チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

ロングステイと林住期

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ロングステイと林住期

■海外生活を考えたのは
将来、海外でのんびり暮らすのもいいかもしれない。こんな思いを持つようになったのはいつごろのことだろうか。少なくとも定年近くなってのことではない。まだバリバリのサラリーマンだった40代の時に、任意団体「ロングステイクラブ」に入会した。入会したら会報が送られてきた。海外で暮らしている人、あるいはこれから海外暮らしを目指す人たちのレポートが載っている。
その中に「私は人に勧められるまま、69歳まで会社で働いてしまいました。今、ロングステイの生活に入ってみると、69歳には69歳の楽しみしかないことに気付きました。どうして早くこういった生活に入らなかったのか、悔やまれてなりません」という一文があり、深く感銘を受けた。

日本人の健康年齢は、人によって違うが一般的には75歳までだという。65から74歳までを前期高齢者、75歳からを後期高齢者とWHOでは定義している。ともあれ、俳句をひねったり、ハイキング、テニスで汗を流すなど、頭脳もそこそこ明晰で体力もあるのは定年から15年間の前期高齢者の間、75を過ぎると、腰が痛い、足が弱くなった、物忘れが激しくなったなどと本当の老人になってくる。

そうか、60歳からの15年間は働く必要もなく、ということは人に気を使うこともなく好きなことができる。この15年間をいかに生きるかで自分の人生のクオリティが左右されるのではないか、60歳の定年になったら働くのをやめよう、ロングステイするかどうかは別にして、60からの時間は自分のために使おう。

実際、60歳になった日は、ウズベキスタンタシケントにおり、半年ほどの任期を残していたのであるが、その時はシェレーピンが「桜の園」を手に入れた時もこうだったか、と思うほど嬉しかった。
ああ、60になった、もう働かなくてもいいんだ、お国で「その方、楽隠居苦しからず、これよりお上より扶持米が下されるであろう」と言って下さる。それでなくても青いタシケントの空が一段と青く輝いて見えた。あの日は土曜日だった。バザールへ行って、昼間からビールとシャシリークでお祝いしたものだ。

■四住期
ヒンドゥー教では人生を4つにわける。すなわち、学生期、家住期、林住期、遊行期である。

・学生期:本来の意味は、特定の師匠(グル)に弟子入りして聖典ヴェーダを学習する時期であったが、現在では就学期間に相当。

・家住期:学生期を終えると家業に務め結婚して家族を養う家住期に入る。男子をもうけて先祖の祭祀を絶やさないことが重要視される。

・林住期:家住期を終えると解脱に向けた人生段階に入る。孫の誕生を見届けた家長は家を離れて荒野や林に住み、質素で禁欲的な生活を営む。

・遊行期:林住期を終えると住まいを捨てて遍歴行者となって放浪し、解脱を目指す。

「林住期」とは、社会人としての勤めを終えたあと、すべての人が迎える最も輝かしい「第3の人生」のことである、と五木寛之は述べている。まだ健康で、経験も知識もある。なんといっても自分のために使える時間が豊かにある。ひとり座し、ひとり臥し、ひとり歩み、我が身を整え、林の中にてひとり楽しめ、と言ったのはお釈迦様であるが、彼もヒンドゥーの教えに従って、四住期に則った人生を送っている。

五木寛之桐島洋子の著作によって、「林住期」は広く人口に膾炙し、その内容も精神的に豊かな老後、という意味になっているようだ。
一般的に四住期は25年ずつに区分けされていて、林住期は50歳位から、となっている。林住期に入った人がすべて「質素で禁欲的な生活」を送っているかというと桐島さんを見てもそうとは思えない。

■チェンライの林住期
自分の周りには定年の60歳を待たずして、ロングステイをしている人がいる。50代前半の人も少なくない。彼らが一様に言うのは「なんでもう少し早く会社を辞めてこういう生活に入らなかったのか」ということである。日本に本妻がいるにもかかわらず、こちらで若いフェーン(愛人)ができて、幸せ一杯の人もいる。思わず「ヨカッタ、ヨカッタ」と肩を叩いてやりたくなる。自分の考え方がタイ化しているのだろう。

先日、チェンライで暮らしてみたい、その下見に、という方が我が家に来られた。年は76歳、年齢をしきりに心配されていたが、チェンライ日本人会でMさんに「70代はまだ若い、頑張りなさい」と励まされ、がぜん積極的になられた。Mさんは現在91歳、50歳以上年の離れた若い奥さんとの間に6歳の実子がいる。

チェンライで始める第3の人生に早い、遅いはない。退職後、自分は充実した生活を送っている、と思えばそれがその人にとってかけがえのない「林住期」だと自分は思う。



写真はおなじみ、市場の珍味シリーズです。まだ勇気が無くて試してないものが多いです。
上から「蛙の干物」、「生きてる蛙も」、「定番蚕のさなぎ」、「タガメ」、「一皿20バーツ均一」