チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

あざなえる縄の如し

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個人的なご連絡で失礼します。チェンライに移り住んで9年半、我々、3人兄弟の絆であった母、中西エミが8月7日の深夜に亡くなりました。92歳と10カ月27日でした。これまで種々応援して下さった皆様に深く感謝いたします。
心に大きな穴が空いたようで、原稿を書きなおす元気が出ません。7日の昼に書いた原稿をそのまま掲載させて頂くことをお許しください。


あざなえる縄の如し

■多忙な日々
ここ10日ほど母の骨折で何かと慌ただしかった。入院中は付き添い役であるブアさん、ニイさんの送り迎え、それにいつもの買物もある。退院してからも母の世話はブアさん一人ではできなくなったので、足を持ったり、背中を支えたりの手伝いをする。毎朝10時過ぎに病院から看護師さんがやって来て切開個所の消毒と絆創膏の貼り換えをしてくれるので一応、立ち会う。自分の足の持ち方が悪かったのか、傷口の一部が赤く変色していた。医師に報告するために看護師さんが切開個所の写真を撮っていった。具合によっては医師の往診があるらしい。

母は何と言っても高齢だから体力がない。ちょっとしたことで敗血症になるとか、肺炎に罹ってしまうのではと心配した。でも浮腫んでいた足も細くなってきたし、熱もない。食欲は衰えていないので、このまま順調に回復するのでは、と期待している。

高齢者は骨密度が低くなっているので骨折しやすい。一般に骨は負荷をかけていないと強度が落ちる。母の場合、ここ数年寝たきりで足に負荷がかかったことはない。小魚入りフリカケを食べていたがやはりカルシウムが足りなかったのだろうか、牛乳やカルシウム剤を飲ませていたらよかったかも、と考えたが寝たきりだから、小魚や牛乳では追い付かなかったに違いない。骨折は事故と思ってあきらめるしかない。ブアさんは私のせいで、と悔やんでいたが、もちろん責めたり、叱ったりはできなかった。

■遊びは控える
母が入院する前の7月は3回ほど泊りがけの旅行に出ている。チェンマイ、ソードタイ、パヤオの3カ所、野暮用があったり、ちょっと美味しいものを食べてゆっくり寝ようといったことで、取り立てて書くべきこともない。でも気軽に外泊できるということは母がまずまず健康で、ブアさんたちがしっかり世話をしてくれるお陰ということに改めて気が付いた。今は二人がかりでないと母の世話ができないから、勝手に旅に出たらブアさんに怒られてしまう。
日本の友人から何通もお見舞いメールを頂いたが、その中に「いよいよ…と言うことかもしれません。しばらくは遊びを控えて・・・。頑張って孝養を尽くしてください」というものがあった。確かに母と暮らす時間はもうそれほど残されていない。だからできるだけ一緒にいなければ。少なくとも今月中は外泊を控えようと思っている。

■東京より涼しい
日本からのメールを見ると、みな「暑くて、暑くて…」と書いてある。関東甲信越の梅雨明け直後、6月末に東京にいたが、確かに暑かった。夜になっても気温が下がらないのが辛い。チェンライ8月の平均最高気温は30.9度、平均最低温度は23.3度となっている。東京よりずっと過ごしやすい。熱帯夜がないので冷房なしでも熟睡できる。雨季で雨続きでは、と思われるかもしれない。確かに8月の平均降雨日数は24日となっている。でも1日中降ることはまれで、週に3,4日はテニスができる。チェンライの天気予報は毎日「晴れ時々曇り、ところによりにわか雨か雷雨」だ。チェンライ県は香川県の6倍以上の面積があるから、どこかでにわか雨があり、どこかは晴れている。雨は上昇気流によって降るから局所的である。車で走行していると雨が降ったり、晴れたりを目まぐるしく繰り返す。驟雨のあとはぐっと気温が下がり実に快適である。

■良いことも悪いことも
熱中症で高齢者は亡くなるといった痛ましいニュースもあるが、暑さも悪いことばかりではない。ビール、清涼飲料水、エアコン、冷蔵庫、水族館、映画館、喫茶店などは気温が高くなるとウケに入る。コンビニのおでんも暑さで売り上げが増えるという。7-9月期の平均気温が+1℃上昇すると、同時期の家計消費支出を約+3212億円(+0.5%)押し上げるという推計もある。これだけ日照時間が多ければ今年の米も豊作間違いなしだろう。

円高で業績がよくなる企業もあれば円安で儲かる会社もある。すべてはコインの裏表で、100%良い、100%悪いというものはない。
台風11号、12号は災害ももたらしたが、全国の水不足はこれでほぼ解消した。香川県早明浦ダムはずっと満杯だし、東京の水がめ、利根川水系取水制限はしなくても済みそうだ。

病気だって悪いことばかりではない。吉行淳之介の言葉と思うが「病気は魂が肉体に住まわせ貰うための家賃のようなものだ」。彼は才子多病を地でいった人だが健康だったら小説家にはなっていなかったと思う。その意味で家賃の払い甲斐があったというべきだろう。

でも認知症といい骨折といい、老い先短い母にとって「家賃」は少し高すぎはしないかと感じている。


追記
もう「家賃」は払わなくていいんだよ、ゆっくり休んでね、という気持ちで一杯です。