チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

タイのコーヒー 6

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

タイのコーヒー(その6)

チェンライ市内を背中にして1211号線をチェンマイ方向に向かう。市中心のデンハー交差
点から2,3キロ走り、街中を抜けると道路は急に片側3車線、堂々としたハイウエイに変わ
る。緩やかなカーブになるが道が広いので走りやすい。ついついスピードが出る。ところ
がこのハイウエイは2キロほどで、急にすぼまって、片側1車線の田舎道路になる。3車線
道路がどうして1車線に???タイの道路行政は一体どうなっているのか、と考えている
うちに右側に農業試験場の田んぼや溜め池が見えてくる。その先左手に「珈琲花園あと
200メートル」という看板があるのだが、目立たないので多分、見落としてしまう。

看板から200メートル、進行方向左手にレストラン・ヒムターンがある。その一角に「珈
琲花園」があるのだが、この店もほとんど目立たないので通り過ぎてしまうかもしれない。
通り過ぎると右手にチェンライ・テクニカル・カレッジの大きな校舎が見える。学校まで
きてしまったら、そこからチュンライ方向に引き返し、今度は右側にある珈琲花園を探す。
店は1211号線に面しているから農業試験場とカレッジの間を2,3度往復すれば必ず見つ
かる。3車線が突然1車線に変わってもどこからも文句が出ないほど交通量は少ない。どこ
でも安心してUターンができる。

営業時間は午前10時ごろから暗くなるまで。午前中はご主人のサンパンさん、午後はMさ
んが店にいることが多い。定休日は敷地の片隅を貸してくれているレストランの定休日に
あわせて毎月16日だけ。Mさんが笑顔でいらっしゃいませ、と迎えてくれるだろう。豆を
挽いたり、カップを用意したりとお目当てのコーヒーが出てくるまでに多少時間がかかる
ので、その間、「そういえば昨日ね…」といった会話が始まる。

Mさんと話していて感心することは、この人にはほとんど食べ物に対する偏見がないこと
だ。自分の感性に従って、とりあえず何でも受け入れてみるという素直な心の持ち主だと
思われる。タイ人は好きでも、日本人にはちょっと手が出ないという食物は多い。例えば、
「カイ・カーオ」はどうだろう。これは孵化途中の、ほとんどヒヨコになっている卵であ
る。ゆで卵と中身は同じ、と言っても、あのヒヨコもどきを美味しいといって食べられる
日本女性はどれだけいるであろうか。

友人のHさんが、卵が欲しいといってある長期滞在者のところに行った。その人は家の周
りにいる鶏からいくつか卵をとって友人に渡した。帰宅したHさんがゆで卵にして、さて食べましょうと殻を割った。そうしたら孵りかけのヒヨコが出てきて、思わずキャッと叫んで棄ててしまったという。「なんてもったいないことを、あれ美味しいのよ」とMさんは言う。ご主人のサンパンさんはカイ・カーオをMさんに食べさせたことがなかったのだが、Mさんは村人の家で大層美味しいものをご馳走になり、それが孵りかけヒヨコ(カイ・カーオ)だったそうだ。初心者は茹でカイ・カーオではなく油で揚げたカイ・カーオからはじめるといいでしょう、とはMさんの言。

コオロギはタイの人が好んで食べる昆虫だ。日本のコオロギと同じ大きさのコオロギの
他に4,5センチの大コオロギも市場で売られている。小コオロギはキロいくらだが、大コ
オロギは一匹5バーツの高級品だ。小コオロギはちょっと油臭いが、大コオロギはサザエ
の肝の味がするという。タガメも高級食材である。煮たタガメのお腹を押すとお尻から褐
色の液体が出てくる。これをチュウチュウと吸うとチョコレートの味というか、ウィスキ
ーのエッセンスの味というか、ともかくクセになる味だそうだ。

自分は好んで昆虫を食べるほうではないが、竹に寄生する長さ4,5センチ、太さ3,4ミリの
竹虫という芋虫のから揚げは食べたことがある。さくっとしてバター味のカッパエビセン
といった感じ。揚げたものは油が酸化してくるから味が落ちる、カリカリに揚げず、まだ
お腹がジューシーなものを口に入れ、歯で噛むとチュッと内容物が飛び出すくらいでない
と竹虫の美味しさはわからないとMさんはいう。スズメバチの幼虫も口の中での「チュッ」
を楽しむものだという。

彼女の北タイ料理一番のお勧めは、なんと言っても「カイ・モッソム」、赤アリの卵(蛹)
だ。これをスープにする。噛むとぷちっと弾け、とろりとした食感が楽しめる。親アリも
入っているが、これが酸味のアクセントとなる。「珈琲の香にむせびたる夕より、夢みる
ひととなりにけらしな」と吉井勇はコーヒーに西洋のロマンを重ねていたが、時は移り、
所変わってタイではコーヒーで、昆虫食に話がはずむのである。
(とりあえずこの項終り)