チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

ブランコ祭り 6

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ブランコ祭り(6)

■炎天下、お祭りは続く
お祭りはステージでの舞踊コンテスト、伝統的な蔓一本のブランコ、ガラチュと呼ばれる水車式西洋ブランコの3つが中心、というよりこれ以外は何もない。踊りは延々と続くが、竹の筒で床をトントンと叩いてリズムを作り、時折足をカクンと折る、の繰り返し。じっくり見ると、その「カクン」にも上手、下手があるのかもしれないが、やはり飽きてくる。ステージ前のテントの中では有力者達が、舞踊が終わるたびになにやら紙に書き込んで、係員に渡している。衣装と踊りはどれもほとんど同じ(と自分には見える)であるから、審査もなかなか難しいと思われた。
ブランコも乗ってみれば迫力はあるが、何度も乗るものではない。ガラチュもアカの少女が嬌声を上げて回転するのを見るのは微笑ましいが、長いこと眺めているものではない。ガラチュに乗っている少女のミニスカートから下着がちらりと見えることがある。そんなものを凝視しているようでは変なおじさんと思われかねない。この日は雲一つない快晴、紫外線が強い。日陰を選んでいたが、肌が焼けてくるのが実感できる。

■表彰式でドラゴンボートを思い出す。
暑いので一度アカセンターへ戻ってシャワーを浴びた。会場に戻ってみると、大分お客が減っている。3時を回っているし、そろそろコンテストの審査結果発表があるらしい。ステージの上ではボクシングの選手紹介のような抑揚をつけて、司会者が3位以下の特別賞の発表を始めた。受賞代表者がステージに上がって、有力者から賞品を受け取っている。どっかで見た感じだなあ、と思ったら、ドラゴンボートの表彰式そっくりであることに気づいた。ちょっと日が翳ってきた頃、ドラゴンボートの表彰式が始まる。表彰されないチームや遠路はるばる来ているチームはもう会場から姿を消している。残っているのは上位入賞など何かもらえるチームだけ。自分もよく壇上に上がって、貰ってそれほど嬉しくないプラスチック製の楯やトロフィーなどを受け取ったものだ。でも時には電子レンジ20台、その土地でできた農産物を段ボール箱で5個という賞品を貰ったこともある。
アカの舞踊コンテストの賞品はささやかなもので一斗缶に入ったビスケットが2缶か3缶。それでも貰ったグループのメンバーは大喜びだ。そして1位の発表、司会者が一段と声を張り上げる。地元センジャイパタナのグループの優勝。仲間がステージ下で大歓声を上げる。グループの代表が壇上で有力者から金一封を受け取った。そのあと優勝グループによるウィニング・ダンスが始まった。皆、誇りと喜びで顔が上気している。

横浜、山下公園で行われたドラゴンボートレースで優勝したことがある。氷川丸に向けて直進するコース。50以上のチームが参加した。決勝戦で自分は舵を務めた。優勝が決まったあと、主催者側の制止を振り切って、岸壁に近いコースをウィニング・ランした。岸辺は波が高く危険であるが舵には自信がある。岸壁から拍手と歓声を受けてパドルを漕ぐ仲間とステージの女性たちがオーバーラップした。

■アトゥの苦悩
アカセンターに戻るとアトゥがサウナ風呂を立てたから入ろうじゃないか、と蒸気風呂に誘ってくれた。3畳程の石造りの部屋に釜で沸かしたお湯の蒸気を引き込む。室内は真っ暗だ。暗闇の中でアトゥと二人、アカの伝統や支援の基金作りの苦労話を聞く。アカの民族意識や誇りは伝統を守ることで支えられている。アカ族はタイにいる12の山岳民族の中で最下位に属する。それを恥じて、アカの衣装を着ることを拒み、アカ語を喋らず、タイの2級市民として生きる道を選ぶ若者は多い。今日のお祭りでもアカの民族衣装を身にまとっているのは年配の女性が大半だった。

風呂から上がってみるとアトゥがタイ語の上手な金髪女性と話している。年は40位、知的ですらりとした美人だ。一方的に彼女が捲くし立てて、アトゥは時折、彼が今やっている活動について説明している。
彼女が去ったあと、あれ、誰、と聞くとWHRW(ワールド・ヒューマン・ライト・ウォッチ)の研究員だと言う。
2003年にタクシン政権は「麻薬撲滅戦争]を展開し、2500人を超える嫌疑不確かな者、あるいは無実の人を現場で射殺した。その中に多くのアカ族が含まれていた。法的根拠のない虐殺であった。人権意識が高いはずのタイ都市中間層はこの虐殺に関してはほとんど無関心だった。今でも状況は同じだろう。外人活動家の言う通りにすればアトゥの活動はもとより彼の命も危険にさらされる。「人権の問題はね・・・」と言葉を濁すアトゥの表情にアカの苦悩を見たように思った。(この項、一応終わり)