チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

介護ロングステイ7年7カ月

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介護ロングステイ7年7カ月

■まだまだ元気
ブログを読み返してみると、4年前は母は話もしたし、こちらの言うことにも反応していたようだ。こちらに来て入れ歯を使わなくなったので、発音がはっきりしない。え、何、と何回も聞き返したら、怒って人を叩いた、などと書いてある。今はトイレと食事以外は寝たきり状態。ベッドの上でうつらうつらと寝ていることが多い。
2ヶ月のチェンライ生活を続けている弟夫婦が朝夕2回、我が家にやってきて、母に何かと話しかけてくれたが、今回もはかばかしい反応はなかった。じっとこちらを見ていることはあるが、もう左目は見えない。眼科医に診てもらったことがあるが、右脳が縮小しているので、治療の方法がないということだった。左足が曲がったっきり伸びないが、これは10年ほど前、左大腿骨を骨折した時に入れた金属のせいだろうと思う。年を取って骨が縮んでも金属は伸び縮みしない。

幸い、消化器系、循環器系は丈夫なようで、食欲はあるし、咳き込むことも少ない。常夏の国ではあるが、それなりに寒さを感じる日がある。女中さんが寒暖にあわせ、タオルケットをかけたり、はがしたり、小まめに面倒を見てくれるので、風邪をひくことはない。年を取って気を付けることは、風邪ひくな、転ぶな、義理を欠け、の3つという。母はもう転べないし、冠婚葬祭に列席することもかなわない。風邪から肺炎、も今の状態からは考えにくい。90歳、いつ亡くなっても天命と諦めるしかないが、その時の死因は何になるのかなあ、と考えるときがある。自分も含め、死に方は選べないから考えても仕方ない、と言えばそれまでだが。

■和食と暫しの別れ
2ヶ月毎にチェンライ、高松の生活を繰り返している弟夫婦であるが、夫婦してのんびりするのが好き、と言って、今回の滞在中もチェンマイに1泊、ナーンに2泊の外泊をしただけ。同じ団地内の彼の家を覗いてみる機会があったが、大概、昼寝をしている。暑いので多少冷たく感じる石の床で寝ている。憑かれたようにあちこち旅してまわるという過ごし方もあるが、寝て暮らす、も悪くはない。それに高松に戻れば、孫の世話やら冠婚葬祭、とてもタイのようにゆっくりはしていられない。

ブアさんも弟夫婦の滞在を歓迎している。というのは弟の嫁さんが、毎日、夕飯のおかずを持ってきてくれるからだ。女中さんはご飯を炊けばいいだけ。彼らが持ち込んだ数十キロの携行荷物の大部分は日本の食材、タイでは中々お目にかかれない美味しい和食が食べられる。特に魚の干物には随喜の涙が出る。最近は、肉料理を避け、野菜中心と我々の年齢を考えた健康食が並ぶ。ありがたいことだ。8月末に帰国したので、これから2ヶ月、女中さんの肉野菜炒め中心のおかずになる。弟夫婦の滞在中はあまりなかったが、これから外食の機会が増えるのではないかと思う。

■話し掛け
介護生活とはいえ、実際の作業、例えば紙パンツの交換、着替え、食事、トイレの世話、シャワー、これらは殆ど女中さんがやってくれる。自分もベットから長椅子への移動、トイレでの介助など少しは手伝うことがある。弟はまだ若くて体力があるから、2人がかりで母を持ちあげるとき、女中さんからご指名がかかる。兄や弟夫婦が母の傍らで何やら話しかけているから、ま、自分は良いかと母に話しかけない日もある。介護ロングステイとはいえ、今日は何もおふくろにしていないな、という日もあって、兄、弟に比べ、自分は親不孝かな、と反省することもある。

話し掛けても反応はないし、と思っても、いやそんなことはない、わからないようでもきっとこちらの言うことを理解しているという考えもある。衰えていく母を見るということは、自分の将来を重ね合わせてみるということでもある。女中さんはいつも明るく「ママさん、サバーイマイ(元気?)」、と話しかけてくれるが、母はタイ語はわからない。声の調子、表情から何かが伝わっているのだろうか。

母が亡くなったら、兄は日本に帰るという。弟夫婦もしばらくは別荘代わりにチェンライの家を借りておくが、友人、息子一家の訪タイが一段落したら、日本に戻るつもりとのこと。
母がいなくなってもタイで暮らすのは自分だけである。PPK(ピン、ピン、コロリ)でこの世とおさらばしたいが、死に方は選べない。友人の手配してくれた若い女中さんに「パパさん、サバーイマイ」と言われながら余生を送るかもしれない。その時、女中さんの言うことが理解できるよう、またタイ語の勉強を始めようか。