チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

旅行記の書き方

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

イメージ 4

イメージ 5

イメージ 6

旅行記の書き方

■書くための3種の神器
昨年10月末から11月初めにかけて10泊11日のチュンポン往復ツーリングをした。2週間足らずの旅であったが、「熟年ライダー」として断続的に昨年11月から今年の3月まで16本の原稿をアップした。これまで旅行記はいくつか書いているが、出発から帰着までしっかり書き通したものは少ない。旅以外の原稿を書きたくなって、他のことを書いているうちに旅行記はそのまま尻すぼみで終わるということがまゝあった。でもチュンポン、タカの渡り見物の旅は何とか最後の帰宅まで書けた。

沢木耕太郎は「深夜特急」を書くにあたって「3種の神器」を使ったという。一つは金銭出納帳のようなノート、もう一つはその反対ページに記されている心覚えの単語や断章、さらにもうひとつは主としてエアログラムと呼ばれる航空書簡に記された膨大な数の手紙、この3つを参照することで当時のことが克明に再現できたという。手紙は100通以上、1通につき原稿用紙8枚分は優にあった。主として4人の友人に宛てた手紙であるが、手紙のほぼすべてを友人たちが保管していたというからすごい。

学生時代、スペインを放浪していたことがある。手紙も書いたけれど日記も書いていた。大判の大学ノートだ。東京の自宅のどこかにあるだろう。遥か昔、ふと読み返してみたら、「今日は○○ペセタ使ってしまった。大変だ、もう少し倹約しないと」といった反省で一杯だった。沢木さんも今日は使い過ぎたといっては意気消沈し、今日は倹約できたといっては喜んでいたそうだから、若い時の旅には共通するものがあるようだ。それは金はないけれど感受性が十分にあるということではないか。

旅行記を書く意味
チュンポンのタカ見物ツーリングはブログに書くつもりだったので、しっかりメモを取ろうと考えていた。でも結局、メモ帳に残っていたのは泊まったゲストハウスの名前と代金、その日の走行距離だけだったが、それだけでも旅の記憶を呼び覚ますには充分だったように思う。食事内容と代金があったら完ぺきだっただろう。目の前に出された料理を必ずデジカメにおさめる人がいるが、これは旅を鮮烈に思い起こすにはいい手段かもしれない。

古今の旅行記には経験したこととその感動が書かれているが、自分の場合、いわゆる物書きと言われている人々より感受性が乏しいし、表現力も貧弱だ。だからタカを見ました、ビックリしました、昼はクイッティオを食べておいしかったです、程度で話が終わってしまう。それではブログを読んで下さる方に失礼と思うのでタイ観光庁の記事や旅先で手に入れたパンフレットを参照して話を膨らます。自分の感動の源泉はこういうことだったのか、知らなかったが由緒ある曰く因縁があったのだな、と感心する。自分が感心するくらいだからブログを読む人もなるほどと思って下さるかも、とネットで検索した知識を更に書き連ねる。

そのようにしてチュンポン旅行記を書いた。あらかじめこの程度の知識があれば、感動もかなり深みのあるものになったと思う。でもNさんに誘われての善光寺参りではないが、ただ随行するだけの旅行だったからどんな旅程になるか、何を見るのかは殆どわからなかった。予備知識のない旅を終えたあとで旅の意味付けを考えたり、拙いながらも書いたりする。こういった作業は、また同じところへ行ってみたい、そして違った感動があるかもという期待につながる。しかし自分に再訪の時間や気力が残されているかどうかはわからない。それでも書くのは、また行こうぜと自分を励ますためだ。要するに自分のために旅行記を書いていることに気が付く。それほど財布の中身を心配せずに旅行できる身分になったが、その代わりに残された時間が気になるトシになってしまった。

■旅と紀行文のスタイル
旅には人によってそのスタイルがあるという。初めての旅はその後の旅のスタイルに大きく影響する。自分の場合、多分、沢木耕太郎さんも同じと思うが、貧乏旅行が自分のスタイルとなっているのではないか。若い時の旅は貧乏が当たり前、ボロは着てても心は錦、と昂然として恥じない。ただ熟年ともなれば年相応の品位は必要と思う。ボロを着てれば心も賤し、と思われるのも嫌だ。でも1泊千円のGHでも平気だし、屋台のぶっかけ飯でも美味しく感じる。見栄を張ってもなあ。やはり旅のスタイルは変えられないか。旅のスタイルが変わらないのであれば旅行記も同じ手法で書いていくことになるのだろう。



写真はソードタイの朝市から