チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

オンリーワン・ビジネス

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オンリーワン・ビジネス

ウズベクベンチャー論を教えていたとき、よく生徒から質問を受けた。「どんなビジネスをやれば成功するでしょうか」。なかなかいい質問である。「それは営業努力をしなくても売れるものを扱うことです」。生徒は腑に落ちない顔をしている。

つまり、どこでも手に入るような商品を売ってはならない。家で作ったブドウやトマトを市場に持っていってもそれ程売れないだろうし、儲けも少ない。こんな商品が欲しかった、そうか、ここで売っていたのか、とお客が群がって買いにくるような商品でないと駄目だ。ということは他の店では売っていないユニークな商品でないと駄目だろう。100ドルの高性能コンピュータがあれば、その機能、価格、新規性といった魅力でお客を獲得できる。しかし売るものが必ずしも新規商品である必要はない。売り方が新しいということでもベンチャーになりうる。トマトは何の変哲もない野菜だが、これを端境期にロシアに持っていって売るということを考えた人がいた。これは彼に莫大な利益をもたらしたが、これは商品がユニークだったわけではなく、売り方がユニークだったと言うことだ。

日本では地方の本屋さんが店じまいをしている。大型書籍店や通販で簡単に本が手に入る時代だから、小さな本屋さんはやっていけなくなったのだ。ところが今、日本でユニークな書店を何十店も展開しているベンチャー企業がある。それは本屋ではあるが、強烈なコンセプトを持っている本屋だ。ウズベクで著名な作家と言ったら? (プーシキンと言う声が上がる)

そう、プーシキンだったら、プーシキンの本だけを集める。詩集や小説だけではない。彼が影響を受けたというバイロンシェークスピアの作品も並べる。またエフゲニー・オネーギン、スペードの女王、ボリス・ゴドノフなど彼の作品を基にしたオペラのCDも揃える。彼は仏人と決闘して死んだが、そのとき使われた拳銃のレプリカなどプーシキンに関するものなら何でもあるという本屋だ。プーシキンの熱狂的ファンならば「こんな店は初めてだ、自分はこういう店を探していたのだ」と宣伝しなくても押しかけてくるに違いない・・・・

こんなことを思い出したのは、チェンライに「ローズ・ホテル」というラブ・ホテルがあるからだ。写真を見てもらえば分かるが、入り口がキング・コングや恐竜などのレプリカで飾られたコテコテのラブ・ホテルである。名古屋でラブホテルチェーンを展開している人が、もう日本の市場は飽和している、これからは海外だ、とチェンライに日本と同じホテルを建てたというわけだ。こちらの邦人は、建設中から、どうしてこんなホテルを建てるのだろう、絶対に流行らない、と断言していたという。ところがフタを開けてみると、タイ人の宿泊客で一杯になった。完全防音の密室でカラオケが楽しめる、各種のバスが完備、フロントと顔を合わせず勘定ができる、などこれまでのホテルにはない機能が受けたのだろう。

料金は一泊2千バーツと決して安くはない。シーズンオフであれば、朝食付きの5つ星高級ホテルに千バーツで泊まることができる土地柄である。それなのに遠くバンコクからも予約がどんどん入ると言う。聞いてみるとカップルが本来の目的で利用するだけではない。1室2千バーツで何人でもOKであるから、家族連れや友人たちが集まって、夜っぴてカラオケ大会を楽しむという使われ方をするらしい。

ベンチャー論ではナンバーワンでなくてもいい、ニッチな市場でかまわないからオンリーワン企業になれ、と教えている。まさにローズ・ホテルはタイではオンリーワンのホテルであり、そこに成功の秘訣がある。

メーサイでタイ人の奥さんと一緒にうどんやを開いている友人がいる。乾麺をゆでて食べさせる和食店は、チェンマイはもちろんチェンライにもあるが、彼のところのように予約を受けてからうどん粉を練り始める店は無い。地元邦字紙にも紹介されたこともあり、遠くチェンマイからも予約のお客が来る。打ちたて、ゆでたての手打ちうどんが食べられるのはここだけと口コミで評判が広まっている。

日本ではありふれたビジネスでもタイでは立派なオンリーワン企業としてベンチャービジネスとなる。ビジネスシーズはまだまだ沢山あるに違いない。逆に、タイやウズベクでありふれたビジネスが日本で大ブレイクということも考えられる。しかし、それを見つけだすのがベンチャーベンチャーたる所以で、常人にはなかなか難しいことである。