チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

介護ロングステイ2年1カ月

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介護ロングステイ2年1カ月

認知症の始まり
認知症にかかると、まず最近の記憶が失われてくる。財布やメガネをどこに置いたのか1日中探し回ることも珍しくない。直前の記憶がはっきりしないため、時間や周囲の状況もどこか曖昧な感じがして不安になる。また、当たり前のことができなくなっている自分に気付き、自分はどうなっていくのだろうかというおびえも感じてくる。日常的な会話や挨拶はできるのだが、鍋を焦がす、同じものを何度も買ってくる、同じ内容の電話を何度もかけるなど行動面の失敗、異常が目立ってくる。周囲は、あれ、認知症かな、と思っても、つい注意をしたり、大声で叱ったりする。本人はさらに自信を失い、不安な気持ちになる。

この様な症状が母で出たのはもう数年前になる。引き出しをひっくり返して、ない、ないと騒いでいるので「何を探しているの」と聞くと「あれ、何を探していたのかねえ」という。「泥棒が入って盗まれたんだよ」、これもよく言っていた。典型的な認知症症状である。
しかし、日常会話は全く普通であるから、こっちはそんなことないよ、と素っ気なくしたり、何度言ったらわかるの、やめて、などと叱ったりしたものだ。典型的な、認知症患者に対する間違った対応である。

母は不安感からか、攻撃的になることがあり、お箸で兄の頭を突っついたり、時にはぴしゃりと平手打ちを飛ばしたりした。認知症、と頭で理解していてもこれでは、やめて、と大声が出るのは仕方ない。

■病気は自分で選べない
認知症には大きく分けてアルツハイマー型、脳血管障害型分かれる。認知症の半数を占めるアルツハイマー病は発症までに20年くらいかかるという。そうすると母の場合、50代後半から脳に何らかの変化が起こっていたことになる。早く母の病気に気付いていれば、などと思ったこともあるが、気付いたところでアルツハイマーを治す薬はない。アリセプトという画期的な薬が発売されているが、この薬にしてもアルツハイマー病の発症を6カ月から1年遅らせることができるだけで、治療薬ではない。

また、アルツハイマーの予防はできるか、というとネットには「適度な運動や休養、禁煙等のライフスタイルの改善は効果があります。またサバ、サンマ、イワシなど脳を活性化し、認知機能を改善するといわれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)を多く含む魚を食べることもおすすめです」などと書いてある。イワシの頭も信心、に近い。
自分も長生きするかもしれず、その時は人様の介護に頼る生活になっているかもしれない。でもその時はその時である。まあ人間、どんな病気にかかるか、どんな死に方をするのか自分で選ぶことはできない。変に取り越し苦労すればそれがストレスとなって健康に影響する。

以前にも紹介したが、平成4年に行われた「認知症高齢者年齢別出現割合」という調査によると、80から84歳の人のうち、認知症患者は14,7%にしか過ぎない。85歳以上になると27.3%と跳ね上がるが、現実は大部分の老人はボケず、介護を必要としない。確率論から言って7割強の範囲にはいると楽観している。

■少しずつ病状は進む
チェンライに来た当初、一時的に体力的、精神的に元気になり、指をすぼめて我々や女中さんの顔面攻撃をしていた。ブアが一度これをまともに食らい、目を真っ赤にしていたことがある。
しかしこういった元気があったのは昔のことで、最近はベッドで寝ていることが多い。午後まで寝ている日もある。
外界への関心もほとんど示さなくなった。以前は散歩の時に出会う子供には「可愛いねえ」、また吠えかかる犬に向かって拳をあげて「バカ」と言っていたが、最近は殆ど無関心だ。病院に行っても医師に敬礼したり、ワイをすることもなくなった。

認知症は脳が病的に変化することによりおこる「体の病」である。決して「心の病」ではない。記憶したり、認知したりする能力は低下するが、喜怒哀楽などの感情が失われるわけではない。「ボケてしまえば本人はラクだ」というが決してそうではない。
シャワーを浴びさせてもらっている時は大騒ぎしているし、呼びかけにもはい、はいと応じる。「コウジ、迷惑をかけるねえ」と兄に言うこともある。感情はそのままだから、こんな体になって、と嘆いているフシはある。最近、笑うことがほとんどないのが気に罹る。

これからの季節、母の好物のドリアンやマンゴーが豊富に出てくる。食欲があるうちは大丈夫だ。せめて美味しいものを食べてもらって、今日も明日も穏やかな日が続けば、と願っている。

写真は2月の田んぼです。田植えをするところもあれば直播もあります。
気温がだんだん高くなってきました。朝16度、日中は33度。