大麻は吸えますが・・・
■大麻合法化、その後
2022年6月にタイはアジア最初の大麻合法化の国となった。合法化と言ってもアムステルダムのように街角で自由にスパスパやっていいというものではない。一応、医療用に限定されており、嗜好目的での大麻吸引は禁止で、公共の場で大麻を吸引した場合、３カ月以下の禁錮や800ドル（約11万円）の罰金を命じられる。日本では法律が制定されればそれは厳格に順守され、取締りも徹底している。しかし、「ここはタイだから」と皆が言うように、ルールはあっても時には守られるし、時には無視される。
チェンライにも大麻を売る店が数軒以上ある。店内で吸えるようカフェを兼業している店が多い。市内の目抜き通り、ナイトバザールに近いパーフォリオシン通りには大麻専門店があり、14時から22時の開店となっている。チェンライではバンコクやパタヤのようにマリファナを吸いながら歩く外国人は見ないし、自分の周りでも大麻はいいよ、と言う人はいないところを見るとそれほど広まっていないと思う。
昨年は土曜市や近くのサンサーイ市場で大麻の苗が1本20Bで売られていたが、最近は見かけない。庭先で大麻を栽培している家も結構あったが、最近は警察が回ってきて、大麻1本に付き3000Bの罰金を取るという。家にも種から育てた大麻の苗があって20センチほどに育っていたのであるが、蝸牛に食べられてしまって今はない。
何度か書いているが大麻は20世紀初めまで今のアスピリン以上に流通していた一般的な鎮痛、咳止め薬だった。北タイでは山焼きが始まる3，4月には大気汚染度を示すPM2.5値が健康にとって危険と言われる300を超える日が続くことがある。昨年はこの時期、チェンマイでは大麻の売り上げが増えたという。風邪にはルル、咳止めに大麻ということか。
■大麻は覚醒剤の入り口
大麻は酒や煙草より中毒度が少ないし健康に与える影響も少ない。タイでの大麻吸引はまずお咎めなし、日大のアメフト部もチェンライで合宿すればよかった。
でも大麻がよくないという理由の一つに大麻からさらに危険な麻薬に進んでいく、がある。日大アメフト部の学生も大麻購入のサービスとして覚醒剤を何錠かタダで貰っていたそうだ。覚醒剤は大麻と同列には論じられないほどの害がある。タイでは高純度の覚醒剤の押収事件が10倍以上も増えている。2018年だけでタイでは、18.4トンの覚醒剤が押収されたという。毎月のように覚醒剤押収や銃撃戦の報道がある。
タイの情報誌、ニュースクリップから
12月21日未明、タイ北部チェンマイ県のミャンマー国境近くの山中で、タイ軍のパトロール隊が麻薬密輸業者とみられる5〜8人の武装グループと銃撃戦になり、武装グループ側の2人を射殺し、現場に遺棄された覚醒剤約206万錠、銃と銃弾などを押収した。タイ軍側に被害はなかった。武装グループはミャンマーからタイに覚醒剤を密輸するところだったとみられている。
タイ北部では今月16日にも、チェンマイの隣県チェンライで、タイ軍のパトロール隊が麻薬密輸業者とみられる男15人を射殺し、覚醒剤約204万錠を押収していた。
こんな記事も
タイ当局は12月12日正午ごろ、西部カンジャナブリ県のミャンマー国境近くで、トラックに積まれた覚醒剤約5000万錠を押収し、車内にいたタイ人の男女を逮捕した。
軍のパトロール隊が不審なトラックを停車させ、運転していた男の尿検査を行ったところ、覚醒剤の陽性反応が出た。荷台を調べ、大量の覚醒剤を発見した。
タイでは数百万錠の覚醒剤摘発が連日のように報じられるが、5000万錠という量は異例。あまりに大量だったため、当局は荷台の覚醒剤をクレーンで下ろした。
■反政府軍の資金源
北タイを含む黄金の三角地帯は世界最大のヘロイン、阿片の供給地だった。しかし阿片は農産物であるから手がかかる上に発見されやすい、そこで近年は化学原料を成分とするアンフェタミン系の覚醒剤が阿片に取って代わった。
ミャンマーのシャン州には反政府軍が盤踞し、覚醒剤の製造、販売が彼らの軍資金となっている。覚醒剤は阿片より製造コストが安く、1錠数十円で出回る。安ければ新規ユーザーが増え、さらに生産が増える。ミャンマーで生産された覚醒剤はチェンライ、ラオスを経由してタイに持ち込まれ、タイから各国へ密輸されていく。
日本では2022年に567キロ、末端価格にして約335億円の覚醒剤が押収されている。タイの覚醒剤の価格は1gで3000円と日本の10分の1以下、タイ国内の常用者は300万人といわれている。
これだけ広まっている裏には取締りの抜けがある。だからと言って安易に手を出すと大変、最高刑は死刑だ。観光客は気をつけたい。
