■市場見学続き
チェントンはシャン族の他、クーン族、アカ族、ラフ族、ラロジ族、リス族、エン族など少数山岳民族が暮らしている。ランナー王国を開いたメンライ王の直系子孫である藩王(ソーボア)が13世紀から統治していた藩王国であった。チェントンの藩王国は19世紀の英国の植民地化でも存続し、1962年にビルマ政府によって廃止されるまで、安定した治世を保ち、シャン州の重要な交易の拠点として栄えたという。
多くの民族の交差点がこのチェントンの市場であったことは想像に難くない。アカ族、リス族、ラフ族は何とか識別できるが、あとは風貌や民俗服を見てもわからない。いろいろな民族、宗教の人々がこの市場に混在していることはわかる。昔から多くの民族、人々が交易に集まっているのだろう。この娘はアカ族か、色が白いからタイヤイ族かな、などと美少女の品定めも楽しい。日本と違って「変なオジサンがいるんです」と警察に通報される心配もない。
市場は中央を貫く大通りがあって、狭い横道が左右に連なっている。民俗衣装とか肩さげバッグといった小物、工具、電気製品、農機具、食器、調理用具、餅や蒸かし芋、ココナツ菓子、高原のお茶など、扱う商品に応じてそれらを売る店が集中している。
大通り突き当りの左右は野菜、果物、魚、肉などの生鮮食料品売り場だ。ここは特に活気があり、人通りも多い。売られている野菜はほぼチェンライと同じ種類、値段を聞きたかったが、買わないのにと思って諦めた。ネットにはこの市場を訪れたファランの絶賛ツィートがあまたアップされている。でも3回にわたって市場を歩き回ったが、白人の姿は全く見かけなかった。外人のいない観光地はまだ秘境と言えるな、と我が旅心をいくらか満足させてくれるものがある。
■ノントゥン池
チェントンの観光写真はノントゥン池のほとりからパゴダを臨むといったアングルが多い。チェントンの街は盆地になっていて盆地の中心がこのノントゥン池だ。
この池は市民の憩いの場所となっており、ほとりには食堂が立ち並んでいる。夕方になると家族連れやカップルが道路に張り出したテーブルを囲んで、鍋や焼き鳥を食べ、ビールを楽しむ。健康のためかウォーキングに勤しむ老夫婦もいる。簡単なアスレチック器具を供えた一角もあり、仲間同士で腹筋を鍛えている若者もいる。もちろん、カップルいてそぞろ歩きを楽しんでいる。
街中にあって、安心して歩ける場所はノントゥン池周辺だけではないか。街中の歩道は穴があったり、突然段差が変わったり、蓋のない下水道が道を横切っていたりと、青い空を眺めながら歩いていると、とんでもない事故に遭遇する。チェントンの街を歩くときは下をよく見て、バイクと自転車に注意し、とかなりの緊張を強いられるが、池のほとりだけは、車も来ないし安心して歩くことができた。
この池に流れ込む川はないので、池の水は主として雨季の溜まり水に頼っている。自分が行った3月はまだ雨の降る季節ではなかったから、池の水は少なめで緑色に濁り、観光写真のような心洗われるような青い水面を見ることはできなかった。
■温泉
チェントンには2つ温泉がある。一つは田んぼの中、もう一つは公園の中にある。それぞれ市内から車で10分くらいの場所だ。チェントン2日目の朝、ホンカンさんのバイタクに乗って田んぼ温泉へ行く。タチレク方面へ約10分、斜めに右折して側道に入る。2，3分走ると右手に大きな建物が見えた。建物は軍の教育施設とのこと。建物の前が広場になっていて、広場を囲むようにカギ型にカフェが20軒以上立ち並んでいる。カフェの端っこに温泉棟があった。暗い通路の両側に風呂の個室が向かい合わせに並んでいる。
個室は６畳くらいか。覗いてみると縦2m、横1m、深さ0.7ｍほどのタイル浴槽があった。午前中のせいかまだお客はいない。ホンカンさんの話だと、カフェに行って好きな女の子を指名して、一緒にお風呂に入るのだという。江戸時代の「湯女」システムではないか。こないだ、82歳の日本人を連れてきたら18歳の女の子を指名してたよ、などと言う。背中を流してもらっただけでしょ、と言うと、「いや、バイアグラ飲んで頑張ってた」。我が同胞の先輩も中々やるものだ。そのあと連れてきた日本の爺さんも、という話を広められると困るので入浴は思いとどまった。
それにしても軍の教育施設のまん前に慰安所、ミャンマー国軍も中々粋な計らいをしている、と言えるのではないか。
チェントン市場、ノントゥン池、街の歩道、温泉の浴槽
