買い物
このところ、友人夫婦や弟夫婦がチェンライに来ている。せっかくタイまで来たのだから、タイらしいお土産を買って帰りたいというのは誰もが考えることである。何がお土産にいいでしょう、と聞かれても、それぞれお好みもあるでしょうし、などと言葉に詰まる。結局、チェンライのナイトバザールに案内することになる。ここでは山岳民族の刺繍入りバッグや財布、あるいはタイシルクのショール、ネクタイなどが買える。多くの外人客が訪れる観光名所でもある。チェンライのいい所の一つと思うが、半間間口の露店であっても、商品に値札をつけている店が結構多い。その値段で買う必要はないが、一応の目安となる。
これがウズベキスタンであったら、値札はないし、あっても信用できない。え、日本人? お金持ちなんだからウズベク人の5倍くらい払ってもらわなくては、というケースに遭遇することもある。コーランはもともと商人であったモハメッドの言行録であるから、ビジネスに関する章句も多い。コーランには、異教徒と商売するときはうんと吹っかけてよい、と書いてあるそうだ。事実とすればウズベク商人は敬虔な回教徒が多いということになる。
回教国に限らず、多くの国では観光客価格と言うものが存在する。タイでも同様である。
以下は10年位前、プーケットに旅行したとき書いたものだ。
『タイのプーケット島はバンコクから800キロ程南に位置する縦40キロ、横20キロ程の小島である。在日のタイ人から「日本の海岸は美しいが、それに負けないのはプーケットです。」と聞いた事がある。明るい太陽の下、アンダマン海に面した白くまぶしい砂浜に椰子林からの涼風そよぐ、まさに「南海の真珠」と呼ばれるにふさわしいリゾート地だ。島で行き会う観光客の7割ぐらいは白人である。数年前はツーリストの9割は白人だったというが最近は日本人や中国系アジア人が増えてきた。
海水浴に適した浜はいくつかあるがプーケット島で一番長い海岸線を持ち、一番多くツーリストが集まるのはやはりパトンビーチだろう。ビーチに面した道路にはお土産店やレストランがならんでいて水着の人たちがのんびりと行き交っている。アジアのリゾート地の例に漏れず、物売りの攻勢はすざましい。「コレタイシルク、ヤスイヨ」、日本人と見破ってスカーフ売りのおばさんが片言の日本語で話し掛けてくる。
「いくら?」。素早く計算機に数字を入れて見せてくれる。「450バーツ(約1500円)?、高いよ」、「Say price」(どういうわけかここから片言英語、いくらなら買うかということ)「50バーツ」。結局、3枚200バーツで折り合いがつき、気に入った柄を選んでいると、ドイツ人とおぼしき婦人が「How much?」とたずねてきた。おばさんの計算機の数字を覗き込んでみたらなんと「180」。
なんで欧米人は180スタートで日本人は450なんだよーと思ったが、はからずも日本人価格、欧米人価格、現地人価格が存在することがわかった次第。どのスカーフ売りも言い値は400から450バーツであったから、これが日本人用ファーストプライスのようだ。しかし「それではいくらなら買うか」と聞かれて普通、日本人なら400に対してせいぜい200とか300ぐらいの数字を言ってしまうのではなかろうか。
偶々、200といってしまった人を見たが物売りは「それはキビシイ、せめて300」。結局、間を取って250バーツで決まったが、その時の物売りのセリフ、「 You are happy, I am happy.」は相対取引の真髄を示していて中々、含蓄あることばではあった』
このときは現地人価格が数十バーツであることを知っていたので、450バーツの言い値に対して、50と言えた。経営学でいうところのマーケットリサーチができていたということになる。でも何時でも何処でもこういう具合にはいかない。ウズベクで、いくらなら買う?と聞かれ、700ドルという皮のロングコートに、まさかそこまで安くはなるまいと思って170ドルと言ったばっかりに、170ドルでそのコートを買わざるを得なくなったことがある。それ以来、あまり買いたくないものに、値段を言うことは控えている。
ともあれ、お土産品はそこそこの値段で、自分がこの価格でいい、と思ったら、思い切りよく購入して、後は後悔しない、ということが大切だ。店の人が青ざめるほど値切り倒す人がいるが、やはり、You are happy, I am happy.が取引の常識だろうと思う。