チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

介護ロングステイ2年9カ月

イメージ 1

イメージ 2

介護ロングステイ2年9カ月

■富豪女中サオさん
ブアに聞くたびにサオさんの資産が増える。最近では1千万バーツというから日本円で2500万円、日本の感覚で言えば2億円くらい持っているということになろうか。亡くなったご主人の遺産というが、豚は今高値だし、果樹園のラムヤイ竜眼)もいい値段で売れたという。

何処の国でもお金持ちになる人は資産を運用する。市内に家を持っているというが、最近、彼女は思い切りよく、チェンライ市内の新興地、バンドゥーに約250坪の宅地を購入した。空港に近くこれから発展が見込まれる地域である。これからもサオさんの資産は増えていくのではないか。

なぜ、働く必要のないサオさんが24時間勤務の女中奉公をしているのか。それはご主人を亡くしたばかり、まだ40歳と老け込む年ではなく、お金があることは村中の人が知っている。それで何かと男が言い寄ってきて、それが煩わしいということがあるようだ。

退職老人が年の離れたタイ女性と一緒になり、家や車を買ってあげるというケースは枚挙にいとまがない。でも金持タイ女性と日本人が一緒になるという「逆玉」は聞いたことがない、中西さん、初のケース、どうですか、という人がいるが、ヨメさんを貰うことは猫や犬の子を貰うのとはわけが違う。

■介護の質と効率性
豚や農産物の出荷などビジネスのため、彼女は月に2,3日の休暇を取るが、それ以外は母の世話や家の掃除、洗濯などまめまめしく働いている。母に話しかけながら食事の介助をしたり、時にはベッドで母を抱きしめて可愛がってくれる。介護の質は制度や設備、介護者の資格、能力だけではなく、実際に介護する人の心映え、相手を思いやる優しさに左右されるのではないか。サオさんを見ているとつくづくそう思う。

もちろん日本の介護関係者で信念や愛情を持って老人に接している人は多いと思う。だがいかんせん、少ない人数で多くの入所者をお世話するとなると、やはり効率性が優先される場面もあるのだろう。日本から来られた介護関係の方が、ある特養施設では食事に時間のかかるお年寄りの鼻を摘み、苦しくて口を開けた瞬間に、食べ物を口に押し込む、という話をしていた。

ある施設で大勢の老人を集め、若者が「さあ、皆さん、楽しく歌を歌いましょう、はーるを愛するひっとぉは-・・・」という場面に実際に遭遇したことがある。自分に、尊厳というほどではなくとも多少の意地が残っていれば、「ボクは歌いたくない」と拒否するだろう。そんな歌より「一つ出たホイのヨサホイのホイホイをやれー、ビール持ってこーい」くらいのことは言いたい。(まず日本の施設では無理だが)

効率性は日本人があらゆる場面で追求してきたものだと思う。でも介護の場面での効率性は介護する側の一方的な都合で行われているように思われる。効率性が上がれば介護の質が上がるわけでもなく、逆に介護される人たちの尊厳や気持を損なう結果になっていることもあるのではないか。

■来客がいい刺激に・・
これまで、月に一度、診断あるいは投薬、ということで病院に行っていた。しかし先月に薬を2月分もらったので、今月は行く必要がない。病状に何か変化あれば、ということだが、おかげさまでいつもと変わりない生活を送っている。

半年ぶりに弟夫婦が甥と一緒に日本からやってきた。半年前、母は体調を崩して入院していた。長引く入院で、歩けなくなり、褥瘡(じょくそう、床ずれ)が複数個所に出来ていた。声も聞き取れないくらい小さくなっていたので、弟は「コリャ、ダメだ」と覚悟して帰国したそうだ。ところが今回来てみて声は大きくなったし、嫁さんが「これからアヒルを食べに行くんですよ」といった呼びかけに大きく目を開いて反応してくれる。退院直後のリハビリ療法が効いたのか、介助があれば歩行もできる。床ずれも女中さんがこまめに姿勢を変えてあっという間に治してしまった。前に比べれば50倍くらい元気になったじゃないか、と弟夫婦は大喜びだった。

弟と入れ替わりに、昨年、ラオスで知り合ったウィーンの退職判事、マンフレッドがふらりとチェンライにやってきた。自宅に案内した時、母はサオさんと食事中だったが、突然外人が現れてびっくりしたのだろう、サオさんに合わせて、マンフレッドに合掌していた。まあ、ママさん、なんでもわかってるんですね、サオさんが声を上げて笑い、母を抱きしめた。マンフレッドがそれを微笑みながら見ている。

チェンライにいるからこそ、このようにほのぼのとした気分が味わえる。有難いことだ。

写真はマンフレッド氏と「アヒルのロースト」です。丸々1羽が1100円、来客と同伴で10日で3回も食べました。