チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

ふさわしくない話題

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ふさわしくない話題

ウズベクにいたとき、政治の話をしないように、と言われていた。ウズベキスタンはカリモフ大統領がソ連崩壊以前からずっと実権を握っている。独裁国であり、ソ連時代の秘密警察国家の色合いを濃く残している。
赴任する前に外務省のある高官から「中西さん、ウズベクに行って半年以内に英語で話しかけてくる見知らぬ人は絶対相手にしないように。まずKGB関係者だから」と忠告を受けた。こちらは一民間人であるから、まさかとは思ったが、ウズベクでは外国人の集まるところには盗聴器が仕掛けられているし、電話は盗聴されているのが常識ということが分かってきた。邦人の奥さん同士が電話でやりとりしていたら、急に音が小さくなって、日本語で「もう少しゆっくり喋って下さい」という声が聞こえてきたそうだ。

国民2600万人のうち、政府のエージェント(スパイ)は20万人、職場にも通訳の中にも私はエージェントでーす、などと公言する人がいる。知人が職場でカリモフをあてこするような冗談を言ったところ、あたかも彼が何も話さなかったようにその場にいた全員から無視されたという。あの人が政治の冗談に笑っていたなどといつ密告されるか分からない。中央アジアに限らず、発展途上国では日本では考えられないほど政治の話題は危険である。

タイは立憲君主制であるが、上下二院制の議会制民主主義をとっている。政府の批判は毎日のように新聞に書きたてられているから余り問題ではないようだ。しかし、タイで絶対にやってはいけないことがある。それは王室批判である。「タクシン元首相はタイを民主主義国家と思い込んだのが間違いだった。タイは王政の国であることを忘れていたのだ」と書いたジャーナリストは不敬罪を恐れてタイに戻ってこられなくなった。11月9日に英国ザ・タイムズの電子版にタクシン元首相のインタビュー記事が載っている。タイ政府は即座にアクセス禁止措置をとった。たまたま友人が全文を送ってくれたので、苦労しながら読んでみた。

 インタビューでタクシン元首相は意気軒昂であり、時にはジョークを交えながらタイムズの辛辣な質問に答えている。彼は、いつも心の中に、国家、宗教、王室があり、国民が求めればいつでも帰国して首相の座に戻るとしている。また現政権に対しては、「権力を守ろうとし過ぎている」と指摘し、「ちょうどコブラが卵を守るように、彼らは軍隊や枢密院を使って権力を守ろうとしているのだ」などと語った。「彼らはとても幼稚だし、私が私の支持者を活発化させることを恐れている」と話した。 
 今後については、「次期総選挙に勝つことが重要だ」と指摘。「ただ、それだけでは私の問題は解決されるかも知れないが、タイの問題の本当の解決にはならない」とし、重要な役割を果たすのは国王だと強調。「本来なら枢密院議長がその役割を果たすべきだが、現在は(政府に)取り込まれてしまっている」とし、それができるのは国王か、次の国王になる皇太子だなどと語った。
 タクシン元首相はインタビューで、「タイの人々は私を愛しているが、国王に対しては神のような尊敬の念を抱いている。愛の種類が違う」と国王への尊敬の念を表してはいるが、自分がタイを追われた2006年のクーデターの陰に現国王の関与があったこと、老齢で入退院を繰り返しておられるのだから、もう政治から身を引かれたほうが良いこと、皇太子は余り評判がよくないが、外国で教育を受けていて、現代の国王のあり方を承知しているから、立派な国王になるであろう、それに現国王より取り巻きが少ないから、国政への影響力は少なくなるであろう、などと述べている。

自分から見ると、タクシン元首相の言うことはもっともであり、それ程ひどい王室批判とは思えない。ごく常識的だ。しかし、王室侮辱と激昂したPAD(黄シャツ党、反タクシン派)は1万人規模の抗議集会を開いた。彼を支持する赤シャツ党幹部も、これはまずいと思ったのか、タイムズのインタビュー記事はタクシン元首相を陥れる謀略だ、という説を流している。タクシン元首相自身も記事が明らかになった2日後に、自分があたかも王室を侮辱したかのようなインタビュー発言を捏造し、サイト上に掲載したザ・タイムズ紙を告訴する方針である事を明らかにしている。そうせざるを得ない何かがあるのだろう。

この国でふさわしくない話題は王室のことである。外国人とて例外ではない。ロングステイどころか国外追放が待っている。充分に気をつけたい。
(ザ・タイムズのタクシン会見記全文を読みたい方にはコピーを送りします)


画像は近所のサンティブリゴルフ場です。国際試合が開かれる一流コースです。