チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

介護ロングステイ 4年5カ月

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介護ロングステイ 4年5カ月

認知症患者は多くない
GNPと言うと国民総生産(Gross National Product)を思い浮かべてしまうが、今のGNPは「元気、長生き、ポックリ」の頭文字である。以前はPPK(ピン、ピン、コロリ)とも言ったが、これは若死にを連想させるからよくないという理由で使われなくなくなった。

苦しまずに死ねますようにとポックリ寺にお参りする人も少なくないと聞く。でも死に方だけは神仏でもわからない。なるようにしかならない。でも認知症になって死ぬのはいやだなと思われる方はおられるだろう。長生きではあるが心身共に元気ではないし、ポックリどころがベッドでの生活も長くなる。認知症患者が被害者となる介護の悲劇も時折報道されている。

2010年の調査によると、認知症の患者数は推計250万人で、年齢別の認知症発症率は、65-69歳で1,5%、70-74歳で3,6%、75-79歳で7,1%、80-84歳で14,6%、85歳以上で27,3%となっている。高齢化するに従って発症率は高くなるが、それほどではない。90歳以上になると半数以上の人が認知症という報告もあるが、平均寿命を越える年齢であるし、大部分の人は認知症になる前に「GNP」で逝けるはずである。認知症の心配をする前に90歳以上まで生きる算段をしたほうがいいかもしれない。

■母も多分GNP
4年5カ月が過ぎようとしている。いずれにせよ、認知症は老化現象の一つで仕方がない。若さを取り戻す薬がないように、認知症を治療する薬もない。ただ、チェンライの暖かい気候のもとで暮らせることは介護されるほうも、介護する側にとっても良かったのではないかと思っている。
暖かいとまず、着るものが単純で済む。自分も年がら年中、Tシャツに短パンだ。

日本で介護していたころは毎日、洗濯、買い物、炊事、ごみ出し、掃除、介護関係者の訪問、デイケア、結構忙しかった。こちらでは、家事、介護のほとんどを女中さんが代行してくれる。自分がやることと言えば、大声をあげている母の傍らに行って話しかけるくらい。今日も一杯ご飯食べて元気でね、「はい」、これくらいの会話しかないのだが、いつもと変わらぬ母を見ることは嬉しい。元気で長生きである。遠くない将来、亡くなることになるが、老齢ではあるし、ポックリという結果になるのではと思っている。

■娘と弟夫婦の訪問
4月から5月にかけて娘が、6月には弟夫婦がチェンライに来てくれた。母にとってはいい刺激になったようだ。
弟夫婦は母の手を握って、母の大声を聞いている。意味はわからないが何か言いたいことがあって大きな声を出しているのだろう。静かになって寝入った後でも長いこと母の手や体をさすっている。兄や弟たちに比べ、自分は母に冷たいのではといくらか後ろめたく思う。

弟夫婦の気持ちが通じたのであろうか。母が突然、楽しそうに声を出して笑ったそうだ。これまでも何度かほほ笑むことはあったが、ここ1,2年、母が笑うことはなかった。女中のニイさんが涙を流して「ママさんが笑った、ママさんが笑った」と大喜びしてくれた。その日は家じゅう明るい気分になった。今度笑った時にはちゃんと写真を撮れよ、と弟に言ったが、その後、奇跡は起こっていない。

■頼りになる女中さん
母の健康状態はブアさん、ニイさんの二人が把握している。薬を飲ませるのも二人の仕事。日本では患者を診断しない限り、医師は薬を出さない。ここ数カ月、母は医師の診察を受けていないのだが、ここはタイであるから薬を処方してくれる。
いつもの医師が、母の容態に変化がないと聞いて、認知症薬レミニールの投薬量をこれまでの8mgから倍の16mgに変えた。
効果はたちまち現れて、薬量が増えて2,3日後に、母が気を失った。レミニールの副作用だ。

ブアさんがレミニールの添付文書を読んでいたので、兄と相談して薬量をもとに戻したそうだ。娘と旅行中の出来事だった。

ネットで読んだ添付文書には「認知症の進行度が中程度までの場合、20~30%位の有効率が期待されます。症状を数カ月~1年程度前の状態まで、回復可能といわれています。 但し、対症療法薬なので、アルツハイマー病そのものの進行を遅延させる訳ではありません」とある。薬効に余り自信がないみたいだ。
ブアさんはレミニールよりも「ママさんの健康、長寿」と書いた封筒に200B入れて、お寺にタンブンするほうがずっと効き目があると信じているフシがある。

自分も薬とタンブンは同程度という気がするのだが、添付文書には「自分の勝手な判断で服用を中止しないでください。薬の服用を中止すると、服用前のレベルまで急速に悪化する可能性があります」という脅し文句があるので、ちょっと心配、やめるわけにもいかない。



写真は母の健康祈願のため、我が家に来てくれた坊さんたちです。ブアさんは自分の財布から1000Bタンブンしていました。全員でご祈祷してくれました。