チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

熟年ライダー(5)

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熟年ライダー(5)

■気楽なツーリング
1日目はチャイナートまで600キロを走破、2日目はチャイナートからプラチュアップキーリーカンまで500キロの行程だった。最終目的地チュンポンまでは4号線をあと200キロ南下すればいい。旅の目的である「タカの渡り」がみられる期間はは10月終わりから11月始めとのことなので、慌ててチュンポンに行く必要はない。

2日で1,100キロ超の強行軍だったから、プラチュアップで2泊することにした。まあ疲れを癒す、という意味もある。我が生涯、これほどの長距離走は初めてで、ツーリングに自信がついた。これならば、タイ国内ならどこでも行ける。

当初はインドシナ半島を南下してハジャイから国境を越えてマレーシアに行く、という計画もあった。チュンポンからタイ、マレーシア国境までは500キロほどだから行けないことはない。それに同行のNさんは何度もバイクでマレーシアに行っている。でもおうちがだんだん遠くなる、ではないが行った道をそのまま引き返すわけであるから、あまり遠くまで行くと母にもしものことがあった場合、2日以内には戻れなくなる。それにマレーシアに入ったら、せっかくの機会だからとシンガポールまで行きましょうか、ということにもなりかねない。可処分時間だけは豊富な同行二人ゆえ、糸の切れた凧になる可能性はあった。

■カオ・チョン・クラジョクに登る
プラチュアップには夕方に到着したから、翌日はまる1日プラチュアップ観光にあてた。Nさんはこの街にも自転車競技の関係で来たことがあるという。でも1泊だけで観光は初めて。ツーリスト・インフォーメーションで観光地図を入手した。本当にこじんまりした街で、3つの海浜と一つの山からなっている。山は「カオ・チョン・クラジョク」。直訳すると「鏡山」だ。この山に登ると3つのビーチが一望できるらしい。山の上に金ぴかの建物が遠望できることから、寺となっていることは確かだ。ホテルからNさんがバードウォッチング用の12倍双眼鏡で山上を眺めて驚いている。「猿がうようよいる」。

鏡山は海抜90m、山の前にはワット・タミカラムという中国風の立派なお寺がある。この境内にも猿が闊歩している。駐車場のおばさんがバイクを見ていてあげるから猿の餌を買いなさい、という。茹で玉蜀黍を10センチほどに割ったものだ。オヨヨ、あいつが餌を買ったぞ、とにじり寄る猿の気配。おばさんは手にした杖で猿を威嚇して追い払う。その隙にNさんは餌をリュックに入れて紐を締める。

■チェンライの猿寺を思い出す
猿のいる寺と言えばチェンライ在住者ならメーサイ近くのワット・タムプラをすぐ思い出すだろう。この寺にも猿が沢山いる。境内で落花生やバナナを買って、ほぼ手渡しで餌をやることができる。餌だけでは満足できないのか、子供の食べようとしたソフトクリームやアイスキャンデーを一瞬のうちに強奪してしまう。注意書きはあるがバッグやカメラを猿がかっさらうこともある。決して愛らしい動物ではない。猛獣と対峙するような緊張感が必要だ。この寺の猿は暑いと寺の池に崖からドブン、ドブンと飛び込む。猿のダイビングを見るために観光客が集まると言っても過言ではない。

寺と猿、は一般的なようだ。ある寺の猿は、観光客の帽子をあっという間に取ってしまう。と、その時、管理人が現われ、猿を呼び、帽子をよこしなさい、というジェスチャー、猿は大人しく帽子を差し出す。管理人は客に帽子を返し、客はお礼として何がしかのチップを渡す。この話を聞いたとき、管理人と猿はグルではないか、と思ったが、あとで悪意に物事を考えるのは我が心の卑しさの表れ、と恥じたものだ。

■頂上にて
山頂に向かう階段にはどこにでも猿がいる。猿の密度はチェンライのワット・タムプラよりかなり高い。それに人を恐れる割合が低く、触れるほど近くに寄っても逃げようとしない。階段の所々に設けられている展望台には猿が集団で毛づくろいや昼寝をしている。396段という階段を登り切ると大きな金色の仏塔がある。この仏塔にはお釈迦様の遺骨、即ち仏舎利が納められてるそうだ。この山上からプラチュアップの美しい3つの海岸が一望できる。でもここの展望台にも傍若無人に猿がいて、どいてくれねえかな、と見つめていたら急に歯を剥き出して威嚇してきた。

少し先を行くNさんのリュックに突然、猿がしがみついた。玉蜀黍の香りが出ていたらしい。Nさんは慌てず、猿を追い払うと餌を撒き始めた。体の大きな猿が悠然と餌をとると、周りにいた若い猿が寄ってきた。腕力がモノを言う。猿の世界も国際社会も同じようなものだ。


写真はワット・タミカラム、396段の階段、頂上からプラチュアップ湾とマナオ湾を臨む、猿。