もうすぐソンクラン
■服喪期間につき
4月と言えばソンクラン、タイ正月だ。今年は13日から16日までの4連休、民族移動の如く、首都圏から里帰りする人で交通機関、宿泊施設は大変混みあう。ソンクラン期間中は日本の常識では考えられない水掛け合戦が行われる。掛けるほうも掛けられるほうも酒が入っている。道路側にはテーブルと子供用プールを準備して、大音量の音楽で踊りながら、沿道の酔っぱらいが車の酔っ払いに水をかける。荷台には氷の入ったドラム缶、そこから汲んだ冷水がバシャリと掛けられる。掛けられた方は思わずウギャーと悲鳴を上げる。道路の宴会グループからはトラックの運転手に焼酎やビールの差し入れがあり、運転手はコップクンと酒を飲みほしなから片手運転。
でもこんなハチャメチャなソンクランはここ2,3年影をひそめた。軍政になって取締りが厳しくなったこともある。昨年は旱魃で節水を政府で呼びかけ、バンコクではソンクラン期間が短縮されたし、チェンマイでも夜間水掛禁止令が出て、低調なソンクランだった。
今年は更に盛り上がりに欠けるだろう。昨年10月に崩御されたプミポン前国王の服喪期間であるから、あまり派手に楽しんではいけない、という国民感情があることはもちろんだが、プラユット軍事政権が昨年以上の厳しいお達しを出しているからだ。それはトラックの荷台に水タンクを乗せての水掛禁止、また荷台に人を乗せてはいけない。更に交通ルールを厳格化して、運転者、同乗者のシートベルト着用義務化、駐車違反の取締り強化を行う。すでに警察が罰金をビシビシ取り立てているという噂もある。
ソンクラン祭期間中の交通事故件数、死者数、負傷者数は、一昨年が3373件、364人、3559人、昨年が3447件、442人、3656人と増加傾向となっていることから、有識者の会議では今年のソンクラン期間中の酒類の販売禁止が提言されているという。
そういえば昨年のソンクラン期間中も沿道での酒類販売が禁止されていたはずだが、交通事故件数も死者数も増えているところを見ると、低調なソンクランであっても、飲酒運転は減らなかったのだろう。
■不意打ち
数年前までは常識外れの水掛け合戦に進んで参戦した。今はソンクラン期間中、ひっそりと家の中で過ごしている。こちらに来たての頃、こちらに長く住む方が「ソンクラン期間中は外出しません」と言っていた。何で1年に1回のイベントを楽しまないのか、といぶかしく思ったものだが、今は自分が同じセリフを呟いて家に逼塞している。
以前は、ソンクランの1週間前くらいから水鉄砲や小さな桶を持った子供たちが物陰にひそんでいて、通りかかるバイクに水を掛けていた。学齢期前の子供が獲物を狙う猫のように、バイクにソーレッと水を掛ける様子は微笑ましい。でも中学生位の子に不意にバシャリと冷水を浴びせられると、まさに年寄りに冷や水、心臓麻痺になりかねない。水を掛けられても決して怒ってはいけない、という暗黙のルールがあるからバイクの場合、そのまま通り過ぎるが、心の中では「なんだー、お前はー」と怒鳴っている。
とはいえ、今年もソンクラン前の水掛は全く低調で、ソンクランが近いがバイクで走っていて緊張することはほとんどない。子供の姿がチラチラしない道路には却って物足りなさを感じてしまう。これも自分がタイ化しているせいだろうか。
■来年に期待
政府の禁酒、禁トラックのお達し以外に、盛り上がりに欠ける原因としては天候がある。やはり暑季の40度近い気温の下であれば、水を掛けてもらったほうが気持ちいい、ということもあろうが、今年は昨年に比べて、3,4月の気温が低いと思う。
3月は27日の未明にスコールがあった。そのあと4月2日と3日に雨があった。雨が降ると気温が上がらない。日中の気温が30度くらいだと、今日は寒いじゃないか、という気になる。
昨年の4月の暑さは格別で、何度もプール付き、朝飯付き、もちろん冷房付きのホテルに避暑に行ったものだ。そうしなければ体に変調をきたす、という予感がする暑さだった。今年は今のところ、就寝時、扇風機をかけっぱなしにするような暑さは経験していない。日中でも扇風機を使用しない日もある。この涼しさのままソンクランに突入したら、やはり服喪期間ですから自重しましょう、ということになるだろう。
今年は仕方ないが、服喪期間の明ける来年には、数年前のようなめちゃくちゃなソンクランを期待したい。やはり祭りは盛り上がってこそだ。祭りの経済効果も無視できないし。