チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

介護ロングステイ8年

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介護ロングステイ8年

■8年経ちました
2009年1月28日にタイにやってきた。不安で一杯、でも何とかなるよといった根拠のない楽観を心の片隅に夕暮れのチェンマイ空港に降りた日がつい昨日のように思われる。日本を出る3カ月前に医師からお母様の寿命はあと3カ月ですというご託宣を受けた。先生、お陰様であれから8年も生きております、とご報告したい。多くの人、それにこの穏やかなチェンライの気候のお陰で、今も母は息災に暮らしている。介護度5ということになるのだろうが、ここ数年は寝たきりの生活になっている。でもお国の介護サービスはもちろん、薬を全く服用していないので国保にもお世話になっていない。
日本にいたら医療機関に通って、大量の処方薬を服用し、介護サービスも最大限利用していたと思うので、まあ現在の暮らしはお国の負担を少し減らしていると言っていいのではないか。頂いている年金をタイで使ってお国のGDPに全く寄与していないのだから、この程度の貢献は当たり前かも知れない。

兄は、東京にある家の管理や郵便物の整理のために、年に2,3度は帰国する。東京といっても下町なので、近所のおばさんたちが結構うるさい。あの兄弟は母親が外国にいるなんて言っているが、もうお母さんはとっくに死んでいて、親の年金をだまし取って暮らしている、などという噂が立っていたそうだ。貯めていても仕方ないので、母の年金を生活費の一部に使わせてもらっている。それは事実なので、「親の年金で暮らしている」、は全くの出鱈目だとは言い切れない。

お母さん、そういう噂が立っているんだって。お母さんのお金、使わせてもらってるよー、とベッドの母に言ってみてもはかばかしい反応はない。でも意識がしっかりしていたら、みんな使って構わないよ、と言ってくれるに違いない。

■雑巾がない
介護ロングステイ、などといっても実際の介護はブアさん、ニイさん2人のメバーンに任せきりだ。ブアさんはずっと家に居ついたままだから、今年で9年目に入る。ニイさんだって5年目だ。メバーンに恵まれればタイの生活は楽しくなるでしょう、とバンコクの駐在員のブログにあったが、まさにその通り。人からはお宅のメバーン、当たりだったんですね、といわれるがそうかもしれない。でもお互い意思の疎通が充分ではないし、風俗習慣の違いで、行き違いは日常茶飯事である。
例えば家に雑巾というものがない。たまたま我が家がそうであるだけかもしれないが、床拭きに雑巾を用いない。古いTシャツをそのまま使う。ブアさんが足を古い自分の短パンで拭いていると、なんだかなあ、という気になる。

以前、友人が家に来た時、知ったかぶりで宮本常一さんの民俗調査の話をしたことがある。彼は村に入ると中を一周する。そして干してある洗濯物を見て家族構成や生活程度を類推するという。彼の調査によると、ツギをあてた靴下が物干し竿から消えるのは昭和30年代半ばであるという。実は自分もアカ族の村に行くと、洗濯ものを見て回り、村や各家の貧富の度合いを見ていた。ホー、ホーと友人は聞いていた。でも家を辞する時、フェンスにブアさんが干してあった雑巾代わりのボロボロTシャツをみて、彼が「中西さんちは本当は貧乏だったんだねー」と言った。苦笑いするしかなかったが、タイでは家庭科で雑巾を縫うなどという授業がないのだろうか。

家にはバイクが2台ある。いつも座席には古いTシャツがかかっている。近所の猫がやってきてバイクの黒シートで爪とぎをする。それを防ぐためにブアさんがかけた。始めは汚らしくてみっともないないと思っていたが、慣れてしまった。

■他にも
慣れてしまったと言えば、ブアさんのタンブンである。タイ庶民の例に漏れず、ブアさんはタンブンが大好き、生き甲斐であると言ってもいい。タンブンとは主として坊さんへのお布施である。ブアさんはタンブンに使う食用油、練り歯磨き、トイレットペーパー、即席ラーメン、インスタント珈琲など雑多なものを購入する。支払は自分だ。自分で買え、というのだが聞いてくれた試しがない。それどころか、ママさんが健康でいられるのはタンブンのお陰ではないですか、と言い返してくる。情けないことだが、やっぱりそうかなあ、と思ってしまう。

突然怒り出して、もう辞めさせてもらいます、バンコクに行って働くなどと言い出すこともあるが、これは彼女の伝統芸能、いつもの繰り返し。どうせ言うだけ、とタカをくくって相手にしない。こういった対処ができるのも8年の付き合いあればこそである。