タイ、ミャンマー国境
閉鎖され、車人の出入りはできない
タイ側から見たミャンマー国境,門が閉まっている
タイのイミグレから見たメーサイ市内、車が走っていない
中国市場アーケード、客がいない
閉まっている店もある
観光客は戻るか
■来やすくなったが
7月1日からタイランド・パスが外人入国者に対しても廃止となった。タイランド・パスとは1万ドルの医療保険を付保してタイ大使館に申請する1種のビザだ。このビザは申し込めばすぐ下りる、保険の手続きもそれほど面倒ではない。でもネットを介して作業する必要があり、慣れない人にとっては面倒だ。これが廃止になったのだから、航空券さえ用意すれば誰でもすぐにタイに行ける。
でも、タイへの外人観光客は増えるだろうか? 感染症前の2019年には約4千万人の外国人観光客がタイを訪れた。内、中国人が1千万人と全体の4分の1を占めた。中国はここ3年で経済が落ち込んだし、共産党政権は国民が外国に行くと、つまらぬ知識がついて反政府的になりがちだ、として旅券の発行制限をしている。外貨の持ち出しも共産党政権にとって不都合だ。ある意味で鎖国政策を始めたと言っていい。
2019年にタイを訪れた日本人観光客は190万人と過去最高を記録した。タイランド・パスがなくなったからといって、日本からの観光客は増えるかというとそれも疑問だ。
まず、日本とタイ間を結ぶ航空便が少なく、結構値段が高い。感染症以前に出回っていた格安航空券は東京―バンコクが往復で3万円を切っていた。時間や便によってはさらに安かった。
その次に障壁となっているのは日本の「水際作戦」である。日本は世界から見て感染症をうまく抑え込んだ国であるにも拘らず、入国制限が厳しい国だ。日本人がバンコクやプーケットに来ても日本帰国に際して72時間以内のPCR検査陰性証明が求められる。観光の合間に病院を探して検査してもらって、あとでその結果を貰いに行く。面倒なうえに費用も掛かる。中国ほどではないにしても日本政府は国民を外に出したくないのだろう。
■ラオスは開国
タイでは1日の感染者数が2千人を割る日も出てきた。マスク着用義務は原則として解除されたが、老人や基礎疾患のある人、また混雑した場所ではマスク直用が推奨されるとしている。でもチェンライの市場やスーパーではほとんどの人がマスク着用だ。
一応、今年の7月末まで非常事態宣言が延長されているが、ビヤバーやカラオケは営業再開というし、観光客受け入れ準備は着々と進んでいるようである。
これまで、1,2泊のタイ国内の旅行は行っているが、タイランド・パスが足かせとなって海外旅行にはまだ行っていない。台湾、ミャンマー、カンボジアなどまだまだ入国制限がある。ただタイからラオスには問題なく行けるようになった。ラオスは滞在15日以内であれば日本国籍所有者に対するビザの取得が免除されている。これは日本がラオスに多大の援助をしている見返りという。10年ほど前、タイとラオスの国境、フエサイで豪州やヨーロッパのバックパッカー達に「俺たちは25ドルのビザ代金を支払うのにどうしてお前はビザが要らないんだ」と羨ましがられたことがある。あの時は日本国民であることを少し誇らしく感じたものだ。
ラオスなら明日にでも行ける。でもラオスに行って何すんだよ、という気持ちが先に立つ。もう何度もバスやスクータで行った。メコンに落ちる夕日を眺める、ただそれだけの目的でタイのチェンコンからメコンをわたって対岸のフエサイに1泊したこともある。世界遺産の古都ルアンプラバン、メコンを一望するワット・プーにも行った。ワット・プー遺跡は世界で一番観光客の少ない世界遺産という。
■イナーシャが付いたのか
20年ほど前、「イナーシャ」という言葉をよく聞いた。「慣性」の意味だが、「デフレもイナーシャがついているからしばらくは不況が続くだろう」といったように政治経済分野でも使われていた。ダラダラと同じような状態が続くことでは、旅行もしばらく出かけていないと、別にすぐ行かなくてはいけない理由はないし、と旅に対する関心が薄れている今の状態と同じだ。近場に行くのも億劫であるから、人種差別を受ける恐れのある欧州や米国など始めから計画しない。ひょいと思い立ってスクータに跨ってスコタイやラオスに出かけた頃が夢のようである。以前は、行けば同じ所でもまた格別の気持ちが沸いて、というワクワク感があった。あの元気はどこに行ったのか。
このひと月、毎日、プロテニスを観戦し、邦人選手を応援してきた。それが終って「トーナメント・ロス」に襲われたのか。片雲の風に誘はれて、漂泊の思ひやまず、の心はどこに消えたのか。イナーシャとは関係なく、ただ年のせいで気力が薄れてきているのだろうと思う。それも自然なことだ。