チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

チェンライ滞在15年

チェンライ花祭りから

ここ2,3年、アジサイが増えた

白い蘭

我が家のバナナ

同上

バナナの花、順番に開いて房となる



チェンライ滞在15年

■人生の転機

認知症が進んできた母を伴ってチェンライに着いたのは2009年の1月だった。2009年(平成21年)というと8月に総選挙があり、官僚主導の政治打破を掲げた民主党過半数(241議席)を大きく上回る308議席を得て圧勝した。自民党は、公示前の300議席から119議席に激減する結党以来の歴史的大敗を喫し、戦後初めてとなる、野党第1党が単独過半数を獲得しての政権交代が実現、9月には鳩山内閣が発足している。

世界同時不況でトヨタ自動車は純損益が2兆円以上悪化して約4369億円の赤字に転落し、ソニーは1万6千人の人員整理をおこなっている。日本経済はデフレでGDPは35年ぶりに二桁減少、利用客が少なくて銀座には客待ちのタクシーの長い列ができた、とある。

海外ではオバマ大統領が「核なき世界」を訴えてノーベル平和賞を受賞し、マイケル・ジャクソンが死去、さらにイスラエルガザ地区に侵攻し、停戦までの約2週間でパレスチナ側に1300人の死者が出ている。イチローの9年連続200安打、松井はワールドシリーズMVPといった出来事もこの年のこと。チェンライで新生活に慣れることに心が奪われていたせいか、内外のニュースについてあまり記憶がない。今、年表を見て、そんなことがあったなあ、と思う程度。

ただ、ドル円レートは90円ほどで今とは比べモノにならないくらいの円高。ドルとリンクしているタイバーツは安く、家財道具や車の購入、ビザ取得のための預金が必要だった我々にとってはよかったと言える。慣れない異国の生活に戸惑うことも多く、瞬く間に日々が過ぎていくという年だった。今振り返ってみると内外の大事件とは関係なく、ささやかに個人的な人生の転機が訪れていたのだろう。

 

■何故か居つく

今年は2024年、2009年にチェンライに移り住んだから、本年でタイ在住15年となる。母は日本で「3ヵ月でお亡くなりになります」という医師のご託宣を受けていた。ご飯を食べようとしないから、点滴となり、点滴では十分な栄養が取れないからそれで寿命が尽きるとのこと。このまま入院していたら死んでしまうと病院から家に連れ帰った。

帰宅すると箸で卵焼きなどを食べているので一安心。日本の病院や施設では認知症の母は尊厳ある人間ではなく一病人としてしか見てもらえない。これは日本の介護、医療体制からすれば仕方のないことだとわかってはいた。それで日本では十分なケアは期待できない、と思い詰めて薄い縁にすがってチェンライに移り住んだ。

3ヵ月の命と言われていたし、もってもせいぜい3年と思っていたが、チェンライの気候が良かったのか、女中さんの親身な介護がよかったのか、10年ほど母は生きながらえて2018年に天寿を全うした。

つい先日亡くなったような気がするが6年も前になってしまう。介護ロングステイとして暮らしていたのだし、一段落ついたら帰国してもよかったのであるが、そのままチェンライに居ついている。居ついているばかりでなく、2023年には家を建て、ここが終の棲家になるのではと考えている。

 

■自分らしく生きる

海外に移住してよかったと思うことはありますか?という質問があった。よかったと思うことがあるから異国に住み続けている。人によって自分の専門が生かせる仕事が見つかった。パツ金のカミさんと一緒になれた、人間関係のほとんどが異国にある、などいろいろな理由があるだろう。

自分の場合、自分が自分のままで過ごせる、が主な理由だろう。ウズベクにカレッジの講師として赴任した途端に30年以上飲み続けてきた胃潰瘍の薬がいらなくなった。チェンライに来てからは更に人づきあいのストレスが無くなった。付き合いたい人とだけ付き合えばよく、自分とは合わない人と付き合う必要はない。対人関係のストレスはゼロだ。

もちろん日本は安全で、便利で、清潔で、和食に限らず食物は美味しく、人々は礼儀を弁えていて、医療は充実していて、と数えきれないほどの利点はある。外国人が賞賛してやまない日本の美点を紹介するユーチューブを視聴すると、望郷の念が湧き上がらないこともない。でもこの素晴らしい国にいつでも帰ることができる。今は今の生活を楽しもう。今日もコートに行って6ゲーム先取のダブルスを2つ。シャワーを浴びてパソコンへ、音楽も時事解説もスポーツ番組も思いのまま、昼食を自分で作り、眠くなれば昼寝、「春立つや新年古き米五升」ではないが庭にはバナナが五本以上実をつけているし、ビールとラオカオも充分ある。自堕落な自分を責める人もいない。飢えず凍えず満ち足りた日々を異国で過ごせることに感謝、心からそう思う。