チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

独居老人

独居老人

 

■家事は10年ぶり

ここ10年、東京の家には旅行者として短期滞在をしたことはあるが、1月を越える生活者としての長期滞在は初めてである。

掃除、洗濯、買い物、料理、昔取った杵柄で家事に勤しんでいる。茶碗や皿を流しにおいておくと、朝になってもそのままになっている。チェンライだったら、ニイさんが来てすっかりきれいにしてくれるのにな、と女中さんの有難さを改めて感じる。

国立社会保障・人口問題研究所によると、2020年で全所帯数のうち、65歳以上の単独世帯(世帯主が一人の世帯)は30%、700万所帯となっている。自分と同じような独居老人はこれからも増え、22035年には世帯主が65歳以上の高齢世帯のうち、一人暮らしが4割近くになる。

一人暮らしだと人と話す機会が減る。内閣府の調査によると単独世帯の高齢者のうち、他者との会話が「ほとんどない」と回答した人の割合は70%に上る。

内閣府平成27年度 第8回高齢者の生活と意識に関する国際比較調査結果https://www8.cao.go.jp/kourei/ishiki/h27/zentai/index.htm

 

自分の場合、電話以外の会話と言えば、先週、明治神宮を散策していた折、見知らぬ老婦人に、話しかけられた。「鳥はいましたか」、「ええ、いましたよ」、「代々木方面にはカラスが一杯よ」、「そうですか、ありがとう」。ここ2週間の会話はこれだけである。ニコンPC900、大きなカメラをぶら下げていたので野鳥観察と間違われたらしい。参道を挟んで二人の距離は数mあったから、武漢肺炎感染のリスクはなかったと思う。

後はスーパーで「ポイントカードはお持ちですか」と聞かれるが、手を振るだけなので会話はない。

 

■咳をしても一人

時節柄、不要不急の外出は控えている。南国から来ているから、最近の寒さが一入身に堪える。桜の写真を撮りに目黒川に行こうかな、という気もこの寒さと雨では萎える。自分の外出は「不要不急」に当たるから、ひっそりとパソコン相手に過ごしている。気が付いてみると何時間も言葉を発してないてことに気づく。

 

咳をしても一人、は。孤高の俳人、放哉の句だったと思う。今は非常時、「咳をしたらコロナ」のご時世である。昨今、電車の中や人込みではマスクをしている人が8割はいる。マスクは感染予防には役立たないと専門家は言っているし、小池都知事の要請を容れて、バー、クラブ、カラオケなど、密集、密閉、唾が飛ぶという「三密」には出入りしていないので、自分はマスクは使用していない。それだけに人のいるところではくしゃみや咳には注意している。

 

日本に帰国したのは4週間前になるが、万が一、発症したら「タイから帰国した70代の老人が陽性と判定されました。当人の滞在した関西、佐世保、東京各地での足取りを調査しています」くらいのことは報道され、関係者に迷惑をかけるだろう。

マスクに感染防止の効果がないことは、多くの人は先刻ご承知と思う。でも、もしかして自分が感染している場合のことを考えて、エチケットとしてマスクをしているのだろう。他者に迷惑を掛けてはいけない、そういった思いやりの気持ちが高マスク率に表れていると思う。

 

■チェンライの様子

チェンライやチェンマイの邦人ブログを見ると「感染者日本人第一号にはなりたくないね」が合言葉という。まだタイ北部では日本人の感染は報告されていない。バンコクでは邦人男性が1名感染している。日本旅行から帰国したタイ人の嫁さんの母親が感染者だったため、一家感染したとか。

タイでは4月1日現在、武漢肺炎の累計感染者数は1771名、同死者数は二桁、12名となっているがチェンマイ、チェンライ県では死者数はゼロ、感染者数もそれぞれ34名、9名と多くはない。

チェンライでは飲食店、バーなどが軒並み休業、街行く人もほぼ全員マスクと危機感が高まっているという。あれだけ多発する交通事故には無頓着なのに、病気とピー〈おばけ)を異常に怖がるのは理解できないという人もいるが、見えないものへの恐れはタイ人特有と思う。

台湾旅行から2週間以上経って、兄はタイ語のジアップ先生のもとへ行ったが、先生はマスク姿で2m以上離れて座り、プリントの手渡しも無し。授業が終わるとすぐに兄の座っていた場所をアルコール噴霧器でシューシューと消毒し始めたそうだ。

正しく怖がるよりも、人間関係にひびが入っても念には念を入れて感染予防に努めるほうがいいのか、自分には判断はつきかねる。それにつけてもいつチェンライに戻れるのだろうか。