チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

女性監督の映画2本

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映画「朝が来る」のスチール写真から

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同上

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同上、赤ちゃんを初めて抱く

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映画のスチール写真から

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ユマとお母さん、親離れの映画でもある

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タイロケ、カンチャナブリらしい。

 

 

女性監督の映画2本


■営業自粛中
映画は映画館で観たい。画面が大きいし、暗がりで一人の世界に浸れる。巻き戻しも早送りもできない。この映画は娯楽ではなく、キレやすい老人に忍耐を教えてくれる教育映画だ、といった退屈な作品もたまにはある。でも映画館へ行く前にネットで評価をざっと見て、評価が5点満点で3.5以下の作品はパスするから、シルバー料金千円は高くないなあという満足感を得ることが多い。

ところが、緊急事態宣言が出され、大半の映画館が営業を自粛してしまった。これまで館内の換気、消毒は万全です、と予告編の始まる前にくどく説明していたのに、どうして休館するのか。年寄りの楽しみが減ってしまったじゃないかとぼやきたくなる。でも密を避けるため、席は1つか2つおき、それでも半分くらいの入り、人気のない作品だと10人足らずの観客しか入っていないこともあったから、休館にして休業補償金を貰った方が経営的には有利なのだろう。
それでも、飯田橋ギンレイホールは緊急事態宣言下であっても、いつも通り2本立ての営業を続けている。世の中、カネだけではない、いい映画を観てもらいたい、という支配人の使命感を感じる。

原田マハの長編小説「キネマの神様」は3割ほどが著者の体験に基づくという。主人公が飯田橋の駅前から外堀を眺めるシーンがあって、この小さな映画館は、ギンレイホールがモデルだな、と思った。「キネマの神様」は山田洋次監督が映画化した。日米の映画好き老人2人の物語である。借金したり、競馬ですったり、家族に見放されたどうしようもない老人を志村けんが演じる予定であったが、クランクイン直前に志村が亡くなったため、代わりに沢田研二が演じている。
小説には泣けた。老化で涙腺がゆるくなっているから映画を観ても泣けるだろう。今年の夏封切りという。楽しみである

■当たり前が仕合せ
5月にギンレイホールで見た映画は河瀬直美監督の「朝が来る」とHIKARI監督の「37セカンズ」の2本である。2本ともハンカチ片手の泣ける映画だった。感染症対策のため着席可能の席は半分ほどであったが、ほぼ満席、こういったミニシアターに足を運ぶ人は目が肥えているから、作品によって観客数が上下する。前評判が高いだけのことはある。

「朝が来る」は直木賞作家辻村深月の小説を映画化したものだ。映画を観た後、原作の小説を読んでまた泣いてしまった。特別養子を迎えた夫婦の話である。子供が欲しい、でもできないという夫婦の苦悩も描かれている。自分は精子があってよかったよ、とつまらぬ感想でお叱りを受けるかもしれないが、世の中当たり前のことが実は本当に仕合せ、恵まれている、神の祝福、仏様のお導きがあってのこと、ああ、有難い。感謝する一瞬はいい映画や小説、音楽、絵画鑑賞、そしてその他、日常の些細な出来事の中にもあると思う。

■女性の時代か
「37セカンズ」は生まれた時、37秒呼吸が止まったため、脳性麻痺となった女の子の映画だ。オーディションで選ばれた脳性麻痺の女性がヒロイン、ユマを演じる。この映画には悪い人は出てこない。気が滅入る場面はない。いつの間にか場面はタイとなる。双子で生まれた、まだ見ぬ姉に会いに行くのだ。おお、タイだ、車窓の風景に注目、うまく切り取っている。姉はタイの山の小学校で教えている。海外協力隊員だろうか。妹がいることは知っていたけれど怖くて会いに行けなかった、ごめんなさい、と二人は抱き合う。

その夜、ユマはGHのベッドの上で呟く。「呼吸が止まったのが自分でよかった」。

映画館を出たのが15時前、飯田橋から春日へと都営地下鉄大江戸線に乗った。空いていて7人掛けの座席には1人か2人しか座っていない。右端に座って左端を見て驚いた。小学校低学年の女の子が電車の床に正座し、座席に広げたノートに一生懸命、鉛筆を走らせている。身を乗り出して見ると、靴は揃えて置いてある。白靴下の足の裏がきちんと交差している。私立校の制服だからちゃんとした家庭の子なのだろう。

世界中で日本でしか見られない光景だ。先ず外国の電車の床は汚い。正座して座席を机代わりにして勉強する??さらに衝撃を受けたのは何人も大人が乗っていているのに、少女に注目しているのは自分だけ、ということだった。これ、日本の普通の光景なのか。スクープ写真を、と考えたが、ここは日本だし、と思いとどまった。

女性監督の映画2本を観た帰りだったせいか、こういう女の子が将来の日本をしょって立つのか、などと考えてしまった。