チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

緊急事態発生 3

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緊急事態発生(その3)

要介護老人の3割は肺炎で亡くなる。高齢者の肺炎は,誤嚥(口のなかの唾液や食物を気管の中に吸い込むこと)によりおきる。脳血管性障害(脳梗塞脳出血)や,パーキンソン症候群アルツハイマー型痴呆症(認知症)の人は,嚥下障害(喉の神経,筋肉の働きが正常にはたらかない)があり,嚥下反射や咳反射が減弱しているため肺炎を起こしやすい。

母も食事の時、おかゆや卵焼きのほかに、ミロという健康飲料をコップ2杯ほど飲むのだが、その時よく咽て咳き込んでいた。ビールを飲むときはゆっくり味わって飲むせいか、咽ることはほとんどなかったものだから油断があったのだろう。好物のゼリーを飲み込むことができず、窒息してしまった。幸い息を吹き返したものの、気管に異物が入り、それが原因で誤嚥性肺炎を起こすという典型的な老人性肺炎となった。誤嚥性肺炎は喉に何か詰まらせた時だけに起きるとは限らない。流動食を摂っている時にでも、眠っている時にでも起きる。老化が進めば、誰にでも起こる病気といってよい。

肺炎は細菌が肺の中で増殖して起こる病気だから、治療には抗生物質が使われる。第二次大戦中、ペニシリンで時の英国首相チャーチャルの肺炎が治ったことは当時有名なニュースだった。現在でも肺炎を起こしたら、どれが効くか特定できないまま抗生物質を何種類も投与し、点滴により水分の補給をし、必要があれば酸素吸入をして様子を見る。これが一般的な療法だ。抗生物質の出現により死亡率は低下したが、老人の罹病率は相変わらず高いのが実情だ。

抗生物質の投与により、熱が下がってきたら、経口による流動食や食事の摂取を開始する。老人の場合、体力が落ちていて口から栄養が取れない場合がある。経口摂取が困難な場合,長期間にわたり点滴をすることになる。合併症として,栄養失調,代謝異常,感染症,出血,カテーテル挿入時の事故がある。点滴の他に、鼻から栄養チューブを挿入する経鼻経管栄養、胃に直接チューブを繋ぐ「胃ろう」という方法もある。いずれにしても余命は1-3ヶ月。本来、人間は食事が摂れなくなると、そのまま衰弱して亡くなっていく。タイでは寝たきり老人が驚くほど少ないというのは長期の点滴、経管栄養を余りやらないせいもあると思う。

母が退院した後、兄がしみじみ言った。「もしあのまま、お袋が逝ってしまったら、俺はゼリーを食べさせたことを一生後悔して暮らすことになったよなー」。そんなことはない、あれは事故であり、何処でも、誰にでも、起こりうることだったのだ。兄に責任はないし、ゼリーにも、もちろんゼリーの製造メーカーにも責任はない。窒息はゼリーに限らず、メロンや桃、飴、何でも起こる。一時、こんにゃくゼリーが窒息死の元凶のようにマスコミに叩かれたことがあった。しかしこんにゃくゼリーより、餅や食パンで窒息死する人のほうが多い。

本年1月13日の毎日新聞に次のような記事があった。
『食品安全委』こんにゃくゼリー「事故頻度はあめと同程度」
 のどに詰まらせる事故の多い食品の安全性を審議している国の食品安全委員会の作業班は13日、こんにゃくゼリーについて「一口あたりの窒息事故頻度は、あめ類と同程度と推測する」との見解をまとめた。作業班は今後、事故を減らすための提言をまとめる。 作業班は、国内外の窒息事故の統計情報や、個々の食品の物理的特徴などを分析。食品ごとに一口あたりの相対的な窒息事故頻度をはじき出した。その結果、餅が最も事故の頻度が高く、あめ類、パン、肉類、魚介類、果実類、米飯類と続いた。
 食品安全委員会によると、こんにゃくゼリーが原因の死亡事故は95年から08年7月まで22件報告されている。作業班は「リスクを科学的に評価することは困難」としながらも、事故件数などを踏まえ、危険性はあめ類と同程度と推測できると結論付けた。
 また、作業班は、15~64歳の窒息事故が極めて少ないことに注目。事故を起こすかどうかの鍵として、摂食機能が発達途中の小児や、かむ力が低下した高齢者など、「事故の大きな要因は年齢にある」と指摘した。事故防止には、食べる際に一口の量を減らすことが重要としている。(引用終り)

冷蔵庫に残っていたゼリーは女中のブアが、皆タンブンに出してしまった。チェンライの洋菓子店で1つ25Bする高級品だ。あれ以来、お店に行っていない。店員はいつもゼリーを沢山買ってくれるお客が来なくなったなあ、と思っていることだろう。