風前の灯、日本の美風
■すごいぞ、日本
外国人が日本に来て感激、といったビデオをよく見る。清潔だ、安全だ、コンビニ、自販機がどこにでもある、人が優しい、食べ物が何でも美味しい、アニメの世界は現実だったんだ、などの感想もある。主としてインタビューに応じている外人はいわゆるファラン、白人が多い。質問する人も答える人も白人という組み合わせもある。
昨今、日本を訪れる外国人の国別ランキング（2023年1－4月）を見ると、1位韓国（208万人）、2位台湾（106万人）、3位香港（57万人）、4位米国（56万人）、5位タイ（37万人）、6位中国（25万人）となっていてアジア系が圧倒的である。でも日本はすごい、といったビデオの出演者は白人ばかりということは、外人と言えば白人というイメージがまだ我々の頭に刷り込まれているせいか。
それに、例えば韓国人が訪日中国人にインタビューして、というのも違和感があるし、褒めてくれるどころかお互いに日本の悪口を言いあうのではないかと、始めから見る気にならない。でもその前に言葉の問題があって自然な意思疎通ができないということもあるだろう。時折、タイ人もインタビューに答えているが、自分よりはるかに英語が上手だ。まず英語で、という条件だと結局、白人に落ち着くということか。
どうして日本を旅行先に選びましたか、という質問に対し、アジア、欧米を問わず、「アニメを見て育ったから」という答えがかなりある。パヤオ大学日本学科の日本祭りはまるでコスプレ大会のようだった。とりあえずインタビューの始めはアニメの話で盛り上がって、それから本題に入るというケースが多い。自分の場合、セーラームーンをやっと識別できるというアニメ音痴だから、学生に話しかけることを遠慮してしまった。
■福の神は海からやってくる
日本人は優しい、思ったより親切だった、おもてなしの心を感じた、こういった感想は多い。欧米やタイでは目が合うとにっこりする人が多いが、本来的には我関せず、冷淡という人が普通。地続きの外国では30年に1度は戦争があって、男は殺され、女は戦利品となる、そういった歴史を持っているから、外から来た人、ヨソ者には冷淡だという。日本の場合、2600有余年の歴史を見ても外国に蹂躙されたことはほとんどない。そのせいか、知らない人（まれびと、まろうど、客人）が来ると歓待して、新智識を得ることを喜びとした。
七福神は舟に乗って海の向こうからやってくるが7人のうち恵比寿だけが日本の神様で、大黒天、毘沙門天、弁財天は印度、布袋や寿老人は中国から、と七福神のうち六福神が外人だ。昔から海の向こうからやってくる人は福をもたらしてくれるという潜在意識があるのだろう。そういえば、ゴジラは核兵器の恐ろしさを人類に伝えるために眠りから覚めて東京湾に出現したのではなかったか。何人かのアニメのヒーローは地球を救うために宇宙からやってきた、という設定になっている。
ハリウッド映画では宇宙人は地球征服を企む禍々しい存在として描かれることが多い。宇宙人ばかりでなく「夜の大捜査線」、「ランボー」などでは街にきたよそ者を差別するところから物語が始まる。外からくる奴はヤバい、といった先入観は白人の殺し合いの歴史からくる意識に違いない。
とりあえず、知らない人に微笑むのは「私は敵ではありません、害を加えないでください」という意識の表れという。タイ人の微笑みも同じ理由ではないかと思う。
■観光客と移民の違い
日本にくる外人は、飛行機に乗って、ちゃんとビザを持っている人ばかりだ。そのまま日本に住み込もうという人は少なく、観光した後は帰国してくれる。いい印象を持ってまた来てくれるリピーターも少なくない。日本や日本人に対するリスペクトがある人が大半だろう。別に外人だからことさら日本人が親切にしてあげているわけではなく、稀人は大切にするという大昔からの習慣というか、人のために何かしてあげれば気持ちがいい、という日本人の民度が外人観光客に評価されているのだろう。
米国では地続きのメキシコから不法移民が流れ込んで、その数、バイデン政権の下で1300万人、国を分断する大問題となっている。日本にはフェンスを乗り越えて乱入してくる難民はいないが、ビザ切れでも帰国せず、住み続ける外国人は増えている。でも政府は不法滞在者に在留許可を与える方向で法改正を進めている。欧米における難民容認の惨状を見よ。外国移民による犯罪の増加で、マレビトを温かく迎える日本のよき慣習が消えていくのではないかと心配している。
