チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

漂白の思ひやまず

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漂白の思ひやまず

■今はラノーンの温泉か
この原稿がアップされている頃、自分はタイ南部のラノーンにいるだろう。ラノーンのどこにいるかはまだわからない。往路チェンマイから南部プラチュアップまでの鉄道切符と復路ラノーンからチェンライまでの航空券があるだけ。とりあえず出かけてみて、あとはその時の気分任せて、になると思う。

海に行きませんか、というIさんの誘いに二つ返事で応じた。切符の手配は旅行代理店勤務の経験がある彼が、あっという間にやってくれた。最近はLCCが乱立しており、航空券代は半額どころか、日によっては正規運賃の3分の1くらいで買えることがある。お互い、時間は自由になる身分であるので、おっ、これは、という航空券を予約してくれた。2時間後にネットで確認してみると同じ切符が2倍に値上がりしていたという。自分もネットでLCCを利用することがあるが、支払いの段階で失敗することが多く、何度も繰り返すうちに根負けしたり、どうしてもという場合は紙に書いてバイクで15分の空港カウンターに行って購入したりと苦労する。その点、旅慣れたIさんのお陰で第一関門は訳なく突破で来た。持つべきものは知恵ある友。始めよければすべてよし、今回は楽しい旅行になりそうだ。

■旅の人
富山県に関係会社の工場があり、東京から何人かの出向者が幹部社員として赴任していた。単身赴任者も少なくなく、また年季は3-5年だったと思う。こういった人たちを現地の人は「旅の人」と呼んでいた。どうせ本社に戻るし、北国に住む我々のことなど理解できない・・・。
考えてみれば自分はタイに住んで10年目に入っているが、タイ人はもちろん日本にいる友人から見ても「旅の人」であることは間違いない。自分が異邦人であることは毎日実感している。言葉も習慣も食べ物もテニスに最適な北タイの乾季も、すべてを受け入れているように見えても、時には過度に満足して喜んでみたり、ある時はたまらなくイラつく。帰るべき故国はあるが、もはやデラシネ、恐らく「古人も多く旅に死せるあり」という結末を迎えることになると思う。だから穏やかに日々の生活を送っていきたいと考えている。

でも平穏な生活を望み、チュンポン往復の過酷なツーリングから戻ってきたばかりなのに、どうしてまた「片雲の雲に誘はれて」という気持ちに駆られるのだろうか。
チェンライのテニス中心の暮らしに飽きたのか、毎日のようにブアさんの買物に付き合わされるのが嫌になったか、平昌五輪を巡る馬鹿げたニュースをネットで見る苦痛に耐えられなくなったか・・・。
来週から旅へ出る、と言ったらブアさんは、何で、行ってきたばかりなのに、年寄りはあんまり出歩くもんじゃない、事故にあったりしたらどうする、と煩い。彼女は社民党ではないが、人のすることには何でも反対する。介護方針には概ね従うが、何でもブアさんの言うことを聞くわけにはいかない。

■旅の理由
11月にチュムポンに行った時、120キロしかないのにアンダマン海を臨むラノーンへは行かなかった。アンダマン海と聞くと何故か心が躍る。アンダマン海に面しているミャンマーでは、大きな伊勢海老が信じられないほどの安価で食べられる、と聞いてネットで調べたことがあるが、政情不安のためヤンゴンから陸路では行けないし、またビザ取得が面倒で諦めたことがある。アンダマン海に行きたい。Iさんの移動プランは心惹かれるものだった。バスでチェンマイに出て、チェンマイから夜行列車でバンコクへ行く。乗り換えてプラチュアップキーリーカンへ到着。帰りはラノーンから空路バンコク、チェンライへ。
バンコク-プラチュアップ間でははゆっくり走る列車からの風を感じ、車窓の風景を充分楽しめるだろう。

インドシナ半島を横切って、シャム湾からアンダマン海に面したラノーンへ行く。ラノーンの海には数十もの小島があり、そのいくつかには宿泊施設があるらしい。もちろんシーフードは最高とのこと。年取っての楽しみは食欲くらいしか残されていないのだ。
沢木耕太郎は「深夜特急ノート、旅する力」の中で「その年代にふさわしい旅はその年代にしておいたほうがいいと思うのだ」と、60代、70代の人が団体でベトナム旅行をしている様子を好意的に書いている。でも団体旅行だけが老人の旅ではないし、海老が食いたい、それだけでも旅の立派な理由だ。というより旅の理由なんかいらない。出かけること、それですべてが正当化される。理由なんかあとからトラック一杯分ついてくる。


写真はラノーン県、シャム湾とアンダマン海の位置関係、チェンマイバンコク寝台列車アンダマン海