覚醒剤雑感
■タイでは1錠30円
日本では覚醒剤の末端価格は1錠5千円ほどという。タイでの販売価格はいかほどか。北タイには国境を接するミャンマー、ラオスから覚醒剤が流れてくることはよく知られている。地元新聞に、「お菓子並みの値段?ヤーバー1粒10B」の記事があった。
「6月27日、チェンマイ県チェンダーオ郡ムアンナ地区に住む38歳のラフ族の男性が、ヤーバー所持の現行犯で逮捕された。警察は、男が所持していた800粒以上ののヤーバーを証拠品として押収した。調べによると、ミャンマー側からのヤーバーの買取り価格は、何と1粒わずか10B。近年、タイ側での需要が低下し、価格の下落が続いている。輸入されたヤーバーがタイ側に入ると、1粒50Bで取引され、チェンマイなどの都市部では80-100B程で販売される。このため、ムアンナ地区では、1粒10Bの激安ヤーバーが日常的に流通していた。」
ヤーバーとはアンフェタミン系の覚醒剤、昔はヤーマー(ヤーは薬、マーは馬)と呼ばれ競走馬を興奮させるために投与されていたそうだ。日本でも戦後しばらくは疲労がポンと取れる「ヒロポン」という商品名で覚醒剤が広く販売されていた。1951年に覚醒剤取締法が施行され、事実上日本では販売禁止になったが、タイでは1970年代まで眠気覚ましの薬としてガソリンスタンドで買えたので、常用する長距離トラックやバスの運転手は多かった。
2000年代初頭、時のタクシン首相の下で麻薬の取締りが強化され、20g以上の麻薬を持っていたら死刑か終身刑という厳罰が科されるが、実際は麻薬犯は減らない。新聞を丹念に読むと、学校の先生が生徒に覚醒剤を売る、お坊さんが信徒に売る、警察官が運び屋をやる、といった具合で相当蔓延している。高校のゴミ箱には使い終わった注射器が捨てられているというから恐ろしい。ヤーバーの価格は1錠200Bと聞いていたが、供給過剰で現在は100B、仕入れが10Bだから学校では学割価格1錠50Bで買えるらしい。
■健全な日本
7月17日付のタイニュースクリップに「タイの麻薬関連逮捕者、過去9カ月で20万人超 覚醒剤1・3億錠押収」という記事があった。
(引用開始)タイ麻薬取締委員会事務局によると、タイ国内の2016年10月―2017年6月の麻薬の押収量は覚醒剤の錠剤1億2721万錠、覚醒剤の粉末3530キロ、大麻8296キロ、ヘロイン344キロだった。また、麻薬関連の逮捕者は20万4627人に上った。(引用終り)
9ヶ月間の逮捕者が20万超だから年間を通せば26-27万人に上るだろう。
警察庁発表によると、日本における平成26年の薬物事犯の検挙人員は約1万3千人、そのうち覚醒剤関係は1万958人と、前年より49人(0.4%)増加し、全薬物事犯の検挙人員の83.5%を占めている。また、粉末押収量は487.5キログラムと、前年より減少したものの、過去10年間で2番目に多い押収量となった。
粉末でタイの10分の1、押収した覚醒剤の錠剤に至ってはわずか56錠、タイと比較するのが嫌になるくらい。
■廃人への道
覚醒剤は酒井法子、田代まさし、尾崎豊など芸能人の例を見ても一度使ったらなかなかやめられない。覚醒剤を使用すると3日くらい眠らなくても活動できるし、得られる快楽も半端なものではないらしい。
しかし薬の効果が切れると、立ち上がることはおろか、口を開くのもしんどいほど衰弱、食欲も全くなくなり、一度眠ると死んだように眠りこんでしまう。でもいくら寝ても体力は回復せず、性欲も続かない、そして「幻覚、幻聴、恐怖心」という恐ろしい症状が現れてくる。壁や天井が歪んで見えるくらいから始まって、人が悪口を言っている、自分を殺そうとしている、次第に対人恐怖症に陥り、友人、家族などの対人関係が崩壊していく。この辛い状況を抜け出す唯一の方法は、更に覚醒剤を使う、それだけ。覚醒剤を使用すると元気100倍、自分にできないことはないと思うほど精気が漲るが、その効果もだんだん薄れ、更に薬が欲しくなる。そして幻覚、幻聴で殺人を犯したり、自殺をしたり。
■清原クン
タイやラオスでは麻薬犯罪は死刑か終身刑の重罪、でもバックパッカーのネット手記を読むと大麻やヤーバー、阿片は簡単に手に入るようだ。人に迷惑かけず、人知れず廃人になっていくのであれば、北タイの山奥でプカプカと阿片を吸って安楽に暮らす晩年も悪くはないと自分は考えるが、同じ意見という日本人は多くないだろう。
清原和博クンもラフ族の部落に暮らし、多少のおカネをばらまいていたら、褒められこそすれ、非難されることなく覚醒剤漬けの一生を送れたのに、と思うのだがやはり不謹慎か。
一番下はタイ南部で押収された覚せい剤50万錠と粉末10キロ