないとは情けない。