チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

介護ロングステイ6年4カ月

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■変わらぬ生活
チェンライに来て6年4カ月が過ぎた。母の生活はここ3年、全く変化がない。朝、8時過ぎにベッドから長椅子に移り、清拭と着替え、朝食、食後、暫く長椅子で休んでから再びベッドに戻る。午前中は寝ていることが多い。食事のとき以外はずっとベッドの上だ。1日置きくらいに女中さんがそろそろ頃あい、とトイレに運んでいく。用のついでにシャワーを浴びる。このところ気温が高いので、寒いということはない。年をとったら、「転ぶな、風邪ひくな、義理をかけ」というが、母はもう転ぶことも義理を果たすこともかなわない。暑季のチェンライでは風邪をひく心配もない。食欲もあり、体重も変わらない。100歳まで生きる、私たちのほうが先に逝っちゃう、と女中さんが言うが、母が100歳なら息子も80、長生きしなければ。

今月、兄が日本に一時帰国し、入れ替わりに弟夫婦がやってきた。弟は1年ぶりのチェンライだ。自分はそれほど変化がないと思っていたが、弟夫婦から見ると母は、いくらか衰え、声も小さくなったという。それでも母は弟夫婦と認識しているようで、話しかける二人を見る目の輝きが違っている。
3年前、弟が空手の真似をしたら、珍しく母が声をあげて笑い、女中さんたちを狂喜させた。今回も新しい「演しもの」で母を喜ばせてもらいたいものだ。

■海外療養費
外国では日本の公的医療保険は使えないが、外国でけがや病気になって現地の医療機関を受診した場合、国外で支払った医療費について、帰国してから加入している保険者に請求することのできる海外療養費という制度がある。
診療内容明細書、領袖明細書及びその和訳文を添えて、地方自治体の国保担当課に提出すると、国内の医療標準額で算定された額が本人に還付される仕組み。

この制度に従って、母の場合、タイでかかった医療費のほぼ9割が還付されてきた。昨年、兄が帰国して区の国保担当課に行った時、本当に「病気の母」が存在しているのか、次回は母の新旧パスポートを持参せよ、とかなり厳しい審査を受けたという。ところが今回、帰国中の兄から、「医療費を受け取る本人が出頭して申請しないのであれば、還付は受けられない」と言われたとのこと。早い話が母は保険料を払っていても国民健康保険の対象外になるということだ。

■海外医療費支払い根拠
健康保険法第87条1項
保険者は、療養の給付若しくは入院時食事療養費、入院時生活療養費若しくは保険外併用療養費の支給(以下この項において「療養の給付等」という。)を行うことが困難であると認めるとき、又は被保険者が保険医療機関等以外の病院、診療所、薬局その他の者から診療、薬剤の支給若しくは手当を受けた場合において、保険者がやむを得ないものと認めるときは、療養の給付等に代えて、療養費を支給することができる。

国民健康保険法 第54条
保険者は、療養の給付若しくは入院時食事療養費、入院時生活療養費若しくは保険外併用療養費の支給(以下この項及び次項において「療養の給付等」という。)を行うことが困難であると認めるとき、又は被保険者が保険医療機関等以外の病院、診療所若しくは薬局その他の者について診療、薬剤の支給若しくは手当を受けた場合において、保険者がやむを得ないものと認めるときは、療養の給付等に代えて、療養費を支給することができる。

このように、これまでは裁量権の範囲で、母のようなケースを「やむを得ない」と認めてくれたわけだ。海外療養費は、日本国内に住所(住民票)のある者が旅行などで短期間国外に行き、何らかの治療を受けたときに給付される制度、長期間(約1年以上)国外に居住する場合は、住民票が日本にあっても被保険者資格を喪失する、が建前らしい。

■医療費は自己負担
これまでブログにタイで受けた医療費は、健保から還付を受けることができると書いてきたが、介護ロングステイでは基本的に医療費は自腹となります、と訂正しなければならない。
住民票記載の住所に居住実績がなくとも本人が申請すれば医療費は還付されるようだし、帰国と同時に住民票を入れればその日から国保の被保険者資格が得られる。

母のように何十年も保険料を支払い続けていても、長期海外在住という理由で国保の対象外となる。同じ日本国民でありながら不公平ではございませんか、と言いたくなるがお上の方針には逆らえない。国が国保の厳しい運用に転じたのは、医療費の不正請求が見過ごせないほど大きな問題となっているからだ。

不正請求で儲けようというせこい人と母や我々兄弟が同列に見られていると思うと、いくらか自尊心が痛む。