チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

何かを得れば何かを失う

サンサーイ市場

子供服

孫に買ってやりたい、とは思わない

センスが違う

バナナの屋台

おなじみ、マリファナの鉢

 

何かを得れば何かを失う

■無意識の所作

異国に長く住んでいると、日本人なら誰もができる所作や体の動きができなくなっていることに気づく。友人が久し振りに日本に戻り、新宿の朝の雑踏に巻き込まれた。何十、何百もの人がこちらに突進してくる。自分と同じ方向へ向かう人もいる。これはみんなぶつかり合って大変なことになる、とその人は一瞬、恐怖にかられたそうだ。しかし、雑踏は混乱に陥ることなく、無意識のうちにお互い避けあってそれぞれの方向に流れていく。

これは日本人にしかできないことだよ、とアフリカから来た人が言っていた。国によっては学校で一列に並ぶ訓練などしていないから、徴募した新兵さんを横一列に並ばせる場合、あ、君はちょっと後ろ、そこの人ちょっと前に出て、などとやるのだが、2,3人が一列になったところで全体の列はもう前後にうねってどうしようもないとか。

チェンライでも夜7時ごろの土曜市に行けば雑踏を見ることができる。一応、左右一方通行になっているのだが、途中で止まるグループもいるし、何といっても歩く人がノロいし、追い越しもままならなくてイライラする。イライラするということは日本のペースを基準に考えている、言い換えればまだタイ化していないということだ。それでも日本に戻った時、駅のエスカレータの乗るとき一瞬、逡巡して、あるいは車内でつり革を持って立つ位置が微妙にずれていて、若者に「チッ」と舌打ちされたことがある。

異国に住んで何かを得ると、母国の何かを失うというが、まだどっちつかず、中途半端に得失経験を繰り返しているようだ。

■センスのいい日本

異文化に慣れると言えば聞こえはいいが現地生活が長くなってくると、日本人らしさが一部失われる、これは実体験からも言える。東京や横浜に行くと、歩く人々が洗練されていて、センスのいい衣服に身を包んでいる。髭を生やした熟年もいるが、サマになっている。チェンライでも髭の熟年を見かけるが、無精ひげまがいでむさくるしい。

週末にサンサーイ市場に出かける。今日は1着35Bの長袖シャツやカーディガンを売っていた。もちろん古着だ。古着でもいいものは100B、安くても60Bはするから1着150円ならお買い得だ。でも古着でデザイン、柄で、これはというものは見たことがない。新品でもそれほど値段は変わらないのだが、日本なら絶対誰も買わないというようなケバケバしい原色や著作権侵害クレヨンしんちゃんの図柄のシャツが売られている。南国のせいか鮮やかで派手な模様が好まれるようだ。

バンコク駐在から帰国したある奥さんは、着るものタイ風に派手になっていて、日本の友達に「あなた、それ、浮いているわよ」と注意されるまで気が付かなかったそうだ。

自分も池袋のメトロポリタンで待ち合わせをしたとき、比較的明るいオレンジ色の長袖シャツを着ていった。友人は向かい合うなり「そのシャツ、何とかならんのか」。派手過ぎて高級ホテルのラウンジにそぐわなかったらしい。また、チェンライでは正装と言われている「モーホーム」という藍染めの上下で銀座に行ったことがあるが、友人たちからは評判が悪かった。いくらタイの礼服と言っても乞食坊主の作務衣にしか見えなかったらしい。銀座の高級割烹だったのにサンダル履きだったしなあ。原色シャツやモーホームで頓着しないところがもう日本人として何かが欠落している証拠なのだろう。

■腹が立つことも

日本の友人が南方ボケだ、とあきれるくらいだから、すでに異文化に馴染んだ生活を送っているともいえる。清潔で安全、安心、決められたとおりに物事が進んでいく、そういった生活は素晴らしい。その意味で日本に暮らすことが日本人として一番いい。でも美人で気立てのいい奥さんがいても不倫に走る男がいるように人間は勝手なもので、どこかに青い鳥がいるのでは、と夢想しがちだ。

男も女も短パン、Tシャツ、ヨレヨレの小汚い年寄りもウロチョロしている市場で、このナッパが10B? 確かあっちの店では5Bだったよな、今日はネズミの開きを売っていた、アリの佃煮は小皿一杯で20Bか。

洗濯済みではあるがTシャツに短パン、週5日のテニスで顔と腕はタイ人並みに黒光りしている。道路を逆走してくるバイクや車にも驚かなくなった。あまり公言すべきことではないが、自分だって適当にUターンをするし、バイクで逆走することもある。テニスコートでバナナの皮をコートの外の草地に投げ捨てる。

でもコート内に捨てられた汚いグリップテープを見て腹が立つのはまだ日本人の礼節が残っているからであろうか。