チェンライの市場から

「市場に並べられた商品からその国の生活がわかる」と言われます。当ブログを通じてチェンライに暮らす人々の生活を知って頂きたいと思います。 チェンライに来たのは2009年から、介護ロングステイは2018年8月母の死去で終わりとなり、一人で新しい生活を始めました。

介護ロングステイ7年6カ月

イメージ 1

イメージ 2

イメージ 3

イメージ 4

イメージ 5

イメージ 6

介護ロングステイ7年6カ月

■母の好物
チェンライに来て7年半が過ぎた。ここ数カ月母の具合は全く変わりはない。朝夕はベッドからソファに移され、座って食事をするが、昼はベッドで、枕で少し上半身を高くした姿勢で食事を摂る。誤嚥が心配であるが、ほとんど咳き込むこともなく、野菜・卵入りお粥とバナナの食事を食べている。ニイさんが小匙に乗せた食物を口に入れる、それを飲み込む、の繰り返し。水は注射器で口に注ぎ込む。ノリ玉、12野菜入り、イワシ削り節入りとか各種のふりかけを用意しているので、それをニイさんがお粥に掛けるが、基本的には、3度の食事はお粥とバナナのみ。日本から持ってきた噛まずに食べられるというレトルト食品を食べることもある。

雨季にはドリアンが出まわる。歯がなくてもドリアンのクリーム状の果肉は食べられるので、よく買ったものだ。女中さんがドリアンは体が熱くなってママさんの健康に良くない、という。でも好物だし、と先日、モントン種のドリアンを買ってきて1房分食べてもらった。お粥と違って、ドリアンを食べるときの表情が違うように思う。ニイさんもママさんがアロイ(美味しい)と言ってるよ、と嬉しそうだった。

■万能食バナナ
バナナは老人用の特別なバナナをブアさんの出身村から仕入れている。母が健康であるのはバナナのお陰と思っている。毎食3本、1日に9本、7年半で2万本以上食べている計算だ。
こちらタイでは赤ちゃんの離乳食はバナナ、寝たきりの老人食もバナナだ。自分も将来、歯が無くなってもバナナさえあれば生きていけると思う。
ブアさんの家にもバナナが生っていた。バナナの房の途中に枯れ葉が重なって鳥の巣のようになっている部分があった。房を落として枯れ葉を取り除いてみると、中からハダカの小さいネズミが数匹出てきた。目も見えないハダカネズミは熟れかけたバナナを齧っていた。タイではネズミの離乳食もバナナとみえる。熟れたバナナを食べ終わる頃には子ネズミも独り立ち。お母さんネズミもバナナさえ食べていれば丈夫に育つからね、と言い聞かせていたに違いない。

■整体をやめる
数年前から母の整体を続けていた。シブリン病院から整体師のジェニさんという30歳くらいの女性が週5日、母のために通ってくれた。最初の頃はまた歩けるようになるのではないかというかすかな希望を持っていたが、3年ほど前に、お母様はもう治りません、とジェニさんが言っていた。それでも母にとって手足の曲げ伸ばしだけとはいえ、体を動かす機会は整体しかなかったので無理を言ってお願いしていた。

今年になって、ジェニさんが遠くの病院に移る、と言ってこなくなった。まあ、効果はないし、いいかと思っていたが、ニイさんがジェニさんの助手をずっとやっていて、私にもできます、と言う。それで、女中さん2人に、母の手足の曲げ伸ばしをやってもらっていたが、女中さんもそのうち、飽きてきたのかやらなくなった。母は手足の曲げ伸ばしの度に、大声を出して、見たたところ決して楽しそうではない。相手の嫌がることはやめましょうではないが、効果は期待できないし、やるほうもやられるほうもハッピーでなければ、ということで母の整体は約5年で打ち切り。

4年前のブログには、母がもうリハビリは頑張れない、と呟いた、と書いてある。4年前は何とか意思の疎通ができていたのだが、寝たきりになり、言葉を交わすことが次第にできなくなった。良かれと思ってその後も整体を続けていたが、自分たちの思い込みで母に辛い思いをさせたのではないか、と悔やまれる。

■3人兄弟、毎晩宴会
先月からプチ・ロングステイの弟夫婦が来ており、朝と夕方に母を見舞ってくれる。ベッドに上がって、母に何かと話しかけるのであるが、反応ははかばかしくない。きっと分かっているよ、気持ちは通じているよ、というのだが、せっかく日本から来ているのだから、もう少し、アー、とか、ウーとか言ってほしいと思う。でも世の中には、少ない遺産を巡って、あるいは親の介護を巡って、仲たがいする兄弟もいるのに、一度は家を離れた兄弟3人がこの年になって、毎日一緒に楽しくビールが飲める、これもお母さんのお陰、有り難いじゃないか、と弟が言う。

7月は三宝節、安居入りとタイでは飲酒が禁じられている日がある。でも禁酒日であっても飲んでしまう言い訳になるかもしれないが、兄弟3人が母を見守りながら仲良く飲んでいる、これは母の喜びであるかもしれない。