■ブランコ祭り
アカ族のブランコ祭りは8月末から9月の初め、水牛の日を中心に行われる。山から切り出した4本の木で櫓が組まれ、4本の木が交わる天辺からロープを一本垂らす。ロープの先は小さな輪になっていてこの輪に長さ50cmほどの板か棒を差し込み、ロープを足の間に挟むようにして腰かける。ロープには細い引き縄がついている。これを引いて、ブランコを揺するわけだ。
ブランコ祭りはその昔、森の妖精だったアカの女性を慰めるために行われる女の祭り、ということになっている。雨季のこの季節は陸稲や玉蜀黍の植え付けが終わり、いくらか暇になる時期なので、農繁期の慰労の意味もあるのだろう。アカ族にとっては最も重要な祭りである。
日本の夏祭りには浴衣の娘さんが繰り出すが、ブランコ祭りにはアカの女性は少女から老婆までアカの伝統的衣装で参加する。銀と紺を主体にした衣装、被りものはエキゾチックで美しい。タイには12の少数山岳民族がいると言われているが、山岳民族を紹介するガイドブックの表紙やHPには必ずと言っていいほどアカ族の女の子の写真が使われる。
■山にとんぼ返り
アカ族のブランコ祭りに参加し、写真を撮り、時には祭りの朝に屠った水牛や豚のラープ料理のご馳走に与ることが、毎年の恒例行事となっている。アカ協会の代表、アトゥに祭りのスケジュールを問い合わせていた。
ソード・タイでの朝市から自宅に戻ると、アトゥからの返信メールが入っていた。今年は8月29日が祭りの特異日で、この日に20近くの村で一斉にブランコ祭りが行われる、ついては、ソード・タイ方面にあるサムヤエク村では、政府の援助を得て、例年にも増して盛大な祭りが行われる、この祭りにご招待するから電話を呉れ、とのこと。
なーんだ、今、ソード・タイから、戻ってきたばかりじゃん、と思ったが、即、連絡、アトゥは会場のサムヤエク村に向かう途中のことだったが大体の場所は聞いた。タイ国軍の検問所の近く、3年前行ったホエイモ村方面とのこと。分からなくなったらソード・タイ近くで電話します、と言って昼前に自宅から山へとってかえす。
1号線を左折して1130号、ドイメーサロン方面へ曲がる。ドイメーサロンとソード・タイの分かれ道にタイ国軍の検問所がある。この先ソード・タイの街の手前をホエイモ村方向に右折したところにも検問所がある。
取りあえず、ホエイモ村方面の検問所まで行き、祭り会場の村はどこかと兵士に聞いてみた。彼はこの道をまっすぐ行けと手真似で示す。その素振りに自信がなさそうだったので、ここから何キロあるのかと聞くと、付いてこいと兵舎の上官のところへ連れて行ってくれた。軍曹みたいなおっさんがこの村はお前が通り過ぎた検問所のところだと言う。やっぱりタイ人は知らなくても適当なことを言う、あんちゃん兵士を信用しなくてよかったと来た道を引き返す。
■会場にて
13時過ぎに会場に着いた。沢山の露店と人出で賑わっている。アトゥはすぐ見つかった。彼の話では政府の補助金が出たため、チェンライ県内のみならず近郊の県、ラオスからもアカ族が駆け付け、ダンスコンテストが開催されているとのこと。アカの踊りと言えば、竹筒を地べたに打ち付ける単調なリズムの踊りを思い浮かべるが、ステージ上のアカ少女たちは腰を振り、軽やかにステップを踏んでいる。まるでバンコクの有名歌手のバックダンスを見るようだ。AKB48の影響ははアカの少女に及んでいることがよく分かった。
観光客用ということであろうか、1本ロープのブランコは谷を見下ろす丘ではなく、会場横の広場に作られていた。その後ろにはガラチュと呼ばれる水車式西洋ブランコ（4人乗り）があった。
ブランコには勇気ある女の子が次々に挑戦するのだが、振幅が大きくなってくると、ロープにしがみついてキャーキャー大騒ぎ、それを見て観客が喜ぶという次第。以前見た祭りでは、伝統衣装の女性が大きくブランコに揺れながら、哀調を帯びたアカ民謡を歌っていて、それはそれで風情のあるものだったが、だんだんアカの祭りも俗化してきたということだろうか。
いつもこの手の催しで出会うチェンマイ在住の邦人デザイナーがいる。コツコツ、刺繍の袋物やデザイン指輪を作って暮らしている。山岳民族の伝統芸能に興味を持っていて、ユーチューブHPを開いているから見て下さい、と言われた。帰宅してHPを見た。伝統的なアカ舞踊のみアップされており、AKB48ダンスはなかった。彼のはっきりしたポリシーが見て取れる。
写真より動画。もし山岳民族の踊りに興味がありましたら、https://www.youtube.com/user/myAkutoism を覗いて下さい。よろしくお願いします。
